苦しいもてぎ戦。2戦連続で表彰台を逃したGRスープラ陣営、シーズン終盤で急失速の背景《第7戦もてぎGT500決勝あと読み》

2020年11月9日(月)11時50分 AUTOSPORT web

 セーフティカーの妙はあれど、ホンダNSX-GTのトップ5独占という歴史的快挙に終わったスーパーGT第7戦もてぎ。ホンダ系列のサーキットで上位独占はホンダファンには嬉しい結果だが、一方、今シーズンこれまで大本命として猛威を振るっていたGRスープラ勢が沈黙。7位にKeePer TOM’S GRスープラが入るのが最上位で、入賞はわずか2台。ランキング上位でチャンピオン候補のWAKO’S 4CR GRスープラは12位、au TOM’S GRスープラは13位というまさかの結果に終わった。


 残り2戦でウエイトハンデ係数が1kgに半減する今回のもてぎ戦。当然、チャンピオン争いに向けて1ポイントでも獲得したい重要な1戦で、GRスープラ勢はなぜここまで大差でホンダNSXの許す形になったのか。


 当然、レースでは優勝した8号車ARTA NSX-GTと2位の64号車Modulo NSX-GTの2台がセーフティカーの恩恵を受けたことは事実だが、たとえセーフティカーの件がなくとも、残りのNSX3台が3位から5位を占めていることからも、8号車、64号車は上位フィニッシュした可能性が高い。


 これまでレースで強さを発揮し、特にスティント後半、レース後半に着々とポジションアップしていたGRスープラの姿はこの大事なもてぎ戦ではわずかに37号車に見られた程度だったが、それもシーズン前半のような勢いではなかった。


 特に気になるのが、36号車au TOM’S LC500だ。レース前半では37号車に続く8番手を走行していたが、セーフティカー明けのピットイン、そして後半スティントで大きく順位を下げることになってしまった。そもそも、同じようなウエイト(37号車46kg、36号車45kg)でここまで2台の差が如実に出てしまうことも珍しい。


 トムスで36号車、37号車の2台を見る立場にある東條力チーフエンジニアに聞く。


「グリップのバランス的に走り出しから37号車の方がフロントが弱くて、36号車の方が後ろが弱くてという感じになっていました。2台の方向が分かれるのは珍しいですね」とクルマの状況を話す東條エンジニア。


 ストップ&ゴーもてぎでは、リヤのグリップが厳しいクルマは致命傷になりやすい。


「後ろのグリップが弱いとオーバーステアになりやすいし、アンダーステアよりもオーバーステアの方がドライブするのは難しい。どうしてもリヤの限界が低くなってしまうからブレーキで攻めることができなくなって、立ち上がりのトラクションもよくなくなる。アンダーステアでもブレーキは攻めることはできるので、そこで違いますよね。特にこのもてぎはブレーキのスタビリティ、そしてトラクションがほしい。どちらかというとアンダーの方に振っておくのがベターなんでしょうね」と東條エンジニア。


 ただ、37号車が7位で入賞したとはいえ、トムスの2台だけでなく、GRスープラ自体のパフォーマンスが特にレースでは良いとは言えなかった。


「この前の第4戦のもてぎでもそうでしたけど、もてぎでGRスープラが速い感じはしていません。このもてぎは中速、低速コーナーが多くて、そのあたりのダウンフォースが弱いのかなと思います」とGRスープラのウイークポイントを指摘する東條エンジニア。


 同じような感想を持つのは、14号車WAKO’S 4CR GRスープラの阿部和也エンジニアだ。


「GRスープラのクルマがハイダウンフォースが必要なもてぎに合っていない。それが顕著に出てしまったと思います。予選の一発はなんとかできるけどリヤのスタビリティも弱いのでロングランが厳しい。ウエイトを積んでいると余計にキツイです」と阿部エンジニア。


 開幕戦富士でGRスープラがトップ5を独占していた面影も今は薄く感じてしまうが、言い換えればGRスープラはハイダウンフォースのもてぎに極端に合っていないだけで、言葉を返すとローダウンフォースの富士ではまた、ストレートでの無双の強さを活かして巻き返す可能性が大いに考えられる。


 いずれにしても、GT500のランキング争いトップ5は以下のように、かつてない接近戦となっている。


51点 KEIHIN NSX-GT
51点 KeePer TOM’S GRスープラ
49点 MOTUL AUTECH GT-R
49点 RAYBRIG NSX-GT
48点 ARTA NSX-GT


 数字上はさらに4台加わり、計9台にチャンスがあり、そのうち5台がGRスープラでもある。そうなると今度はGRスープラ勢同志によるチャンピオン争いという展開も見えてくるが、果たしてどうなるか。


 前回の鈴鹿、そして今回のもてぎと2戦連続で表彰台ゼロという、シーズン終盤でまさかの失速を迎える形となってしまったGRスープラ。2020年最終戦富士でクラス1規定で最初の称号を手にするのは3車のうち、どのマシンになるのか。

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