【コラム】快挙を成し遂げた17歳の中村敬斗…飛躍の裏に“結果を出す男”の存在あり

2017年10月9日(月)12時50分 サッカーキング

ハットトリックを達成した中村 [写真]=佐藤博之

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 10月8日に行われたU−17ワールドカップの初戦でホンジュラスと対峙した日本は、右MFで先発した中村敬斗(三菱養和ユース)の3得点などで北中米カリブ海地区の雄を圧倒。6−1の大勝を収めて、初戦で貴重な勝ち点3を獲得してみせた。

 男子サッカーのFIFA主催の主要国際大会で初めてのハットトリックだった。まずは前半22分、FW久保建英(FC東京U−18)の鋭いCKに対して、ホンジュラスDFの間に上手く入り込んでのヘディングで合わせて先制点を奪い取る。さらに30分には、再び久保のパスを巧みなファーストタッチでスペースに落として抜け出すと、寄せてきたDFを弾き飛ばし、最後は前に出て来たGKをかわして左足シュートを流し込む。このあとCKから1点を返されたものの、43分にはまたしても中村。今度は逆サイドのMF上月壮一郎(京都U−18)からのスルーパスに抜け出して、またも左足シュートを流し込んでみせた。

 森山佳郎監督の中村評は「右足の振り抜く力、シュート力を持っている」というもので、これは2年前にU−15年代で招集されたときからの一貫した評価だ。「高校生でもそうはいない」と、このシュート力を一つの武器として高く評価してきた。一方、当時から指揮官が指摘し、中村本人も認めていたことだが、左足のシュートに関しては少々課題もあった。この時点で、森山監督は2年後の“世界”に向けた宿題を出していたようなものだ。

 そして迎えた待望の世界舞台。冷静な印象もある中村だが、試合前から高揚感を隠せなかったという。しかし初戦のプレーぶりは、やはりクールであった。そして足で奪った2得点は、いずれも「左足」である。「いまは左右大差なく打てるようになっている」と本人が語るように、右をオトリにしながら左で狙うプレーは一つの得点パターンにもなってきた。この新たな武器を手にしたことで、中村は右サイドのMFとして信頼して起用されるようになった。昨年のアジア最終予選のパフォーマンスは決して高くなく、一時は当落線上になったこともあったのだが、指揮官の出した宿題に応える新たな武器でポジションをつかみ取った形だ。

 1点目のヘディングシュートも印象深い。180cmの長身選手だが、本人も認めるとおり頭でのゴールというパターンは少なかった。実はこれも昨年の最終予選を前に本人が挙げていた課題の一つ。「もっとクロスボールに合わせるとか、そういう形でのゴールも増やしたい」と意識して取り組んできたことが、世界大会で花開くこととなった。

 U−20W杯を終えた直後にプリンスリーグ関東の試合で取材した際、中村はMF堂安律に刺激を受けたことも明かしていた。U−16代表ではどうしても久保にばかり注目が集まることに対してのモヤモヤ感もあったのだが、同様の立場に見えた「堂安くんは結果で納得させていた」というわけだ。大会が始まってしまえば、そこまでの注目度など関係ない。世界を振り向かせるための結果を残せばいいのだという分かりやすい「例」を堂安は示してくれたというわけだ。

 そして迎えた世界舞台で中村が見せ付けたのは、まさに「結果」。これを積み上げて世界中から一目置かれる選手になる。このハットトリックは、そのための第一歩だ。

文=川端暁彦

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