日本人死者50万人の試算も出た「都市封鎖」が避けられない絶対的理由とは!?

2020年4月6日(月)16時0分 tocana


 安倍晋三首相は3月28日の記者会見で、新型コロナウイルスについて「欧米の例から試算すると2週間で感染者が30倍に跳ね上がる。そうすると我々の戦略が一気に崩れる」とした。また、


 4月3日の朝の時点で国内の感染者数は累計で2384人だから、「30倍」なら7万1520人になる。感染はネズミ算に倍増するため、放置すれば以降は万単位で拡大する。アメリカなどの数字から算出した場合、数値上では感染者20万人、死者2万人に達してもまったく不思議ではないのである。実際、世界の感染者数はわずか2日で10万人増加するなど爆発的なペースを記録しており、日本の危機は足元まで迫っている。


 五輪延期を決めるまで、日本政府は経済への悪影響を懸念して緩い態度をとってきたが、現在でも居酒屋やイベントの自粛を求め、マスク2枚を配る程度の対策にとどまっているため、外出禁止の強硬措置がなければ取り返しのつかない事態も想定できる。


 楽観論者からは「暖かくなれば自然と消滅する」とか「多数の人々が感染すれば免疫力が生まれる」などという声もあったが、温暖な東南アジアなどでも感染は爆発しており、免疫力を待たずして死者が増大しているのが現実だ。


 ウイルスの拡大で、万単位の死者を出さないための方法は3つしかない。(1)ワクチン、(2)抗ウイルス剤、(3)徹底隔離だ。ただし免疫を作って無効化する(1)は、かなり時間を要する。発症しない程度に弱毒化させる「生ワクチン」は発症のリスクが残り、免疫が機能しにくい妊婦などには使用できないため「不活化ワクチン」を用いたいが、こちらは免疫の持続期間が短く効果が限定的。持続期間が短いと感染から回復した人が再感染するリスクもある。観戦が爆発的に広がるケースには不向きなのである。いずれにしても臨床試験で有効性と安全性を確認するには数年かかる。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)のときもワクチン開発できたのは、感染が終息した後だった。


 そうなると即効性があるのが(2)で、健常者にしか意味のないワクチンと違い、罹患者に対しても効果が期待できる。ただ、ウイルスは細菌や寄生虫とは違う非生物であることが研究を難しくする。もし新薬を開発できても、やはり副作用などへの懸念を臨床試験で払しょくしなければならず、試験協力者の確保も大変だ。唯一、イチから作成せず、既存のウイルス薬と類似構造を見つける手法に望みがあるが、これも年単位で時間がかかり、その間に感染者が倍々になっていくと、薬品の製造や流通が追いつかないということもある。


 結局、いま我々がやれるのは(3)で、だからこそ多くの国が様々な施策を行なっている。発生地の中国でも人口1千万人を超える武漢を完全封鎖したおかげで、現在は人々が往来できるまでに回復している。



 ウイルスに関しては、12年のMERS(中東呼吸器症候群)の経験などから、感染が無作為に起こるのではなく、一定の小人数が罹患し、その中の中心人物が次のクラスター(集団感染)を作っていくパターンが指摘されている。それが特定できれば抑え込みは可能だが、武漢のように都市自体がクラスター状態になると都市封鎖は不可欠だ。


 これと似た状況が最も発生しやすい都市のひとつが、他ならぬ東京である。人の出入りが多い米ニューヨーク州は爆発的感染の中心地になったが、同じく人口密度の多い東京は、鉄道とバスの交通網がニューヨーク以上に過密で広域、通勤電車に感染者が乗っただけで追跡は困難になるから、一度拡大すればたちまち都市封鎖が必要なレベルに陥る。


 中国での死者数は3300人で、その公表数は各国から疑問視されているが、独裁国家といえる中国だからこそ、強権を発動して徹底封鎖できた事実はある。他国での外出規制では通達を破って出歩く人々が絶えなかったが、中国では下手すればその場で射殺される勢いで人民をコントロールした。


 しかし、東京ではそうはいかない。都知事が夜間の出歩き自粛を求めても、繁華街では相変わらず居酒屋に人が集まり、桜の咲く公園では花見をしている人々もいる。制御できない感染者がゾンビのように人知れず出歩くと制圧するまでの時間が伸び、なお規模が大きくなる。


 その間に増えていく重症者のための医療体制も、すでに危機が叫ばれている。東京は武漢よりはるかに優れた医療施設を持っているが、隣接する神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、山梨あたりから患者が流入しやすく、高齢者の多い環境が医療崩壊を起こしやすいのだ。


 必死に中国をかばっていたWHOでさえ「2週間で100万人の患者が発生する」と悲観的予測をしているのに、未だに都市封鎖に踏みきれない日本には欧米からの批判も増えており、「3カ月後には世界最大の感染国になるのでは」とか「医療費を削るために意図的に死者を出すのか」なんて声もある。


 厚生労働省などから調査・研究を請け負っている疫学調査機関の関係者によると、「安倍首相の言う通り“2週間で30倍”が起こった場合は、最終的に死者50万人の推定も成り立つ」という。これは米シンクタンクが出した「最悪57万人」の数字とほぼ合致するのである。

tocana

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