ワールドシリーズ、明暗を分けた守備 悲願達成の大谷翔平は史上初の不名誉記録もマーク
2024年11月1日(金)11時55分 スポーツ報知
第120回となった今年のワールドシリーズは、ドジャースが4勝1敗でヤンキースを下して4年ぶり8度目のワールドチャンピオンに輝いた。勝敗の分岐点などを振り返る。
第5戦ヤンキースが5点リードを守れなかったが、ワールドシリーズでの3連敗から2連勝したチームがないというジンクスが今回も当てはまった。1970年のレッズも初回3点を先制しながら逆転負けしたのと同じ轍を踏んだ。
第5戦の5回、ドジャースの反撃を招いたヤンキース3つのミスプレーに代表されるように、守備がシリーズの明暗を分けたと言える。初戦の8回、同点を招いた右翼ソトの悪送球。10回エラーにこそ記録されなかったが、二塁カブレラの守備が、逆転サヨナラ負けにつながった。
一方、ドジャースはエドマンが2失策したが、ともに失点にからまなかった。シリーズの自責点にならなかった失点はヤンキースが6点、ドジャースは1点もなかった。ベッツの再三の好守。第3戦のT・ヘルナンデスの本塁返球だけでなく、内野手のシフトは的確で、ヤンキースの好打を摘み取った。第1戦、スタントンの逆転2ランが飛び出した直後の2死一、二塁で、ウェルズの中前に抜けそうな打球を止めて追加点を防いだエドマンの守備も忘れられない。
打撃ではフリーマンの独壇場。3試合連続アーチは内角のボールを、4本目は一転外寄りのボールをはじき返した。第5戦の5回2死満塁で、1—5からの中前への2点タイムリーもお見事なバッティングだった。シリーズ12打点は1960年ヤンキースのB・リチャードソンに並ぶタイ記録。ちなみにリチャードソンはチームが3勝4敗で敗戦。シリーズ史上ただ1人の敗戦チームからのMVPだった。
フリーマンは右足首ねんざで地区シリーズと優勝決定シリーズは8試合で打率2割1分9厘、長打無しの1打点に終わっていた。今年は優勝決定シリーズとワールドシリーズの間隔が、従来の1日が3日となったのも幸いしたのだろう。第1戦の初回の左翼線三塁打、第4戦の二ゴロでの併殺崩れ、そして第5戦T・ヘルナンデスの中越え二塁打での一塁からの長駆ホームイン。彼の痛みを押しての全力疾走がどれだけチームを勇気づけたか想像に難くない。
最後に、左肩亜脱臼で満足なバッティングが出来なかった大谷翔平。ジャッジが第5戦にシリーズ1号を放ったことで、シーズン50本以上打ったバッターがワールドシリーズ不発に終わったのは史上2人目となった。1961年ヤンキースのM・マントルは54本打っていながら終盤の負傷もあってシリーズ2試合の出場に終わっていたためだ。フル出場した選手では初の屈辱にもなった。
しかし、これで来季以降への一つの目標が出来たと考えればいいのではないか。来季は投打二刀流でワールドシリーズに出場し、本塁打をかっ飛ばす姿を見てみたい。そんな期待を持っていきたい。
蛭間 豊章(ベースボール・アナリスト)