【WEリーグ】マイナビ仙台DF万屋、MF茨木、独占インタビュー(前編)

2023年5月5日(金)20時0分 FOOTBALL TRIBE

DF万屋美穂(左)MF茨木美都葉(右)写真:マイナビ仙台提供

2021年9月に開幕した日本女子プロサッカーリーグ、WEリーグ(ウーマン・エンパワーメント・リーグ)は、現在2022/23シーズン最終節を6月10日に控え後半戦に突入。全11クラブの順位争いに注目が集まっている。


ここでは、そんなWEリーグで昨2021/22シーズン5位(勝ち点31)、今シーズンも現時点(5月5日第16節終了時点)5位につけているマイナビ仙台レディースに着目。最終節までに首位へと登り詰められるかに期待がかかるところ、同クラブで活躍しているDF万屋美穂(まんや・みほ)、MF茨木美都葉(いばらき・みつば)2名の選手に独占インタビューを行った。


この前編では、WEリーガーを目指す人たちとの触れ合いや、WEリーグがプレー以外で実践している取り組み『WE ACTION』の様子について、女性ならではの視点で語られたインタビューの様子を紹介する。


関連記事:WEリーグ選手達の「WE ACTION」会議レポ。女性コーチはどう増やす?




インタビュー中のDF万屋美穂(左)とMF茨木美都葉(右)写真:Molly Chiba

将来のWEリーガーとの練習試合


ーまずは、4月15日に行われた多賀城高校(宮城県)とのトレーニングマッチについて聞かせてください。


万屋:やはり高校生なので、ある程度のフィジカルがあるチームだったんですけど、試合中はパワープレーというより、ボールを繋ぐ動きの方が印象的でしたね。守備の問題点や、動きの早い相手にスピードでなかなか勝てない場面もあって、試合後「そういう相手には、どうすべきか」という話になりました。


茨木:私はいつもボランチでハーフで出るんですが、今回のトレーニングマッチではトップとかトップ下で出たんです。自分の特徴でもある背後の動き出しは出来たんですが、得点に絡むことが出来なくて…。守備でも前からもっとプレスをかけることが出来たシーンもあったので、自分では「まあまあ」という感じでした。


ー今回の相手は高校生でしたが、プロのサッカー選手が小学生や中学生と一緒にプレーすることについて、どう思いますか?


万屋:相手が小さい子どもたちの場合、私たちが持っている経験や技術を見せることで、サッカー選手を目指す子たちの憧れの存在になれたらいいですよね。ボールを使ったコミュニケーションで、サッカーの楽しさを伝えられたらいいなと思います。サッカー教室などに参加してくれた子から「楽しかった」って言ってもらえると、やっぱり嬉しいですね。


でも、相手が中学生や高校生になると、触れ合い方としてはどうしても「練習試合」という形になってしまいます。彼女たちはそれぞれ体格もスピードも違いますし、チームによってサッカーの方向性も変わります。ある程度は対応するのですが、自分達がやることはなるべく変えず、相手に合わせすぎないようにしないといけない部分もあります。練習試合だとしても、試合毎に出てくる課題は全然違ってくるし、その時々でコミュニケーションをとって改善しつつ、その中で自分のプレーが出せたらやっぱり楽しいんですよね。とても難しいことですけど…。


茨木:私の場合、小さい子とサッカーで遊ぶ時は「WEリーガー」という職業を知ってもらう機会になっていますね。相手が女の子だったら、将来目指す場所になって欲しいと思っています。


相手が中学生や高校生の場合、「女子のトップレベルってどういう感じなんだろう?」と男子も気になっていると思います。大事なのは「勝負にこだわる」ということですね。男子だろうが女子だろうが言い訳にはならないですから。勝負の世界なので、相手が誰だろうと負けないように意識してやっています。




マイナビ仙台レディース DF万屋美穂 写真:マイナビ仙台提供

どうやったらWEリーガーになれるの?


ーWEリーガーになりたい子どもたちに、アドバイスはありますか?


茨木:もう、めっちゃ必死に頑張っていくことですかね。「WEリーガーになる」という目標を持って、それに対してどう取り組むかっていうのを常に考えて日々の生活を送っていけば、きっとなれるんじゃなかな。


万屋:積み上げていくことは絶対に大事なんですけど、やっぱり小・中・高と上がっていく中にある試合や練習の中で、どうやって自分の良さを出していくか。監督だったりコーチだったり、見ている人にどうやって自分を表現できるかっていうのも大事なのかなと思います。やっぱりそこで目にとまる選手が上に行くことが出来るような気がします。


ー自分の良さを周囲にアピールするのは難しいですか?


