『バスタブ型』で限界を迎えたフェラーリ。コンセプトを変え『ハイブリッド型』を導入/2023年F1開発まとめ(5)

2023年12月29日(金)18時0分 AUTOSPORT web

 2023年のF1は、前年に導入された新しい技術規則によりグラウンドエフェクトカーが復活して2年目のシーズンとなった。今年も各チームが特色のあるマシンを投入し、シーズンが進むにつれて徐々に進化を遂げていった。そんな2023年型マシンのアップデートを振り返ってく今回の企画、第5回はコンストラクターズ選手権3位のスクーデリア・フェラーリだ。


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▼スクーデリア・フェラーリ(SF-23)


フェラーリSF-23

 レッドブルとも、そしてメルセデスとも異なるフィロソフィでグラウンドエフェクトカーを設計してきた2022年のフェラーリ。昨年、終盤に失速し、タイトルを逃したフェラーリが下した2023年のマシン開発は、2022年の進化型だった。その最大の特徴はサイドポンツーンの上面がへこんだ『バスタブ型』と呼ばれるアイディアだ。

『バスタブ型』のサイドポンツーンを採用したフェラーリSF-23


 バスタブ型の空力手法は、サイドポンツーンの側面を空気の通り道として使用することだ。ゼロポッドのメルセデスとは対極にある。レッドブルはサイドポンツーンの下端をえぐったアンダーカットと上面を後方に向かって下げていくダウンウォッシュを採用しているので、ゼロポッドほどではないが、こちらもサイドポンツーンはコンパクトにデザインされているが、サイドポンツーンの側面を使用するフェラーリはレッドブルよりもボリュームを保っているのがわかる。

『バスタブ型』サイドポンツーン
『バスタブ型』と『アンダーカット&ダウンウォッシュ型』のハイブリッドのサイドポンツーンを導入(写真は2023年F1第12戦ハンガリーGP時のもの)


 しかし、開幕してすぐにフェラーリは、バスタブ型に限界を感じて方向転換を図り、第8戦スペインGPにバスタブ型に変わるサイドポンツーンを投入してきた。それは、バスタブ型とアンダーカット&ダウンウォッシュ版のハイブリッド版だ。サイドポンツーン上面のくぼみはほとんどなくなり、サイドポンツーン上面からも後方へ空気を流そうとしているのがわかる。スペインGP前までサイドポンツーン上面のくぼみにあったルーバーは、ここから排出される空気が空力に悪影響を与えるため、エンジンカウルの側面に移動している。

SF-23の旧型フロア
サイドポンツーンに合わせてフロアもアップデート(写真1)


 バスタブ型からアンダーカット&ダウンウォッシュ型へのコンセプト変更に併せて、スペインGPからはフロアにも手を入れてきた。まずフロア中央外端にトンネルの出口が設けられた(写真1の黄矢印)。これはその前方にあるフロア下面のトンネルの形状にも手が加えられたことを意味する。また、その後方部分は、これまでは1枚で成形されたのに対して、つなぎ目が設けられ、剛性を保つために4つのコネクターが増設された(写真1の赤矢印)。フロア下に外側から汚れた空気が入らないよう遮断し、フロア下面を流れる空気の速度を保ったままディフューザーから排出することが目的だと考えられる。


 フェラーリは日本GPでもフロアをアップデートし、コンストラクターズ選手権2位の座を狙ったが、メルセデスを逆転することはかなわなかった。それでも、2023年シーズンでレッドブル以外に唯一優勝を果たすなど、随所に光る走りを披露したフェラーリ。空力コンセプトを変更しながらも、トップチームの一角を守った経験は、2023年に生かされることだろう。

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