これを読めばすべてわかる! プレミアリーグ 17-18シーズン「全クラブ通信簿」(11位~20位編)

2018年6月4日(月)7時30分 サッカーキング

17-18シーズンのプレミアリーグを総括 [写真]=Getty Images

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 ペップ・グアルディオラが、名将たるゆえんをこれでもかと見せつけたシーズンだった。首位戦線は序盤からマンチェスター・シティの一人旅。5試合を残しての優勝決定はリーグ史上最速タイだった。前人未到の「勝ち点100」到達を筆頭に、「32勝」「アウェイ16勝」「総得点106」「得失点差+79」「2位との勝ち点差19」と様々なプレミアリーグ新記録を打ち立てたペップ・シティは、イングランド・フットボール史上最高のチームの一つとなった。

 その他にも、色々な記録が生まれた。例えばリヴァプールのモハメド・サラーは、リーグが38試合制になって以降では最多となる「32ゴール」を積み上げ、ハリー・ケインの“3連覇”を阻止して得点王に輝いた。

 また、今季は実に9クラブ、10名もの指揮官がシーズン途中で解任された。シーズン終了後に退任した監督を含めて計15人が職を離れるのは、プレミアの長い歴史の中でも初めてのことだ。アーセナルでの22年間の指揮にピリオドを打ったアーセン・ヴェンゲルを除く14人は、いずれも“ビッグ6”以外のクラブで職を追われたが、近年はプレミア常連となっていたスウォンジー、ストーク、ウェスト・ブロムウィッチが荒療治に失敗して降格の憂き目に遭った。

 一方で監督を代えなかったニューカッスル、ブライトン、ハダーズフィールドの昇格組は残留に成功。伏兵バーンリーは7位に食い込んでヨーロッパリーグの出場権を獲得した。とはいえ、6強を除く14チームすべてが得失点差をマイナスで終える(123年ぶりのこと!)など、ビッグクラブとスモールクラブの実力差は昨季以上に拡大。中堅クラブ不在の“ビッグ6”と“ボトム14”のリーグになった印象だった。

写真=ゲッティ イメージズ
文=大谷 駿


■11位:クリスタル・パレス 60点
 アヤックス流のトータル・フットボールをパレスに植え付けようとしたフランク・デ・ブール監督だったが、これがまったくチームに馴染まず、開幕4連敗であっけなく解任。暫定監督を除けばプレミア史上最短、しかも初めて無得点のまま職を追われた監督となった。そのままチームは開幕7連敗&ノーゴールとイングランド・トップリーグのワースト記録を更新。9〜11月は最下位が定位置で、降格待ったなしかと思われた。
 だが、そんなパレスをミスター・セーフティことロイ・ホジソンが救った。ポゼッションという理想を捨て、現実的に勝ち点を積み上げる組織力重視のスタイルに切り替えたチームは徐々に息を吹き返し、最後は6戦負けなし(4勝2分け)で11位まで浮上した。
 クリスティアン・ベンテケが31試合出場で3ゴールとネットの揺らし方を忘れてしまった中、魔法の杖を振るったホジソンが最も頼りにしていたのがウィルフリード・ザハだった。29試合出場で9得点3アシストのウインガーは、トップ6を除けばリーグ年間MVP級の活躍ぶり。彼が欠場した9試合は全敗だったというデータを見ても、攻撃をリードし続けたザハへの依存度がどれほど高かったかがうかがい知れる。


