スバルの最新情報に触れるテックツアーに参加。クルマはもちろん、ボーイングの体感試乗も

2017年10月27日(金)14時3分 AUTOSPORT web

 10月20日(金)、一風変わった試乗会が催された。開催主はスバル。どこがどう変わっているのかというと、なんと、旅客機の試乗も行われたのだ。


『スバルテックツアー スバル研究実験センター美深試験場&航空見学』と称されたこの試乗会、スバルの技術が盛り込まれたボーイング787-9により東京から北海道・旭川に移動し、スバル研究実験センター美深試験場にて新テストコースを見学。そしてその場で新型レガシィとBRZ STI Sportを試乗するという、てんこ盛りの内容となった。


 なぜ10月20日の試乗会の内容が、数日後にアナウンスされることになったのかは後述するが、国内の主要媒体やライターに声がけし、片道についてはJAL(日本航空)のチャーター機を用意するなどその意気込みたるや相当のモノ。


 取材する側もスバルの“自動車以外の技術”、“最新のテストコース事情”、“新型車両の試乗”をいちどに体験することができ、得るものがとても多かった。


 オートスポーツweb取材班が参加したグループは、まず体感フライトからスタート。飛行中に航空部門『スバル航空宇宙カンパニー』の担当者が、その沿革から主力製品、現在の事業内容を解説した。


 1917年創業の『飛行機研究所』をルーツとするスバルは、『富士重工業』時代にもプロペラ機から戦後初のジェット機、ヘリコプターなど数々の航空機を作り上げ、1973年にはアメリカのボーイング社と契約するなど業界では国内3位の企業。各国の企業で分担製造するボーイング787でも、中央翼の製造を請け負っている。


 中央翼とはその名のとおり左右の翼をつなぎ、さらに前後の胴体とも連結させる要の部材。飛行中はつねに荷重を受けており、数百トンにも耐えられる設計がなされている。


 また、その内部は燃料タンクとしても使用されているため液密設計に加え、対雷設計も重要となるが、同社の市販車同様に“安全と品質”についても高い技術力を有しているという。

ボーイング787-9体感試乗に際して、BRZの積み込み作業も披露された。中央翼を見ることができなかったが、飛行時の主翼の変形量からも大荷重がかかっていることは容易に推測できた


 ボーイング787はレーシングカーではおなじみのカーボン(炭素繊維強化プラスチック)を多用した機体ということもあり、軽量化(による航続距離や燃費の向上)がウリのひとつとなっているが、中央翼についても軽さは求められ、カーボンシート、チタン、アルミなどを適材適所に使い分けて組み立てられている。その徹底ぶりはボルト一本の製作時にも及んでいるとのこと。


 なお、今回はJALの協力もあり実現したフライトだったため、同乗したJALのクルーからも機体についての説明がなされた。他社では部品の納期が遅れ、機体の受領がズレ込みそうになることもあるというが、スバルについてはその心配をする必要がなく、また、整備時にどうしても経年劣化を感じる部品があるものの、「中央翼についてはそれを意識することはほとんどない」のだという。


 両社担当者の詳しく分かりやすい説明もあり、体感フライトはあっという間に終了。続いては旭川空港からスバル研究実験センターに移動し、まずは新型レガシィとBRZ STI Sportへの試乗となった。


■D型レガシィは抜群の安定感。STI仕込みのBRZに思わずニンマリ


 レガシィは今回のマイナーチェンジによりD型に。外観も含め更新されたため、俗に言う“ビッグマイナーチェンジ”となった。その変更点は多岐にわたり、デザイン、先進安全性、装備の仕様、性能向上などで20項目以上も改められている。


 比較的高速となる周回路が試乗に使われ、またその周回数も2周に限られたこともあり、その先進性のすべてを感じることはできなかったが、それでもスバルの持ち味である『シンメトリカルAWD』のメリットを活かした安定性を享受することはできた。

