【検証サウジ戦】森保ジャパンが前後半で見せた「違う顔」 久しぶりに”らしい”試合になった理由

2024年10月12日(土)17時0分 ココカラネクスト

スピード豊かな両サイドを活かしたカウンターは、やはり森保ジャパンの持ち味だ(C)Getty Images

 鬼門のアウェーを越えたのは大きい。過去2大会のワールドカップ・アジア最終予選で2連敗していたアウェーのサウジアラビア戦を2−0で制し、日本代表は最終予選3連勝を飾った。

 この試合は、久しぶりに森保監督の実戦采配が見られた。スコアと時間帯に応じたプレーで大人勝ち。中国戦やバーレーン戦で見せた圧勝型の森保ジャパンは、やはり仮の姿に過ぎなかった。

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 前半は敵陣プレッシングを試みるも、予想に反して4−3−3を敷いたサウジアラビアに対し、ミスマッチで3−4−2−1(守備時5−2−3)のプレスが空振りした。そのため、鎌田大地と三笘薫の左サイド側を上げ、南野拓実と堂安律の右サイド側を下げるアシンメトリー・プレスで、4−4−2気味に形を変えながら積極的にボールを奪いに行った。

 ビルドアップも同様のミスマッチを抱えたが、守田英正を中心に改善。前半14分には2分以上に渡ってボールを握る展開から、鎌田のゴールで先制した。その後も日本のペースで試合が進み、前半終盤は押し込まれてピンチもあったが、GK鈴木彩艶のビッグセーブで胸を撫で下ろす。

 その後、1−0で折り返した後半は、明らかに日本の戦い方が変わった。

 前半に見せた、4−4−2気味アシンメトリー・プレスは終了。高い位置からのハイプレスをやめ、鎌田と堂安(後半は南野のポジションに堂安)は中盤に下げて、5−4−1で固定。上田綺世の守備はセンターサークルからスタートし、自陣に構える形になった。相手ゴールキック時も一応は敵陣に立つものの、ほとんどボールを追わず撤退。このため、前半はほぼイーブンだったボール保持率が、後半はサウジアラビアが大きく上回ることになった。

 単なる守備固めなら、時間帯が早すぎるんじゃないか?と茶々を入れたくなるが、これはそうではない。右ウイングハーフを堂安から伊東純也に代え、左ウイングハーフも後半18分に前田大然に交代。走力と体力のある2人を両翼に置く5−4−1で、低く構えてボールを奪い、ロングカウンターによる一発で追加点をねらう。狙撃型ショットガン・システムだ。

 5−4−1も両翼に伊東と前田が立つと、それほど守備的に見えないというか、相手の立場で見れば、相当嫌だろうと感じる。また、人の配置だけでなく、この5−4−1の最終ラインはかなりラインを高くし、引きすぎないようにコンパクトさを保った。スペースが無いので、サウジアラビアはエースのアル・ドゥサリが下がってボールを受けようとするのだが、彼がゴールから遠ざかってボールに触るのは、日本にとっては願ったり叶ったり。ハイラインの5−4−1は、サウジアラビアの特徴を踏まえても有効だった。

 ただ一方で、ラインが高い反面、時折蹴り込まれるロングボールには少し怖さがあった。特に後半44分に右サイドからのロングボールに飛び出したサレハ・アルシェハリが、谷口と板倉滉の間をすり抜けてヘディングを見舞った場面は、小川航基の追加点が決まった後とはいえ、決定機だった。

 アルハシェリがヘディングした箇所は、ペナルティーマークとゴールエリアのラインの中間。ボールの滞空時間の長さを考えれば、GK鈴木に飛び出してキャッチしてほしいところだ。ラインを高くした守備は、スピードに持ち味のある日本のCB向きの戦術ではあるが、同時にスペースを分担カバーするGKの守備範囲も必要。鈴木はアジアカップで話題になって以降、日本代表でのプレースタイルが慎重になった印象があるが、ワールドカップの頂点を目指すなら、要求したいポイントではある。

 そうした改善点も無いわけではなかったが、冒頭に話を戻すと、サウジアラビア戦の森保ジャパンは、前後半でチームの違う顔を見せた。

 カタールW杯のドイツ戦やスペイン戦を思い返すと、ビハインドで後半に入り、ファイヤープレスで2−1の逆転劇を導いた。親善試合のドイツ戦は、4−2−3−1で試合に入り、2−1でハーフタイムを迎えた後、後半は5−4−1の守備固め+ロングカウンターでリードを4−1に広げた。

 いずれの森保ジャパンも、前後半はまるで別のチームのよう。そこに今回のサウジアラビア戦が加わった。1−0の前半を終えた後、狙撃型ショットガン・システムで2−0に点差を広げ、クローズ。見事。

 久しぶりに森保ジャパンらしい試合だった。

[文:清水英斗]

ココカラネクスト

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