■12位:ボーンマス 70点
 チェルシーから買い取ったネイサン・アケや、かつてのジャック・ウィルシャーを思わせるプレーでブレークしたルイス・クックらが輝き、今季もサポーターの期待にしっかり応えてトップリーグ初昇格から3季連続での残留を決めた。昨季より3つ順位を落としてトップハーフを陥落したことで、エディー・ハウ監督が次期代表監督やアーセン・ヴェンゲルの後継者に推されていた一時期のような“ブーム”こそ去った。しかし、スモールクラブながら弱者の戦い方に甘んじず、魅力的なフットボールを追求しようとする姿勢はすっかり定着し、ボーンマスの存在は完全にプレミアリーグの景色に馴染んだ感がある。
 とはいえ、ヴェンゲル退任によってプレミア最長任期の監督になったハウは現状に満足していないはずだ。今季はアスミル・ベゴヴィッチ、ジャーメイン・デフォーなど経験豊富な選手を迎え入れて臨んだにも関わらず、期待のデフォーが24試合4得点と不発に終わり、チームも好不調の波が激しかった。開幕4連敗、8戦勝ちなしだった11〜12月など不調の時期もあれば、アーセナル、チェルシーを破ってハウが月間最優秀監督に選ばれた1月のように絶好調の時期もあった。一貫性を身につけるのが次のステップだろう。


■13位:ウェスト・ハム 40点
 昨季に続き、相変わらずカオスから抜け出せないシーズンだった。捲土重来を期して開幕前にいい補強をして、トップ10入りは固いかに見えた。だが、ジョー・ハートやパブロ・サバレタを獲得した守備陣はよく言えばベテランぞろいだが、実際は「ロートル」感を露呈するばかり。失点数「68」はリーグワーストタイだった。
 攻撃陣も、マルコ・アルナウトヴィッチ、ハビエル・エルナンデスといった新加入組のエンジンのかかりが遅かった。開幕3連敗で出遅れるとその後も思わぬ苦戦が続き、11月にはスラヴェン・ビリッチ解任、デイヴィッド・モイーズ招聘という荒療治を施さざるを得なかった。
 クラブを落ち着かせ、就任時は18位だったチームを13位まで浮上させたモイーズ監督は、アンディ・キャロルやマイケル・アントニオなど主力に故障者が多かった中でも堅実に自分の仕事を遂行した。シーズン後半にアルナウトヴィッチが鮮やかに復活したのも、モイーズがウイングから中央にポジションを移したのがきっかけだった。
 ところが、どうやら契約時から「シーズン末まで」でクラブと納得しあっていたとのことで、モイーズは5月でお役御免に。新監督にはマヌエル・ペジェグリーニの就任が決定した。元シティの指揮官の下で、来季は“ハマーズらしい”攻撃フットボールを改めて模索していくことになる。


■14位:ワトフォード 50点
 プレミア昇格3年目のシーズンは最高のスタートを切った。ブラジル産の若手ドリブラー、リチャーリソンが躍動して観る者に爽やかな驚きをもたらすと、中盤ではエネルギッシュなアブドゥライェ・ドゥクレがゴールを連発し、大きな存在感を発揮。第8節にはアーセナルを2-1で撃破して4位まで浮上した。
 ところが、思わぬ好調の副産物がチームを苦しめることに。その手腕を買われたマルコ・シウヴァ監督にエヴァートンがアプローチをかけ始めた頃から、周囲の喧騒に影響されたのか、チームはどんどん下降線をたどっていく。年が明けるとクラブもとうとう我慢の限界に達し、監督交代を決断。元マラガのハビ・ガルシア監督を後任に据えた。
 ただし、政権交代後の成績は4勝3分7敗とあまり振るわず、順位もシルヴァ解任時の10位から14位に落ちた。結局はシウヴァ体制で稼いだ貯金を切り崩しながら残留までこぎつけた形で、終わってみればごくごく平凡なシーズンに落ち着いた。
 事態が悪化するにつれ求心力を失っていったとはいえ、戦術家としては優れていたシウヴァ前監督の解任は多くのサポーターを失望させた。ちなみにそのシウヴァはこの夏、今度こそ大手を振ってエヴァートンへと行くようだ。


