京都競馬場の誘導馬目指し「プボくん」奮闘中
2025年5月1日(木)5時5分 スポーツニッポン
日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週はYouTube「スポニチ競馬チャンネル」との連動企画、栗東取材班の坂田高浩(40)が担当する。昨年まで天皇賞・春に4年連続で出走し、引退後は京都競馬場で誘導馬デビューを目指しているディープボンド(セン8、父キズナ)を取材。“プボくん”の今に迫った。
春天ウイークでその雄姿を思い出すファンも多いだろう。昨年の有馬記念13着を最後に引退したディープボンド。天皇賞・春は昨年まで4年連続で出走し21〜23年が2着、昨年も6番人気3着に奮闘した。最強ステイヤー決定戦に欠かせぬ存在だった。
馬名のディー「プボ」ンドから、SNSでは「プボくん」の愛称で親しまれてきた。頭を小刻みに上下させてリズムを生み出す“プボプボする”歩き方。しっとり輝く青鹿毛(かげ)の体は“こしあんボディー”と称され、ひたむきに走る姿がファンの心を打った。
引退後は京都競馬場の乗馬センターで誘導馬デビューを目指している。取材で訪れたのは午後2時過ぎ。リラックスしてカメラを向けてもおとなしい。馬名札の横にはお守りが飾られ、ゆったりした時間が流れていた。担当する惣田雄一さんは「人に対して敵対心がなく、場慣れしている感じがします。オレ様って感じではないですけど自分の根っこがありますね」と印象を伝えた。YouTube「スポニチ競馬チャンネル」の映像にはカメラマイクをパクッとするシーンも。そんな姿も愛らしい。
1月下旬に去勢してからも経過は良好。速く走る競走馬の本能をリセットすることから始めた。「まずは精神的に余裕を持ってもらい、乗馬の基礎的な練習をしています。止まることが難しくて(ディープボンドも)最初はモジモジしている感じでした」と説明。並行して「4月からは誘導練習として、誘導馬が実際に通るところを見せて環境に少しずつ慣れてもらっています」と訓練を重ねている。観客がいることを想定して馬場やパドックを周回し、音響にも慣れさせていく。
現段階で誘導馬デビューの見込みは立っていない。「他の馬との兼ね合いやタイミングもあるので。ファンが多い馬だからこそ、いい意味で焦らず、しっかり後輩たちを誘導できるようになってからデビューさせてあげたい」と見通しを語った。京都にはリーゼントロックやペルシアンナイト、サトノアーサーなど競走馬として名をはせた先輩がいる。
午後3時過ぎには近隣の高校生が集まり、馬術部の乗馬練習が始まった。誘導馬は開催日以外でも、普及活動において活躍の道がある。「全ての馬にできることではないですけどね。(ディープボンドも)将来的に誘導馬としてはもちろん、多方面で頑張ってほしい。馬産業の人材育成に貢献してくれる馬になってくれれば」と期待した。プボくんのセカンドキャリアはまだまだ始まったばかりだ。
◇坂田 高浩(さかた・たかひろ)1984年(昭59)11月5日生まれ、三重県出身の40歳。07年入社で09年4月〜16年3月まで中央競馬担当。その後6年半、写真映像部で経験を積み、22年10月から再び競馬担当に。
《YouTubeで配信中》YouTube「スポニチ競馬チャンネル」では京都競馬場の誘導馬候補生ディープボンドの様子を撮影した。馬房や洗い場の風景、引き馬でのこしあんボディーも要注目。担当する惣田雄一さんのインタビューを交え、配信している。