偉業達成の楽天・浅村 衝撃だったお立ち台での涙 足踏み、連続試合出場途切れても...「腐らず」乗り越え
2025年5月25日(日)14時35分 スポーツニッポン
楽天・浅村栄斗内野手(34)が、24日の日本ハム戦(楽天モバイル)で平成生まれ初となる通算2000安打を達成した。お立ち台で涙を流した姿に衝撃を受けた。
会見後の囲み取材では真っ先に「赤ちゃんの時以来の涙でいいですか?」と冗談交じりに聞いた。それほど、浅村とは無縁の感情だと思っていたからだ。「2000本で泣く人なんていないでしょ? 恥ずかしかった。いろんな感情が出てきて止められなかった」と明かした。
まさに、激動の1カ月だった。4月22日の日本ハム戦で通算300本塁打を達成。同27日の2安打で偉業まで残り9本となった。ここまでは良かった。同日を終えた時点で打率・314はリーグ4位。偉業達成は時間の問題だと誰もが思っていた。しかし、ここから自己最長を更新する35打席連続無安打。「しっかり自分のスイングができていない。全部がうまくいかない」と頭を抱えた。
20日の西武戦(盛岡)では今季初めてスタメンを外れ、最後まで出番がなかった。パ・リーグ記録で、歴代でも4位まで伸ばしていた連続試合出場が1346でストップ。11年にまたがる大記録のまさかの幕切れに試合後の浅村は「まだ切り替えはできていないですけど、前を向いてやるしかない」と声を振り絞った。
本拠に戻った22日、ルーティンであるロングティーを行うため、午後1時過ぎにグラウンドに姿を現した浅村の表情は明らかにこれまでとは違っていた。1男1女のパパでもあり、前日の休養日は一家水入らずの時間を過ごした。タレントでフリーアナウンサーの妻・淡輪ゆきと「これで腐るのは違うよね。腐らず頑張ろう」と話したことを明かし、「もう切り替えてますよ」。短い決意の言葉と、不振時には見られなかった朗らかな表情に数日中の偉業達成を確信した。
浅村にとって連続試合出場は「どこかで途切れるだろう」と覚悟する一方で、誇りを感じていた記録でもあった。「連続試合出場のためにやってはいない」。言葉ではそう話しても10年以上続けていたものが、プツリと途絶えた感情は本人にしか分からない。それでも、何とか気持ちを切り替え、4日後に節目に達した姿はまぶしかった。
今年11月で35歳。適度に休養を取りながら出場を続ければ、選手寿命が伸びるかもしれない。浅村がこの先も多くの安打を積み重ね、チームにより多くの勝利をもたらして、あの日の決断が正しかったといえる日が来ることを願うばかりだ。
偉業から一夜明け、「もう“あと何本”と言われなくて済む」と話した浅村に一応、伝えておいた。「3000安打まで、残り999本です!」と。「もう、やめてや」。そこには、この1カ月見られなかった笑顔があった。(記者コラム・花里 雄太)