■15位:ブライトン 80点
 開幕直後を除けば、シーズンを通じて一度も降格圏に落ちることなく昇格1年目のシーズンを戦い抜いた。ホーム最終戦でマンチェスター・Uを1-0で破って残留を確定させるというフィナーレにも、サポーターは大満足だったことだろう。
 元プロギャンブラーという異色のオーナーが率いるクラブは、初のプレミアに向けた移籍市場で“賭け”に勝った。わずか300万ポンドほどの移籍金でインゴルシュタットから獲得したドイツ人MFパスカル・グロスは7ゴール8アシストで全得点の44%に絡み、クラブ年間MVPに輝いた。他にもダヴィ・プレパー、ホセ・イスキエルド、マシュー・ライアンなど、新加入組が昨季2部王者のいいスパイスになった。
 一方では、ベテランのグレン・マレーに2部時代から引き続きエースストライカーを任せる決断も吉と出た。プレミア経験が浅い34歳はチームトップの12ゴールを挙げ、残留に大きく貢献している。
 最終ラインを支えたルイス・ダンクやシェーン・ダフィーも含め、小粒だがなかなか個性豊かなローカルヒーローたちをしっかりと結束させ、ピッチ上では不要な“ギャンブル”に出ることなくチームに安定をもたらしたクリス・ヒュートン監督の手腕も見事だった。


■16位:ハダーズフィールド 80点
 開幕2連勝とスタートダッシュを決め、10月にはマンU相手にジャイアントキリングを成し遂げて自信をつけた。中盤戦以降は周囲との戦力格差によって勝ち点を伸ばせない時期もあったが、最後は5月にマンC、チェルシーとのアウェー戦で意地のドローをつかみとり、1試合を残してプレミア残留を決めた。46年ぶりのトップリーグで、降格候補の筆頭と言われながらも生き残ることができたのは、クラブ史に残る偉業である。
 かつてドルトムントのセカンドチームで監督を務め、当時からクロップと親交が深いデイヴィッド・ワグナー監督は、その友人と同じハイプレッシング戦術を得意としていたが、それを封印して“サバイバル仕様”の現実的な戦い方を選択するしたたかさと適応力を持っていた。また、選手たちが指示を受け入れて戦い抜けたのは、これまたクロップと同様クラブにポジティブオーラを振りまき、チームを一致団結させたワグナーのマネジメント能力があってこそだった。
 ピッチ上では、名パサーの評判を得たMFアーロン・モーイや、クラブの英雄であるDFクリストファー・シンドラーらが大奮闘。中盤と守備陣の頑張りが、リーグ最少タイの28得点という攻撃陣の脆弱さをカバーした。


■17位:サウサンプトン 20点
 過去4シーズン連続でトップ10を維持し、中堅クラブの「モデルケース」ともてはやされてきたサウサンプトンだったが、今季はリーグで最も期待値を下回ったクラブだった。年明けから最終盤までずっと降格の危機と隣り合わせで過ごしたシーズンは、それほど残念なものだった。
 監督選びには定評があったはずのセインツだが、今季はマウリシオ・ペジェグリーノ新監督が選手からもサポーターからも信頼を得られず。3月、ニューカッスルに0-3で完敗して降格が現実味を帯びたところで、クラブは解任の決断を下した。
 これまでは気鋭の青年監督や国外の新たな才能を発掘してきたセインツだが、今回ばかりは残留のためにプレミア経験豊富なマーク・ヒューズを新監督に招聘。ストークをクビになったばかりとはいえ、さすがの堅実な仕事ぶりでヒューズは残留のノルマを果たした。ただ、クラブが大切にしてきた“攻め”の姿勢を放棄してしまったのは寂しいばかり。ギリギリで残留を喜ぶしかない様子は、弱小だった1990年代に逆戻りしてしまったかのようだった。
 ピッチ上での問題点は、1900万ポンドを投じたグイド・カリージョがわずか625分間しかプレーできずノーゴールに終わった他、一時は好調だったチャーリー・オースティンも故障に泣き、マノロ・ガッビアディーニもブレークならず。エースを固定できなかったゆえに試合を決めきる力を欠いた結果が、リーグ最多の「15分け」という数字だった。


