日本人の死因第6位「誤嚥性肺炎」が改善!?70代後半女性に大谷義夫医師が勧めたケア&トレーニングとは?<のど年齢>を判定する簡単テストも紹介
2025年2月5日(水)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)」によると、死因順位の第5位は肺炎、第6位は誤嚥性肺炎で、両者を合わせると全体の8.6%を占めるそうです。そのようななか、医学博士で呼吸器専門医の大谷義夫先生は「大きな傾向を見れば、肺炎で亡くなる高齢者は増えていますし、年齢が高くなるほど亡くなる人の数も増加します」と指摘しています。そこで今回は、大谷先生が肺炎・誤嚥性肺炎を防ぐためにできることをまとめた著書『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』より一部を抜粋してご紹介します。
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あなたののどは老けている? 飲み込み力テストをやってみよう
飲み込む力(飲み込み力)が低下するほど、誤嚥しやすくなります。では今のあなたの飲み込み力はどのくらいか、簡単なテストを行ってのど年齢を判定してみましょう。下のやり方にしたがって、やってみてください。
のど仏に指を当てて、30秒間で唾液の飲み込み(空嚥下<からえんげ>)が何回できるのかを確認します。
10回以上、空嚥下できる人は若い人並みの飲み込み力を持っています。40〜50代で10回空嚥下できる人もたくさんいるでしょう。
しかし、一般的に、飲み込み力は年齢とともに低下しがちです。空嚥下の回数が5回以下になると、誤嚥性肺炎のリスクが生じます。
飲み込む力は年齢とともに低下。5回以下になったら要注意!
飲み込み力テストは、医療機関などで嚥下機能が低下している人をふるい分ける方法で、正式な名称は「機能的嚥下障害スクリーニングテスト(反復唾液嚥下テスト)」といいます。30秒間の空嚥下で30名の健常若年者平均7.4回、30名の健常高齢者平均5.9回と報告されていました。
<『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』より>
私のクリニックでも行っており、まとめたものが上のグラフです。調査した患者さんの総数は400人以上、各年代50人以上で、信頼性の高いデータであると自負しています。
『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』(著:大谷義夫/主婦の友社)
グラフに示したように、年代別の空嚥下の平均回数は、年齢が上がるとともに少なくなっています。飲み込み力は高齢になるほど低下していく傾向が、はっきりとわかりますね。
下の表で、のど年齢を示しましたが、空嚥下の回数が5回以下、つまりのど年齢が70代以上の方々は、実際に誤嚥性肺炎を発症していました。
<『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』より>
せきがなかなか治まらないのは、誤嚥性肺炎が原因かもしれない?
誤嚥性肺炎を起こしているのに、本人が気づいていないことがあります。ある患者さんのケースを紹介しましょう。
70代後半の女性は、微熱が出てせきが長引くことが頻繁にありましたが、単に自分はかぜをひきやすい体質だと考えていたようです。
同じ症状を何度も繰り返すため、女性は私のクリニックを受診。エックス線検査とCT(コンピューター断層撮影)で右肺に肺炎があることがわかりました。
治療して肺炎はよくなったものの、女性はその後も肺炎を繰り返していました。しかし、原因がわかりません。
肺炎が起こらなくなったケア&トレーニング
そこで女性にいろいろたずねてみると、60代から水を飲むとむせることがあったといいます。ただ食事でむせることはありません。
また夜間のせきで目覚めることがあるとのことでした。これは夜間睡眠中の唾液の誤嚥(不顕性誤嚥)による肺炎を疑う経過です。夜間にせきをするのは、誤嚥した唾液を吐き出そうとしていたのです。
そこで、女性には口腔ケアと、毎食前30秒の唾液を飲み込む練習をすすめました。口腔内細菌を多く含んだ唾液の誤嚥が問題ですから、口腔ケアで口の中をきれいにして、飲み込み力を高めるため、のどのトレーニングを行ったところ、肺炎は起こらなくなりました。
長引くせきにはさまざまな病気が疑われますが、誤嚥性肺炎はその1つです。「せきが長引くことはしょっちゅうあるから」といって、放置しないで、医療機関を受診してほしいと思います。
<『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』より>
※本稿は、『「よくむせる」「せき込む」人のお助けBOOK』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
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