【F1チーム代表の現場事情:メルセデス】無勝利のシーズンにウォルフが見せた、敗北への強い拒否感

2023年12月12日(火)11時45分 AUTOSPORT web

 大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、メルセデスF1チーム代表トト・ウォルフに焦点を当てた。


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 人生は、勝っているときは楽だが、負けているときは非常に困難になる。トト・ウォルフは、今、それを実感しているはずだ。メルセデスは2014年から2020年までF1を支配したが、その後、レッドブルが近づき、追い越していった。


 今はレッドブルが優位を誇り、最高のマシンで大きな成功を収めている。メルセデスは挑戦者の立場となり、トップに戻ることを目指して戦わなければならなくなった。


 それは簡単な仕事ではない。さらに、メルセデスにとって困難だったのは、勝つのが当然だった時代を過ごしてきたチームが、突然、シーズンのなかで一度も勝てなくなってしまい、その落差に対応しなければならなかったことだ。


 2022年はメルセデスにとって厳しい年であり、コンストラクターズ選手権で3位に沈んだ。一方で、ジョージ・ラッセルがブラジルの週末に、スプリントと日曜決勝の両方を制したことで、彼らは2023年に向けて大きな希望を持った。


 しかしその希望は、2023年シーズンが始まるとともに、消え失せた。マシンのコンセプトを誤ったため、シーズン中に大幅な変更を加える必要があると、チームは早々に認めなければならなかった。マシンを大きく変更した後、比較的安定してレッドブルの後ろのポジションを争うようになったが、優勝争いに加わることはできなかった。そしてメルセデスは、2023年シーズンをついに一勝も挙げることができないまま終えたのだ。

2023年F1第23戦アブダビGP ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセル(メルセデス)


 無勝利のシーズンになることが確実になり始めるに従い、ウォルフの様子に変化が見られた。昨年は大きな希望をもたらしたブラジルGPで、今年は悲惨な週末を送り、フェラーリにランキング2位を奪われる可能性が高まってきた。ラスベガスでのウォルフは、プレッシャーが増しているようで、通常よりもはるかに短気になっていた。チーム代表たちの記者会見で、彼とあまり良好な関係を結んでいないジャーナリストが、割り込むようにして発言した時に、ウォルフは冷静さを失った。この時に使った言葉に関して、ウォルフは後に、FIAから警告を受けた。

2023年F1第22戦ラスベガスGP トト・ウォルフ(メルセデスF1チーム代表)


 こういった様子から、ウォルフは、物事が思いどおりに進まず、自分が勝者の立場にない状況を、どれだけ受け入れがたく思っているかが分かる。


 しかしウォルフが非常に優れたリーダーであることは間違いない。最終戦アブダビで、メルセデスはなんとかフェラーリとのランキング2位争いを制すことができた。安堵したウォルフが、シーズン最後に語った言葉は、彼の優れたリーダーシップを示すものだった。彼は、悲惨だった一年を忘れ去るのではなく、2024年以降に役立てると誓ったのだ。

2023年F1第23戦アブダビGP トト・ウォルフ(メルセデスF1チーム代表)とルイス・ハミルトン(メルセデス)


「昨年私が『このマシンはゴミ箱行きだ』と言ったのは確かだが、実際には、良くないマシンは、自分たちのやるべきことを示してくれるものでもある」とウォルフは言った。


「昨年型には、勇敢で派手なアプローチをとった。これが良いものだと信じていたが、実際には全く速さがなかった」


「自分たち自身が最高の仕事をしなければ、レッドブルに勝つことはできない。皆さんに、そしてファンの方々に対しても、保証しよう。我々はそれを目標に戦えるよう、最大限の努力をするつもりだ」


 終盤数戦のウォルフを見ていると、彼が負けることをどれだけ嫌っているかが分かる。今年の大きな不満を2024年の成功につなげるために、ウォルフが全力を傾けていくのは間違いないだろう。

メルセデス代表トト・ウォルフ

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