ブレーキディスクのYUTAKAが2022年でレース活動から撤退。MotoGPやSBKで長年供給

2022年11月17日(木)16時26分 AUTOSPORT web

 MotoGPでのスズキの撤退が大きくクローズアップされるなか、同じく2022年シーズンを最後に、静かにレースシーンから退くことをブレーキディスクのYUTAKAが決めた。2008年から長年に渡り現場でレーシングサービスを行って来た株式会社ユタカ技研モータースポーツ担当である冨沢直樹氏に話しを伺った。


 市販車のブレークディスクを生産していた株式会社ユタカ技研がレース用の製品を作り始めたのは2003年だった。まずはホンダの社内チームでテストし、その評判がよかったこともあり、2004年から“DISC POWER(ディスクパワー)”というブランドを立ち上げ、本格的にレース部門を立ち上げて活動を始めた。2005年にはホンダワークスに採用され、鈴鹿8耐の上位独占に貢献した。


 評判が評判を呼び2006年にスーパーバイク世界選手権(SBK)のテンケイトホンダに供給し、ジェームス・トースランドがチャンピオンを獲得。


 そしてワークスチームやMotoGPチームでメカニックとして活躍していた冨沢氏が2008年に株式会社ユタカ技研に入社しレーシングサービスを始める。

株式会社ユタカ技研モータースポーツ担当 冨沢直樹氏


「2008年に入社させていただきMotoGPに進出。僕の人脈ということもありましたが、グレシーニ・レーシングで使ってもらうようになりMotoGPに進出。中野真矢が所属していたときでした。その後、レプソル・ホンダにも供給し、ケーシー・ストーナーとダニ・ペドロサが使ってくれていました。LCRも使ってくれましたね。ライダーは、ステファン・ブラドルでしたね。ストーナーがレプソル・ホンダでの初テストとなったバレンシアで走った後に“リヤブレーキのコントロール性が最高だ”と言ってくれたことが忘れられないですね」


 MotoGPはカーボンディスクが全盛となってからは、フロントディスクはウエットのときのみとなっていたが、その後、ウエットでもカーボンを使うようになるとリヤディスクのみの供給となっていく。


 Moto2やMoto3でもユーザーが増え、MotoGPでは、スズキも使用。2020年にジョアン・ミルがチャンピオンを獲得したときもリヤディスクは“DISC POWER”だった。

2020年MotoGP第14戦バレンシアGP ジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)


 2022年は、MotoGPではポル・エスパルガロ、中上貴晶、ジョアン・ミル、アレックス・リンスがリヤディスクを使用。Moto2では、IDEMITSU Honda Team Asiaの小椋藍とソムキャット・チャントラが使い、ブレーキに厳しいオーストリアともてぎで優勝を果たしている。Moto3では、Honda Team AsiaとMTAレーシングが使っていた。


 SBKではAstemo経由でHRC、BMW、Pedercini Racingに“DISC POWER”を出していた。全日本ロードレース選手権やアジアロードレース選手権(ARRC)でも、かなりのシェアがあっただけに残念な撤退となる。


 その撤退が決まったのは、鈴鹿8耐のレースウイークだった。


「残念ながら今年の8月でレースからの撤退が決まり、2022年シーズンをもってレーシングサービスを終了することになりました。株式会社ユタカ技研として19年間、僕個人としては15年間もレース業界にお世話になってきました。19年間で、ここまでシェアを広げられたことは、誇りでもあるし、ユタカ技研の技術、品質、性能を認めてくれた証だと思います」


「悔いがないと言えばウソになるのですが、やり切ったという思いもあります。世界中で我々のブレーキディスク“DISC POWER”を使ってくださり、レースを通していい時代を過ごすことができたことを関わってくださった皆さんに感謝いたします」


 メカニック時代を含めると31年もレースの現場で活躍してきた冨沢氏は、量産車の開発部門に異動する。いつかレースに復活するようなことがあれば、またやってみたい思いもあるが、一度現場を離れると難しいとも語っていた。ユーザーのためには、2024年まで販売は行い、小原レーシングかハルク・プロで購入が可能だ。ひとつの時代を作った日本の部品メーカーがレースから去っていく。

YUTAKA ブレーキディスク

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