エリクソン「最後の赤旗は出すべきではなかった」インディ500連覇逃すも、初優勝ニューガーデンを讃える

2023年5月29日(月)15時39分 AUTOSPORT web

 ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー/シボレー)がインディ500初優勝を飾った。昨季2022年シーズンまでで通算25勝も挙げてきて、タイトル獲得も2017年と2019年の2回果たしてきたテネシー出身ドライバーが、未勝利だったインディ500の栄冠を12回目の挑戦でついに手に入れた。今年の第2戦テキサスでシーズン初優勝を記録している彼にとって今回の勝利は通算27勝目となっている。


 予選でのニューガーデンは17番手と振るわなかった。チーム・ペンスキーのマシンは、3年前からインディの予選においてはチーム別でのトップ3にも入っていない。トップはチップ・ガナッシ・レーシング/ホンダで、ペンスキーと同じシボレー・エンジンを使う2チーム、アロウ・マクラーレンとエド・カーペンター・レーシングが奮闘していた。


 そこでニューガーデンはレース用セッティングで優位を得る作戦に切り替えた。
 
 4月の合同テストで最速ラップをマークした彼らは、そのスピードを維持したままレースを迎えた。しかし予選でのパフォーマンスは低く、結果は17位。それでも、ニューガーデンは徐々に自信を深めていく。


「トラフィックでのハンドリングは上々」、「タイヤがブリスターを出すトラブルも起きていない」などと話しながら、レースに向けてのセッティングを着々と煮詰めていったのだ。


 ニューガーデンが優勝争いに絡む可能性を見せ始めたのは、レースが後半戦に入ってから。4回目のピットストップを終えた130周辺りからだった。


 レースがいよいよ終盤戦に入った。185周目、予選3位からずっとトップ争いを続けていたフェリックス・ローゼンクヴィスト(アロウ・マクラーレン/シボレー)がターン1でラインが少しワイドになり、ウォールにぶつかった。


 彼のマシンはターン2手前まで滑っていき、カイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート/ホンダ)が避けきれずに接触。その直後に裏返しになった。リヤホイールがタイヤごとフェンスを飛び越えたが、幸いスタンドには飛び込まず、怪我人も出なかった。この直後に最初の赤旗が出された。


 リスタートが切られると、今度はターン3でパト・オワード(アロウ・マクラーレン/シボレー)とマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)が競り合い、どちらも譲らなかった結果、イン側のオワードがスピンしてクラッシュ。後続のシモン・パジェノー(メイヤー・シャンク・レーシング/ホンダ)とアグスティン・カナピノ(フンコス・ホリンジャー・レーシング/シボレー)も壁にヒットしてレースを終えた。この後に2回目の赤旗が提示される。


 次はリスタート直後にメインストレートでエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング/シボレー)とルーキーのベンジャミン・ペデルソン(AJ・フォイト・エンタープライゼス/シボレー)がクラッシュ。この時、グリーンからイエローへと変わる直前にトップに躍り出ていたのがエリクソンで、“勝負あり”と見えた。しかし、インディカーは3回目の赤旗中断を行った。もう残り周回数は3周となっていたのに。


 最後のスタートは残り1周で切られた。グリーンフラッグとホワイトフラッグが同時に振られた。“何が何でもゴールはグリーン下で”という運営側の考え方には賛否両論が噴出した。


 最後のリスタートでエリクソンは2番手以下をうまく突き放したかに見えたが、バックストレッチでニューガーデンが追いつき、追い越した。その後にはもう逆転のチャンスは訪れなかった。エリクソンは食い下がったが、0.0974秒差で2位。2年連続優勝はならなかった。

12回目の挑戦でインディ500初優勝を達成したジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)


■7位フィニッシュの佐藤琢磨「悔しいです」


 ニューガーデンのインディ500初勝利はチーム・ペンスキーにとってはインディでの19勝目。インディカーとインディアナポリス・モーター・スピードウェイがロジャー・ペンスキーの所有になってから初めてペンスキー・ドライバーの優勝が記録された。


 シボレーのインディ500優勝は2019年のシモン・パジェノー(当時はチーム・ペンスキー)以来となった。


「多くの人に『なぜあなたはインディ500で勝てないんですか?』と質問され続けてきた。彼らは、“このレースで勝てない私はレーシングドライバーとして不良品だ”ぐらいに考えているようだった。私だって、このレースで勝ちたくて、勝ちたくて仕方がなかった。勝てる自信はあった。そして今回、チームの凄い努力があってそれが実現した。インディのビクトリーレーンに立つことができてとても光栄だ」とニューガーデンは喜び、インディ優勝者の伝統に従ってミルクを飲んだ。


 惜しくも敗れたエリクソンは、「最後の赤旗は出されるべきではなかった。あの後のリスタートは安全ではなかった。タイヤが充分に温まる時間もなかった」とオフィシャルに対して不満を述べた。


「ジョセフ(・ニューガーデン)は見事に戦い切った。彼のことは讃える」とも彼は話していたが、2連覇がレースの主催者によって阻まれた印象もあった。


 3度目のインディ500優勝を目指した佐藤琢磨(チップ・ガナッシ・レーシング/ホンダ)は8番手スタートから7位でフィニッシュした。中盤までにトップ5、終盤にはトップ3へと進出して優勝争いを行うシナリオを書いての決勝出走だったが、トラフィック内でのスピードが不足していて順位を上げていくことができなかった。最後のリスタート連発で順位を上げたが、優勝争いに加われなかったことを琢磨は悔しがっていた。


「インディ500はやっぱり難しいレースですね。最後のピットストップで(ダウンフォース量を増やす方向に)変更したのですが、それが少し行き過ぎになってしまいました。リスタートでは必ず順位を上げ、最後は7位まで順位を上げてゴールすることはできましたが、悔しいですね」と彼は話していた。

総合7位でフィニッシュした佐藤琢磨(チップ・ガナッシ・レーシング)
ジェセフ・ニューガーデン(左:チーム・ペンスキー)と、マーカス・エリクソン(右:チップ・ガナッシ・レーシング)

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