阪神・岩崎 「このフォームがなかったら、ここまで来られなかった」100S達成を支えた「不変」
2025年5月18日(日)5時15分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神5—2広島(2025年5月17日 甲子園)
阪神・岩崎優投手(33)が、17日の広島戦(甲子園)で5—2の9回から登板し、1回無失点に封じて今季11セーブ目を挙げ、通算100セーブに到達した。100ホールドと合わせての達成はプロ野球史上8人目で、左腕では史上初の快挙。寡黙な男が過酷なポジションと向き合いながら、苦節12年目で大台に到達した。チームは連敗を2で止め、1日で首位に返り咲き。守護神の偉業達成も弾みに、猛虎が再進撃に転じる。
24時間たたないうちに訪れたリベンジのマウンドで、岩崎が節目の数字に到達した。
前夜は9回に決勝点を献上。その雪辱を期して「早く投げたかった」と臨んだ一夜明けの9回を抑え、通算100セーブをマークした。試合後のお立ち台では自らの記録を喜ぶ前に開口一番「昨日(16日)はすみませんでした」と虎党に謝罪。囲み取材では「(藤川監督からは)“おめでとう”くらいのひと言です。まあその“おめでとう”がすごくうれしいですけど」と明かし、静かに喜びをかみしめた。
「このフォームがなかったら、ここまで来られなかった」
下半身を深く沈み込ませ、腕をしならせると浮き上がるようなボールが打者に向かう。小学生の時に父・久志さんが独特の肘の使い方に着目して以降、不変のフォームで道を切り開いてきた。毎春、ブルペンでの1000球を超える投げ込みでつくり上げる土台。何より「0から1」の過程を大事にしてきた。
“感覚派”の33歳。投球回転数といった主流のデータには興味を示さない。今春もネルソンから回転数を問われ、「分からない」と答えて驚かれた。「“なんで隠すんだ”と疑われた。今まで自分でやってきたもの、感覚があるんで、数字を見過ぎると変わってしまいそうなんで怖い」
歌は清木場俊介、アニメはコードギアス、ゲームはモンスターハンター。どれも10年以上の“付き合い”だ。「いいものは飽きないし、同じことをしても自分は苦にならない。変える必要がないのなら変えない」。トレーニングの内容も若手時代からほぼ不変。「みんながやってる“おしゃれなトレーニング”とかはしない。壁にぶち当たったら考えるけどまだ変えなくて大丈夫」と、現状維持を恐れず投球の間合いやフォームの緩急で相手の研究に対抗してきた。
原動力の一つは、文字で届く声援の数々。入団1年目からクラブハウスに届くファンレターにはすべて目を通してきた。「いつも書いてくれる人もいるし、全部読んでいます」。時には誹謗(ひぼう)中傷も目に入る。「“もう引退した方がいいですよ”とか。読んだ時は悲しくなりますよ。でも、そういうのも(全体の)0・5%ぐらいなんですよ」
鉄仮面の下は生身の人間だ。「私は神じゃないんで“守護人”にしてください」。9回を投げるようになって、そう何度も口にしてきた。「失敗して帰りの車の中で切り替えたりとか…そんな簡単にできないでしょ。朝まで眠れない時だってある」。クローザーとは、負の感情と向き合うポジションでもある。
「抑えたことはけっこうすぐ忘れるので、あまり気にしていない。(思い出のセーブは)今日じゃないですか。誰も(100セーブ、100ホールドを自分が)達成するとは思っていなかったと思う。自分も含めて。そんな誰も想像していないようなことをこれからも、どんどん数字を積み重ねてやっていきたい」
喜びを更新しながら、背番号13は任務を遂行していく。 (遠藤 礼)
○…岩崎(神)が今季11セーブ目を挙げ、通算100セーブを達成した。初セーブは20年9月3日のヤクルト戦。プロ野球37人目で、阪神では山本和行、藤川球児に続く3人目。中継ぎ投手として通算151ホールドも記録しており、100セーブ&100ホールドは史上8人目で左腕では初めて。33歳10カ月は22年増田達至(西)の34歳3カ月に次ぐ2番目の年長記録で、520試合目は最も遅い達成となった。