RLLR復帰1年目の佐藤琢磨。厳しいシーズンも大きな1勝を手に入れ来季の土台を作る

2018年9月23日(日)15時0分 AUTOSPORT web

 インディカー参戦9年目となる佐藤琢磨の2018年シーズンは、フル出場17戦で1勝、ポールポジションなし、ランキング12位という結果で終えた。インディ500でのビッグウインを飾った翌年の成績としては物足りなく感ずる。


 その背景には、インディ500を共に制したアンドレッティ・オートスポートを離れ、2012年に在籍したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングへ復帰するという参戦体制の変更があった。琢磨がインディ500で勝った後ぐらいから、アンドレッティ・オートスポートは2018年からエンジンをシボレーにスイッチすることを検討。ホンダドライバーである琢磨はホンダチームにシートを確保する必要に迫られた。


 結果的にアンドレッティ・オートスポートはホンダ陣営に残ったが、マイケル・アンドレッティがそう決断する前に琢磨はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングとの契約を済ませていた。


 2018年のアンドレッティ・オートスポートは、アレクサンダー・ロッシが3勝+3PPで最終戦までチャンピオン争いを行い、ランキング2位。ライアン・ハンター-レイはシーズン後半戦までタイトル争いに加わって、2勝+1PPでランキング4位となった。


 マルコ・アンドレッティは勝利なしだが、1PPでランキング10位。ルーキーのザック・ビーチ以外の3人が琢磨よりランキング上位でシーズンを終えた。琢磨はダブルポイントの2レース(インディ500と最終戦ソノマ)でリタイアしたため、シーズンを通してのパフォーマンスより実際のランキングが低くなってもいた。


 もし琢磨がアンドレッティ・オートスポートに残留していたら、ロッシやハンター-レイと共にチャンピオン争いをしていた可能性は高く、移籍は失敗と見ることもできる。しかし、昨シーズンの半ば、琢磨が移籍を決意した頃、アンドレッティ・オートスポートははまだ4台をフルシーズンで走らせ、開発も精力的に行うための資金を確保できていなかった。


 そんな心配もあったために琢磨はエンジニアリング体制を強化し、2カーで戦うためのスポンサー獲得に成功していたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングを選んだのだ。


■期待していた新パッケージの理解度は後手に


 最近の3シーズン、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングはグラハム・レイホールただひとりを走らせる、マルチカーのチーム群相手に明らかに不利な体制で2勝(ランキング4位)、1勝(ランキング5位)、2勝(ランキング6位)という好成績を続けて記録。満を持しての2カー体制復活にあたり、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは琢磨を歓待した。


 2018年はユニバーサルエアロキットの新規導入がされた。琢磨の目論見は、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングが3シーズンに渡って見せて来たサスペンションセッティングでの優位は新エアロでも有効、新パッケージの理解度でライバル勢に先んじてシーズン序盤から戦いのイニシアチブを握るというものだった。


 しかし、それとは逆にレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは新エアロへの順応で後手に回った。


 琢磨苦戦の裏には戦術面の弱さもあった。ピットタイミングが遅いことで不利に陥るケースは少なくなかった。また、2012年に何度も素晴らしいコールをしていたボビー・レイホールが琢磨のピットには陣取っていたが、しばらくそのポジションを離れていたためか勘が鈍ってもいた。


■上昇のきっかけをつかんだ中盤戦


 チーム全体としてパフォーマンスの上昇が見られたのは、インディ500後のデトロイトからだった。テキサス、ロード・アメリカで琢磨は上位を争い、アイオワでついに3位でシーズン初表彰台に上った。


 そしてもうシーズンが残り2戦となったポートランドで、琢磨は予選20番手からの優勝を達成。このレースではまず作戦が良く、チーム全体としてのその遂行も完璧だったが、最も光ったのは琢磨の冷静沈着なレース運び、ミスのない完璧なドライビングだった。

ポートランド戦の勝利はダラーラのインディカー300勝目となった


昨年のインディ500終盤でのエリオ・カストロネベスとの攻防、そして今回のライアン・ハンター-レイを相手にしたバトルで、琢磨への評価はさらに上がった。アグレッシブで、ファイティングスピリットや勝利に向けた強い意欲が目に見える走りをする琢磨は、今やアメリカのファンの間でもトップかそれに近い人気を誇る。


 各レース最初の走行セッションで好発進を果たせなかった2018年の琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは、プラクティスや予選を通してセッティングを改善して行った。


 そして、レースに向けては、その週末に集めたデータから、一歩進めたセッティングを施すケースが多くなっていたが、琢磨陣営は高い確率でマシンのパフォーマンス向上を達成していた。

エンジニアのエディ・ジョーンズと勝利を喜ぶ琢磨


 琢磨とレイホール二世の信頼関係は厚く、琢磨の豊富な経験、技術面への高い理解度、担当エンジニアのエディ・ジョーンズとの長いミーティングがチームのエンジニアリング強化に貢献し、近い将来の飛躍に向けた土台作りが進んだ。


 ボビー・レイホールが思い描いているのは、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングをシリーズチャンピオンの栄冠を毎年争えるチームに育て上げること。2カーに戻っての2シーズン目となる2019年、琢磨とグラハムのふたりには各レースでの優勝、そしてチャンピオンの座を争うことが期待されている。

アメリカでも人気ドライバーのひとりとなった琢磨。インディカー参戦10年目の活躍はいかに?


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