ラッセル、スロー走行に業を煮やしてシケインをカット「ペナルティを受けるつもり」【F1第8戦無線レビュー(2)】
2025年5月29日(木)12時42分 AUTOSPORT web

2025年F1第8戦モナコGP。レース後半もタイヤをマネージメントしながらの走行が続いた。レーシングブルズ勢が無事にピットストップを終えると、今度はウイリアムズ勢も同じ戦略で後続を抑え、その状況にうんざりしたジョージ・ラッセルは大胆な行動に出た。モナコGP後半を無線とともに振り返る。
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レース中盤、上位4台の順位はグリッド順と変わらず。4番手のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)はなんとか前の3台について行ってはいたが、抜けそうな状況ではない。
32周目
フェルスタッペン:僕のシフトは1972年のモナコみたいだ。
ジャンピエロ・ランビアーゼ:了解。
「1972年」の根拠は不明だが、要はマニュアルぐらいシフトに時間がかかると言いたいのだろう。
37周目、6番手を走っていたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)がトラブルに見舞われた。
アロンソ:エンジンがいってしまったようだ。リタイアする。煙が上がってる。
クリス・クローニン:わかった。クルマを止めろ。
一瞬、黄旗が出たものの、アロンソはエスケープゾーンにマシンを止めたため、すぐにコースクリアとなった。今度こそ入賞、のはずだった。しかしこれで開幕8戦を終えて、0ポイントを跳ね返すことは今回もできなかった。
これでウイリアムズの2台は、アレクサンダー・アルボン9番手、カルロス・サインツ10番手と、ダブル入賞の可能性が出てきた。しかしまだ2回目のピットストップが残っている。
ジェームズ・アーウィン(→アルボン):この周のターン12で(サインツと)入れ替わるんだ。ターン12だ。ジョージ(・ラッセル)はコンマ5秒後方だ。
これでサインツが9番手に。8番手リアム・ローソン(レーシングブルズ)追撃態勢に入った。
44周目
エルネスト・デジデリオ:後ろはサインツになったぞ
ローソン:どういうこと?
デジデリオ:(サインツに安全に)ピットインさせるためだ。
一方11番手ラッセルは、すぐ前のアルボンに露骨にブロックされ続けた。
47周目
ラッセル:危険なくらいスロー走行だ。あらゆる場所で急ブレーキを踏まされてる。
マーカス・ダドリー:了解。
直後のヌーベルシケインで、ラッセルはショートカットして前に出た。
ラッセル:アルボンとの接触を避けるためだったんだ。また急ブレーキを踏んだからね。
50周目
アルボン:(ラッセルは)わざと5秒ペナルティを受けるつもりだ。
アーウィン:わかった。サインツはピットインした。
ラッセル:接触を避けるには、あれしかなかった。
ダドリー(→ラッセル):順位を戻すんだ。
ラッセル:いや、あれは事故を避けるためだった。ペナルティを受けるつもりだ。
しかし5秒ペナルティではなく、ドライブスルーを課されてしまう。
55周目
アーウィン:ドライブスルーを食らったが、(ペナルティ消化は)遅らせられるだけ遅らせる。
ラッセル:今は喋りたくない。
後方にいたアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)も、ショートカットしてアルボンを抜いて行った。
ピーター・ボニントン:順位を戻すんだ。
アントネッリ:なぜ?
アントネッリの場合は、追突を避けようとした行動に見えなくもない。しかしメルセデス陣営としては、ふたりともペナルティを受けさせるわけにはいかない。
54周目
ランビアーゼ:首位に立ったが、実際には4番手だ。でも失うものは何もない。このままステイアウトで行くぞ。
フェルスタッペン:了解した。
56周目
ウィル・ジョゼフ(→ノリス):よくやってるぞ。マックスはVSCを待ってるだけだ。
62周目
ガエタン・イエゴ:チェッカーまでに順位を変えるぞ。
サインツ:最終周まで自分のレースをさせてくれ。何が起きるかわからないからね。
65周目
ルクレール:ノリスが遅い。
このまま2番手で終わりたくないシャルル・ルクレール(フェラーリ)は、ノリスの隙を突こうと必死だ。
70周目
ノリス:オスカーはどこにいるんだ。ルクレールにプレッシャーをかけてほしいんだけど。
ピアストリは2秒ほど後方で、決して離れてはいない。しかしノリスはルクレールに追いまくられていた。しかも暫定首位のフェルスタッペンは、かなりのスロー走行だ。
ノリス:マックスに抑えられて、ペースが出ない。(マックスは)全然プッシュしてない。
71周目
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ハミルトンは5番手だが、55秒後ろだ。無視していい。
72周目
スタラード(→ピアストリ):前の連中に近づいて行こう。何が起きるかわからないからね。
73周目
ルクレール:ノリスはミスばかりしてるぞ。
74周目
ジョゼフ(→ノリス):オスカーがルクレールのDRS圏内に入った。あと5周でチェッカーだ。
76周目
ハミルトン:前の連中は相変わらず1分くらい前?
アダミ:チャールズはミディアムで、マクラーレンの2台はかなり近い。
ハミルトン:そうじゃなくて、質問に答えてよ。そんなのはどうでもいい。1分離れてるかどうか知りたいんだ。
アダミ:48秒前方だ。
前戦エミリア・ロマーニャGPでは、ハミルトンと担当エンジニアの関係がようやくスムーズになってきたかと思われたが、まだそうでもないようだ。
ノリス:フェルスタッペンはもう1回ピットだよね?
ジョゼフ:次に入るはずだ。
赤旗中断を待っていたフェルスタッペンだったが、最終周にピットに向かい4番手に終わった。こうしてノリスがモナコ初優勝を達成した。
ジョゼフ:モナコでP1だ、ベイビー。
ノリス:モナコ、ベイビー、イエイ!! モナコで勝ったぞ!
モナコ初勝利ももちろんだが、ノリスにとっては開幕戦オーストラリア以来の今季2勝目で、選手権首位のピアストリに3ポイント差まで近づいたことが、ことさら嬉しかったに違いない。