レガシィはビッグマイナーチェンジによりいわゆる「後期型」に。白樺に囲まれたテストコースは冬場、厳しい条件のテストに最適となる。当日は野生の熊も出現するなど大自然をそのまま活かした造りとされた


 簡単に言ってしまえば、市街地レベルのスピード域であれば、どんな馬鹿げたハンドル操作、ペダル操作をしても何事も起こらない(起こりもしない)という安心感。車両の素性としてただでさえ安定しているレガシィに、『アイサイト』を軸とした国内最高とうたわれるスバルの最新装備が加わるのだから、安全を買うという意味でも非常にオススメなクルマだ。北米で爆発的に売れている理由もよく分かる。


 一方のBRZは、スバリスト垂涎のSTI仕様。先述したタイムラグを設けての掲載理由は、実はこの車両にある。2013年、15年に続き限定100台で発売されるこのBRZ STI sportは、10月25日にモーターショーの会場で正式発表されることとなっていたため、写真の掲載はもちろん文章での紹介もNGとなっていたのだ。

スバルが10月25日に発表・発売したスバルBRZ『STI Sports』


 詳細はコチラに記載しているため割愛するが、試乗時の印象は当然レガシィとはかなり異なる。こちらも2周のみの走行だったが、途中にパイロンでスラロームが用意されるなどBRZの持ち味を感じることはできた。


 2012年にBRZが発売された際、関係者が「水平対向エンジンはFR(フロントエンジン&リヤドライブ)レイアウトでこそよりメリットがあります。FFや4WDではデフ(ディファレンシャルユニット)がエンジンの下に来ることになり、エンジン高を上げざるを得なかったのです」と語っていたことを思い出した。


 その低重心の恩恵を享受したBRZを、WRC世界ラリー選手権やGT、ニュル24時間で活躍するSTIが仕立て上げたのだから、刺激に満ち溢れたものとなることは間違いない。


“スポーティーカー=ガチガチ”といった一昔前の概念で作られる市販車はさすがにもう見かけないが、『フレキシブルVバー』などの採用によりSTIチューニングはその二段階先を行っているように感じられた。


 ネコ科動物のようなしなやかな躍動感。言葉で表現するのは難しいが、実走させた際のイメージはそのようなものだった。


 もうひとつ強く印象に残ったのがサウンド。STIモデルだけに搭載されるものではないが、『サウンドクリエータ』による吸気音とエキゾーストノートのマッチングが素晴らしく、踏んでいる時はもちろん、減速時のブリッピングでもニヤニヤできる音作りがなされていた。


■ツアーを通じて感じたタクシーライド型ではない自動運転の未来


 そして、最後は『美深試験場』の見学とその詳細説明が行われた。スバルでは1977年から美深町内にて冬季の試験を行なっていたが、その関係もあり95年に当地に試験場を開設。すでに高い能力を有する運転支援システムに、さらに磨きをかけるため試験場内に『高度運転支援技術テストコース』を新設し、今年11月から運用を行うことになった。

『美深試験場』に設けられた市街地路を想定したコース


 スバルの高度運転支援技術は全世界で仕様が統一されているため、各国の交通事情を踏まえたテストが必要となるが、日本ではあまり目にすることがない4車線の道路やコンクリート舗装路、ヨーロッパを中心に普及するラウンドアバウト(環状交差点)なども完備され、より実情に沿った開発が行えることになったとのこと。


 スバルでは三年後、アイサイトにGPSやレーダーなどのデバイスを追加することによって、自動車線変更機能も実現させるという。


 自動運転が叫ばれて久しく、そこに向け邁進する自動車業界。レースやクルマを操ることが大好きな人たちは「今後、どうなっちゃうの?」といった漠然とした不安感を持つしかなかったが、今回のテックツアーでは、タクシーライド型ではない自動運転の未来像をかなり分かりやすく明示してくれていた。


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