プレミア昇格組は生き残れるのか? 積極補強のウルブスとフルアムに注目、カーディフは苦戦か

2018年8月10日(金)12時20分 サッカーキング

ルベン・ネヴェス、アーロン・グンナルソン、ライアン・セセニョン(左から) [写真]=Getty Images

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 昨シーズンのプレミアリーグでは、昇格組の健闘が光った。今シーズンから武藤嘉紀が加入する古豪ニューカッスルはラファエル・ベニテス監督の下で昇格1年目ながらトップ10フィニッシュ。ともにプレミア初挑戦だったブライトン、ハダースフィールドもそれぞれ15位、16位でサバイバルを勝ち残った。昇格3チームがすべて残留したのは6年ぶりのことで、プレミアリーグ創設から26シーズンで2000−01(フルアム、ブラックバーン、ボルトン)、2011−12(QPR、ノリッジ、スウォンジー)に続いてわずか3度目のことだった。

 そして来たる新シーズン、プレミアに昇格してきたのは、ウルヴァーハンプトン、カーディフ、フルアムの3クラブである。いずれも過去10年以内にプレミア在籍経験があり、当時のチームを覚えているファンもいるかもしれない。ここでは、久々にトップリーグへと戻ってきた彼らの現状を紹介していきたい。

■ウルヴァーハンプトン・ワンダラーズ

 まずは2部チャンピオンシップを圧倒的な強さで制したウルヴズだが、そのプレーぶりはさしずめ「2部のマンチェスター・C」と呼べるような代物だった。ポゼッションを基本にパスワークで相手を揺さぶるスタイル、アグレッシブなハイプレッシングで前から相手をはめていくアグレッシブな守備、そしてボールを奪ったら素早く相手ゴールに迫り、次々とチャンスを作り出していく攻撃力。プレミアを制したシティにどこか似たスタイルで、彼らは2部を席巻したのだ。

 その中心を担うのが、MFルベン・ネヴェス。17年にポルトから加入した、ポルトガル代表の未来を担う21歳の逸材である。なぜ、イングランド2部の弱小が、ビッグクラブも垂涎の新星を獲得できたのか。6年前にプレミアから降格し、翌年には3部にまで落ちてしまった当時なら考えられないことだが、そこにウルヴズ躍進の秘密がある。

 16年夏、中国・上海を拠点とする企業グループ「復星国際」がクラブを買収。さらに、この交渉を橋渡ししたのが、クリスティアーノ・ロナウドの代理人として知られるポルトガル人のジョルジュ・メンデスだった。一連の買収劇で、ウルヴズは資金力と、メンデスの“コネクション”を手に入れた。その文脈でウェストミッドランズにやってきたのがネヴェスであり、そしてバレンシアやポルトの指揮を歴任してきた現監督のヌーノだったのだ。

 他にも、昨季チーム得点王のFWディオゴ・ジョッタ、元ベンフィカのFWエウデル・コスタにMFイヴァン・カヴァレイロと、ポルトガルの“準代表クラス”がチームにはズラリ。今夏はここに現役代表選手のMFジョアン・モウチーニョ、GKルイ・パトリシオまで加え、さらに“ポルトガル・コネクション”でベンフィカからW杯出場戦士であるメキシコ代表FWラウル・ヒメネスを連れてくるなど、およそ昇格組とは思えない補強が実現している。

 イングランドでは代理人がクラブ経営に関わることが禁じられているため、表面上はあくまでも「無関係」とシラを切るメンデスのやり口には賛否両論あるだろう。だがそれでも、結果的にできあがったのが2部最強チームであり、今季のプレミアでもいきなりトップ10を狙って然るべきタレント軍団なのだ。新シーズン、そんなウルヴズの動向にはぜひ注目しておきたい。

■カーディフ

 一方、2部2位で昇格したカーディフは、ウルヴズのような大型補強とは無縁のこじんまりとしたチームである。プレミア経験者は数えるほどで、戦力的には残留争い待ったなし。自身8度目の昇格という偉業を成し遂げた名伯楽のニール・ウォーノック監督も「チャンピオンシップのスペシャリスト」ではあるもののプレミアではさしたる実績がなく、「タックル、ブロック、ロングボール」の古典的スタイルでどこまで戦えるかは疑問が残る。残念ながら現地メディアや識者の予想はほとんど最下位だ。

 なお、カーディフといえば前回プレミアに在籍した12年に、マレーシア人オーナーのヴィンセント・タンが「ブルーバーズ」のチームカラーを独断で「赤」に変えてサポーターに総スカンを食らった事件が印象深い。その後の顛末を記しておくと、15年に伝統の「ブルー」は無事に帰ってきている。ワンマンオーナーは今年になって「色を変えたのは間違いだった」とようやく非を認め、フットボールクラブ経営のいろはを学んだ最近は無鉄砲な大型投資も控えており、地に足のついたマネジメントをしている。そんな経緯もあって「スポーツ界で最低のオーナー」と言われた頃のような悪名はなく、それ自体は好ましいことなのだが、ことプレミアを戦う上でビッグネームを補強できないのは痛恨だ。今夏の新戦力は“2部レベル”の選手ばかりで、やっぱり苦戦は免れそうにない。

■フルアム

 それに比べれば、昨季2部3位で、アストン・ヴィラとの昇格プレーオフ決勝を制して5シーズンぶりに帰ってきたフルアムの方が、正直かなり残留に近いところにいるように思える。ロンドンはテムズ川に面した風情ある本拠地クレイヴン・コテージで戦うこのチームには、実に様々な見どころがある。

 その最たる例が、昨季17歳にして2部の年間最優秀選手に輝いたライアン・セセニョンの存在だ。気鋭の左サイドバックから本格派のウインガーに進化し、シーズン15得点を挙げてのブレークはまさにギャレス・ベイルと同じ道。この夏でビッグクラブに引き抜かれても不思議はなかったが、本人がプレミア初挑戦はユース時代から在籍するフルアムで、と決意して残留とあいなった。2000年生まれの超新星が、トップレベルでどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。

 元チェルシーのMFだったスラビシャ・ヨカノヴィッチ監督を中心に、データを用いた徹底的なリサーチの下でターゲットを決める補強策も、ウルヴズほどの派手さはなくとも堅実で効果的。この夏はバルセロナも目をつけていたニースのコートジボワール代表MFジャン・セリや、かつてのW杯優勝メンバーでありプレミア経験もあるアンドレ・シュールレらをチームに加え、昇格の立役者だった指揮官の同胞FWアレクサンダル・ミトロヴィッチをニューカッスルから買い取ることにも成功した。

 さらに移籍最終日にも積極的に動き、セルヒオ・リコ(←セビージャ)、ティモシー・フォス・メンサー(←マンチェスター・U)、アンドレ・フランク・ザンボ・アンギサ(←マルセイユ)、ルシアーノ・ビエット(←アトレティコ・マドリード)と、バックラインから前線まで一気に補強。なかなかどうして、陣容は悪くない。十分に残留を狙えるチームだろう。

文=大谷駿

サッカーキング

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