町野修斗が好調発進のキールをけん引、貪欲に新天地適応中

2023年9月4日(月)22時22分 サッカーキング

今季からホルシュタイン・キールでプレーしている町野 [写真]=Getty Images

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「ドイツ2部がゴールではないし、あくまで通過点。なるべく早くチームが昇格できればベストですけど、自分としてはブンデスリーガやプレミアリーグのビッグクラブで活躍するのが目標。得点を重ねて、世界に注目してもらえる活躍をしたいと思っています」

 初の海外挑戦に向け、強い意気込みを口にした7月3日の移籍会見から2カ月。町野修斗は新天地のホルシュタイン・キールで開幕からスタメンをつかみ、着実に実績を積み重ねている。

 今季リーグ5戦目となった9月2日のパダーボルン戦でも、背番号13をつける日本人FWは3−5−2システムの2トップの一角に陣取り、キックオフからアグレッシブさを前面に押し出した。

 町野の最初のビッグチャンスは開始早々の6分。ドルトムントからレンタルされている18歳のトム・ローテのスルーパスに反応。ペナルティエリア右側でフリーになり、最高のタイミングで右足を振り抜いた。誰もが先制点だと確信するような決定機だったが、シュートはまさかの右ポスト直撃。千載一遇の好機を逃す形になった。

「あのビッグチャンスを決められなかったことがちょっと気になって、うまく切り替えられなかった」と町野は本音を吐露する。

 そのせいか、その後はボールを受ける回数がやや減ってしまう。逆にパダーボルンに1点を先制され、キールはやや苦しい展開を強いられた。これを跳ね返すべく、攻撃陣が前線から激しくボールを取りに行き、31分にはローテが同点弾をゲット。1−1に追いつくことに成功した。

 そして前半終了間際の43分、町野自身に2度目の決定機が訪れる。スティーヴン・スクリプスキのラストパスを受け、GKと1対1になった。今度こそゴールを奪い、今季3度目の忍者ポーズをお披露目するはずだったのだが、このシュートも相手の正面。枠を捉えることはなかった。

「慎重になりすぎてしまった。もっと思い切って打てばよかったなと思いました」と前半だけで2度の得点機を逃した男は大いに悔しがった。

 メンタル的にはモヤモヤ感を拭えなかったというが、気持ちを切り替えて後半へ。マルセル・ラップ監督の指示もあり、少し下がり目でボールを受けて、攻撃のお膳立てに回る時間が増えてくる。町野の機転の利いた動きで流れが格段に改善。61分にはスクリプスキの超ロングシュートが見事にネットを揺らした。これが決勝点となり、最終的にキールは2−1で勝利。町野は85分に退いたものの、今季4勝目に貢献する仕事ぶりを見せたのだ。

 これで4勝1敗の勝ち点12で現在2位。過去に1度も1部昇格経験のない北部の中堅クラブにとっては願ってもない好スタートと見ていいだろう。

「キールはまだまだ完成されたチームではないし、今季の目標もまずは勝ち点40を取ることなんです。僕が『優勝』と言ったら、『それはまだ』と言われました(笑)。だからこそ、1試合でも早くそのラインをクリアして、もっと上を狙っていきたい。僕自身もここまで2ゴールですけど、今日も2点取れるチャンスがあったし、もっともっと結果で貢献したい。信頼を勝ち取っていきたいです」と町野は目指すべきところを明確に見据えている様子だ。

 真摯な姿勢でサッカーやチームメイトと向き合う日本人FWを評価する人は着実に増えている。スタジアムを訪れるサポーターの中にも背番号13のユニフォーム姿の人がかなり目立った。FIFAワールドカップカタール2022でドイツを撃破した日本代表の一員だったFWが加入することで、開幕前から町野に対する期待値は非常に戦ったようだが、それに見合ったパフォーマンスをここまでは示していると言えそうだ。

「僕自身は割と長い時間、出場させてもらっているので、信頼度もある程度は高まっているのかなと思います。みんなチームを大事にするという意識が強いし、いい人ばかりなので、僕自身も助けられているし、すごく楽しいです。だけど、今日はノーゴール。もっと結果で応えないといけないと思ってます」と助っ人FWはチームを勝たせる存在になるべく、自己研鑽に励んでいくつもりだ。

 その先に日本代表復帰も見えてくるはずだ。今回の9月シリーズの初戦はキールと同じ北部のヴォルフスブルクでのドイツ戦。町野自身も参戦したいという思いは強かっただろうが、代表入りは叶わなかった。

「まだドイツに来たばかりですし、もっと数字を積み重ねていかないと難しい」と本人も森保一監督の判断に理解を示している。今は新天地で存在感を高め、圧倒的なパフォーマンスを出すことが先決だ。凄まじい活躍を見せていれば、指揮官も「町野が必要」という判断になるはず。そう仕向けるべく、今はキールの絶対的得点源になることだけに集中していく構えだ。

 シュートやポストプレーだけでなく、前線からの守備やロングスロー、FKも持っている万能型FWの未来は明るい。新天地の町野はそういう前向きな印象を与えてくれている。この調子で一気に成長曲線を引き上げ、日本屈指の1トップに成長してくれることを強く祈りたい。

取材・文=元川悦子

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