メルセデスF1、フレキシブルウイングへの次戦抗議の意向を示す。アルファロメオは新検査導入に激怒

2021年5月27日(木)7時55分 AUTOSPORT web

 FIAは第7戦フランスGPからリヤウイングのたわみについての検査を厳格化する予定だが、メルセデスとマクラーレンは、その措置を1戦早めて次戦アゼルバイジャンから実施するよう働きかけている。


 フレキシブルウイングは、一定の速度に達するとウイングがたわむことでドラッグを低減させるものだが、安全性の面から規制されており、FIAによる荷重テストでチェックが行われている。しかし、現在の検査にパスしつつ、走行中にフレキシブルなウイングを使用しているチームがあることが判明したとして、FIAは6月15日から取り締まりを強化することを決めた。新たなテストでは荷重を50パーセント増やして行われる。


 メルセデスとマクラーレンが取り締まり強化を早めたい理由は明らかだ。バクーのストリートサーキットにはF1最長の2.2kmのストレートがあり、トップスピードは360km/hを超える。フレキシブルなウイングを使用しているとみられるのは、レッドブル、フェラーリ、アルピーヌ、アルファロメオで、彼らはロングストレートで妥協することなく、ツイスティなエリアにおいてもアドバンテージを得ることができる。

2019年F1第4戦アゼルバイジャンGP 決勝レーススタート

 モナコにおいてメルセデスのトト・ウォルフ代表は、FIAがバクーで検査を厳格化しなければ、抗議が行われ、困難な事態に発展すると警告した。


「“宙ぶらりんのウイング”がバクーで使用されれば、そのアドバンテージは明らかなので、スチュワードに報告がいくだろう」とウォルフ。


「スチュワードの対応が十分でなければ、国際控訴裁判所に持ち込まれることになる。それは誰にとっても望ましい事態ではない。従ってFIAがバクーの前に状況を明確にするものと私は考えている。そうでなければ、非常に厄介なことになる」


 ウォルフが“宙ぶらりんのウイング”と言ったのは、そのパーツは現行の検査はパスしているもののFIAは違法とみなしており、それにもかかわらずモナコとアゼルバイジャンの2戦にわたって使用することが許されたからだ。


 マクラーレン代表のアンドレアス・ザイドルも、検査厳格化が遅れることに不満を持っており、継続的な対話によって問題を解決したいと述べている。


「私はメルセデスと行動を共にしているわけではないが、我々はこの件についてFIAと話し合っている。繰り返しになるが、我々としては、規則に従っていないマシンがあることに不満を持っている。一部ライバルたちのマシンが規則の範囲内ではないことが発見された後に、彼らがそのマシンを走らせることが可能になっている。そんなことは絶対に受け入れられない。そのため、今FIAと対話をしている。来週も話し合いを続けていく必要がある」


■アルファロメオ「優れたソリューションを見つけ出しただけ」と検査変更に不満


 一方でウイング変更が必要になるアルファロメオの代表フレデリック・バスールは、シーズン途中で検査が変更されることに激怒している。


「これは規則の新しい解釈ではなく、規則そのものの変更だ。安全性の問題ではないにもかかわらず、シーズン途中にFIAが規則を変えることがなぜ可能なのか、私には理解できない」とバスールは憤った。


「すべてのマシンのリヤウイングが多少はたわんでいる。走行中の動画を見ればそれは明らかだ。しかし一部のチームは、何らかの手段で、FIAに義務付けられたテストに合格しつつ、他のチームよりも曲がるウイングを作り上げた。ライバルたちよりいい仕事をしたわけだ。それにもかかわらず、その能力を罰しようとしている。メルセデスをはじめとするいくつかのチームが、自分たちが効率的な方法を見いだせなかったというだけで、不満を訴えているせいでだ」

2021年F1第5戦モナコGP キミ・ライコネン(アルファロメオC41)

 バスールは、ウイングの修正にリソースを振り分けなければならないことで、2022年型マシンの開発作業に影響が出ると語った。


「ウイングは大きな違いをもたらしてはいない。我々は毎戦そのウイングを使ってきたわけではない。つまり、パフォーマンス向上はウイングが理由ではないのだ」


「それでも、2022年型マシンのプロジェクトに携わっているスタッフを、新しいリヤウイングの設計と製造にあてなければならないことが、非常に腹立たしい。今はすでに今年のマシンに取り組んでいる人員は全くいないのだ」


「つまり新しいウイングを作ることによって出費を強いられるだけでなく、2022年型マシンの設計、開発のためのリソースを失うことになるのだ。他のチームより有能だったというだけの理由でだ」

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