■18位:スウォンジー 15点
 開幕前の夏、昨季9ゴール13アシストのギルフィ・シグルズソンがエヴァートンに、15ゴールだったフェルナンド・ジョレンテがトッテナムに引き抜かれた。その穴がもろに響いた結果が、2011-12シーズンの初昇格から7シーズンでワースト成績につながった。
 総得点「28」はリーグワーストタイ。失点数「56」は昨季から14点減とやや持ち直したが、ゴール欠乏症が残留争いで足かせになった。アンドレ&ジョルダンのアイェウ兄弟にウィルフリード・ボニー、若手の雄タミー・エイブラハムといったFW陣が誰もコンスタントに活躍できなかったのがあまりに痛かった。
 3人の監督がたすきリレーをした昨季に続き、今季もポール・クレメント監督がクリスマス直前に更迭され、カルロス・カルヴァリャル監督にバトンタッチ。監督交代から最初の7試合は4勝2分1敗と仕切り直しに成功したかに見えたが、その後は再び泥沼にハマり、ラスト9戦勝ちなし、わずか3ゴールとやっぱり決定力不足が顔を出し、あえなく降格となった。
 もはや代名詞だった「白鳥が舞うようなパスサッカー」などと言っている余裕もなく、ただの「飛べないアヒル」に成り下がったスワンズ。今のチーム状態だと、1年でプレミアに復帰するのは難しいかもしれない。


■19位:ストーク 5点
 プレミアの中堅クラブではきってのタレント集団だったにもかかわらず、見るも無残なシーズンになった。毎夏のように大量補強をするため出足が悪いのはいつものことだったが、今季は11月になっても12月になっても調子が上がらず、5年間の指揮でクラブを上昇させたマーク・ヒューズを、1月にとうとう解任した。
 実はこの時点でチーム内の雰囲気は相当に悪かったようで、後任のポール・ランバート監督はそこにメスを入れる。練習態度に問題があったイブラヒム・アフェライ、サイード・ベラヒーノがトップチームを追放され、その後もヘセ・ロドリゲスが練習を無断欠席し、エリク・ピーテルスが外出禁止令を破って罰金を科されるなどゴシップ紙が喜ぶネタが次々と出てくる結果となった。崩壊していた規律を正すという新監督の判断自体は間違っていなかったが、皮肉にもピッチ上の出来は悪化の一途を辿っていき、ラスト13試合勝利なし。結果が伴わない正義はファンにも受け入れてもらえなかった。
 ジェルダン・シャチリや守護神ジャック・バトランドなど、ボロボロのチームで孤軍奮闘した選手もいなかったわけではないが、そういった選手の多くはこの夏に新天地を求めることになるだろう。チームの再建は茨の道になりそうだ。


■20位:ウェストブロムウィッチ 10点
 「退屈」と揶揄されながらもチームに守備の安定と残留をもたらしてきたトニー・ピューリス監督だったが、今季は開幕12試合で勝ち点わずか10と結果を出せず、あえなく解任となった。それだけならまだ立て直しが利くはずだったのだが、次の監督人事が明暗を分けた。
 新監督に任命されたアラン・パーデューは、組織と規律を重視するピューリスとは正反対で、選手の自由を尊重するタイプ。だが、「自分を表現してこい」と言うばかりで具体的な指示に乏しいパーデューのカラーと、ピューリスが集めてきた選手の個性が合っていなかったのか、パーデュー就任後の18試合でわずか1勝(5分12敗)、手に入れた勝ち点はたったの「8」で、チーム状態は好転どころか悪化した。
 結局、パーデューもクビになって最後はダレン・ムーアに指揮を託すと、彼は6試合で前任の2人を上回る11ポイントを稼ぎ出す。皮肉にも、名の知れた前任者2人よりも無名の暫定監督がサポーターからリスペクトを受けることになった。しかし、時すでに遅し。安全第一と健全経営をモットーにプレミア定着を果たしたはずのウェストブロムだが、8シーズン連続で踏みとどまっていたプレミアリーグにとうとう別れを告げることとなった。

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