万屋:そうですね。チームによって「やりたいサッカー」はそれぞれ違います。その中で自分の得意とするプレーがマッチせず、もがく選手もたくさんいるとは思うんです。でも、そこは恐れずに自分の出来ることをやり続けていくことが大事です。行き詰まることは私達だってあるので、WEリーガーを目指す人たちには頑張って乗り越えて欲しいですね。


マイナビ仙台レディース MF茨木美都葉 写真:マイナビ仙台提供

ーWEリーグのクラブ以外で戦ってみたい相手はいますか?


万屋・茨木:WEリーグ以外で…?


茨木:海外クラブとの試合とか?


ーそれは面白そうですね。


茨木:男子で言ったらフレンドリーマッチみたいな。例えば、フロンターレ(川崎フロンターレ)とドルトムント(ボルシア・ドルトムント)みたいな感じで。


万屋:いいね、ドイツの。


茨木:そういう女子版とかあったら面白そう。


万屋:楽しそう!


ー海外クラブの動きやパワーを感じられて良い刺激になりそうですね!万屋選手は何かありますか?


万屋:あまり試合をしたことがないクラブとできたら面白いのかなとは思います。逆に、なでしこリーグとの試合はあまりないので出来たら良いですね(現時点では「皇后杯JFA全日本女子サッカー選手権大会」以外に試合の機会がない)


第5回 WE ACTION MEETING 参加者たち ©WE LEAGUE

女性が輝く社会へのアクションも


ー4月11日に開催された「第5回WE ACTION MEETING」にお2人とも参加されていましたね。女性が抱える問題の1つ「母頼りが多すぎる」という課題について、パートナー企業の方やメディア関係者など皆で解決案を話し合いましたが、参加してみてどうでしたか?


茨木:私が参加したグループでは、みんな1人1人が考える母親像というのが、一般的な「母親」を想像している人もいれば「WEリーグ選手の母」を想像している人もいました。結局「母」をどこに設定するのかで答えがバラバラになってしまうんですよね。


なので、解決策を考えるのであれば、最初に「母」の設定をしっかり考えることが必要だなと感じました。色々と話し合っていく中で、結果的に頼り過ぎている「母」に対し、「母の負担を減らせるやさしいイベントをするのはどうか?」という方向になりました。


ー確かに、どんな母親像かで解決策も変わってきますよね。


茨木:そうですね。最初の母親設定の部分以外でも、例えばミーティングに参加した人たちが、事前に母親の負担を減らせるイベント案を考えた上で当日を迎えることが出来たら良かったのかもしれません。その上で、課題を漠然とではなく、もっと砕いて考えることが出来れば、更に色々な案が出てきて、もっと深い話し合いの場になったんじゃないのかな、と感じました。


マイナビ仙台レディース DF万屋美穂 写真:マイナビ仙台提供

ー万屋選手は別のグループで、茨木選手と同じ課題について話し合いをしていましたよね?どんな案が出ましたか?


万屋:私のグループでは、そもそも「母頼り」という部分について状況が分かれました。お母さんがメインの家庭もあれば、お父さんがメインで家事をやる家庭だったり、おじいちゃんおばあちゃんに育ててもらった人もいて「じゃあ、そもそも『母頼り』じゃないよね?」ということになったんです。でもきっと、家庭内の誰かには負担がかかっているんだと思います。負担は女性だけじゃないということで、課題のターゲットが「母親」から「家庭の中の誰か」に変わったんです。


ーなるほど。そもそも負担がかかる人は「母」だけではなく、ひょっとしたらおじいちゃんかもしれない、と。


万屋:そうなんです。ターゲットが「家庭の中の誰か」に変わった後に出てきた案としては、ただ負担を減らすだけじゃなく、子どもたちの成長に繋げたいという意見でした。例えばおじいちゃんやお父さんなど、家事の負担がかかっている人に対して子どもたちがお手伝いをする。その行為が、結果的に子どもの成長に繋がれば良いねと。


自分達にはJリーグと繋がっているチームがあるので、WEリーグに限らずJリーグの試合でも「WE ACTION(WEリーグの理念推進活動)」をさせてもらう。そこで「WEリーガーも、Jリーガーも、こうやって自分で1人暮らしをしているんだよ、皆もこれをやってみよう!」 というイメージで1日のスケジュールを組立ててみるとか。あとは体験形式にして、どこかの企業とタッグを組んで、子どもたちにお弁当作りを体験してもらうとか、そういう案も出てきました。


ーもし実現できたら、子どもも楽しいし大人も嬉しいことですね!


万屋:でも、本当に行動を起こさないと実現出来ないと思うし、Jリーガーやスポンサーの協力が結構大規模なものになりそうで、本当に実現するのかなぁと少し不安でした(笑)


ー何か新しいことを始める時は不安が付きものですからね。今後も「WE ACTION」がどうなっていくのか、とても楽しみです。


(後編に続く)

FOOTBALL TRIBE

「WEリーグ」をもっと詳しく

「WEリーグ」のニュース

「WEリーグ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