「そりゃいつかはダウンする」――ネリに“人生初ダウン”を喫したのになぜ? 井上尚弥が40戦無敗の傑物をPFPで超えた理由を考察

2024年5月11日(土)6時0分 ココカラネクスト

世界一の権威を誇るとされる『The RING』のPFPで1位となった井上。その評価にケチがついている。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 井上尚弥(大橋)の“戴冠”が大きな話題となっている。

 現地時間5月9日、世界で最も権威あるボクシングの米老舗専門誌『The Ring』は、階級を超えた格付けランク「パウンド・フォー・パウンド(PFP)」最新版を公表。世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)を1位に選出した。

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 世界中の熱視線を注がれる舞台でのセンセーショナルなパフォーマンスだった。東京ドームで34年ぶりに実現したボクシングの興行で、メインマッチに登場した井上は、元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)と対戦。

 初回にプロ初ダウンを喫した井上だったが、そこから挽回。2回と5回にそれぞれ左フックでダウンをもぎ取ると、6回に左ジャブ、右アッパーの素早いコンビネーションから右ストレートを一閃。日本ボクシング界にとっての“敵”とも言えた悪童を打ちのめした。

 4万3000人の大観衆を熱狂させた文字通りの完勝劇は見応え十分。ネリをパンチ数などのスタッツでも大きく凌駕した井上のパフォーマンスが「世界で最も価値がある」とされる『The RING』のPFPで1位に輝くのも納得ではある。

 もっとも、この発表には“異論”も呈されている。ランキングを公表した同誌のXの投稿には、一部のファンから反論が相次いだのだが、1位に君臨していたウェルター級の3団体統一王者であるテレンス・クロフォード(米国)がなぜ降格したかという意見が目立った。

 井上よりも先に2階級での4団体統一を果たしていたクロフォード。その歴史的な快挙と、昨年7月にエロール・スペンスJr.(米国)との対戦で圧勝した試合内容を評価すべきと言う声は絶えない。実際、Xでは「クロフォードの1位に異論はない」や「ダウンを喫したのになぜだ?」と2位評価に不満をぶつけるユーザーも目立った。

 ではなぜ、井上は“格下”と見られていたネリにダウンを喫したにもかかわらず、クロフォードを押しのけたのか。その一端と考えられる意見は、米メディアで散見している。

「被弾をするなんて当たり前なんだよ」

 米ポッドキャスト番組『THE 3 KNOCKDOWN RULE』のホストを務めているマリオ・ロペス氏は、同番組において「ネリはクレバーで、巧妙な選手なんだ。ああいうことはありえた」と決戦を振り返りつつ、こう論じている。

「イノウエが見せた最も重要なポイントは、ダウンしてから完璧に立て直し、見事に逆境に打ち勝ったということだ。そりゃトップレベルで戦っていれば、いつかは致命的なパンチをもらってダウンを取られてしまうことはある。でも、それは大きな問題じゃないんだ。偉大な選手はそこから立ち直って、勝負を自分のモノにする。イノウエもそうだった。

 いつも通りに、計算高く、順序立ててネリを追い詰め、凄まじいKOさ。ダウンを取られてからの対応力はこれまでの試合と同様に印象的なパフォーマンスだった。あのマイク・タイソンも前半にKOできないだけで、『あれ?苦戦してる?』なんて言われた。そんなの馬鹿げてる。これは本当に闘いなんだ。被弾をするなんて当たり前なんだよ」

 軽量級であろうと猛者がひしめくボクシング界。そのなかでは、さしものモンスターもいつかはダウンを喫する。むしろそれまでの45ラウンドで一度もダウンしてこなかった成績は奇跡ではないか。

 さらにクロフォードは過去4年で4試合しかこなしておらず、対する井上は同年数で8試合を戦っている。このハイペースな消化量も、モンスターを「世界最高」にたらしめる一因と言えそうだ。

 たしかに40戦無敗(31KO)を誇るクロフォードの成績はあっぱれだが、常に“今”を評価されるPFPで推し量るとすれば、やはり井上が「上」という結果は当然だろう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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