医療費控除の還付金は、いくら?計算方法は?

2024年2月8日(木)8時10分 All About

医療費控除の申請方法の流れと、還付金の計算方法をお教えします。マスクやPCR検査の費用についても医療費控除の対象となるのかを解説します。

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医療費控除をすればお金が戻る。その計算方法は?

「年間の医療費が10万円を超えたら、確定申告をするとお金が戻ってくるらしい」こんな話を聞いたことはありませんか?
よくあるのが「かかった医療費が全額戻ってくる」というカン違い。医療費控除の還付金は、医療費からいろいろなものが差し引かれた上で、その人の所得によって決まったお金が戻ってきます。医療費控除の還付金の計算方法について解説します。

そもそも医療費控除とは?

医療費控除とは、1月1日から12月31日まで本人あるいは生計を一(いつ)にする家族のために医療費を支払った場合、一定金額の所得控除を受けられることをいいます(最高200万円まで)。
単身赴任のお父さんも、下宿をしている大学生の子どもも、生活費を仕送りしている両親もみんなの医療費を合算できると覚えておきましょう。

医療費控除の対象になる医療費って何?

医療費の中にも、医療費控除の対象になるものとならないものがあります。
■医療費控除の対象になるもの
・病院、歯科の治療費、薬代
・薬局で買った市販の風邪薬
・入院の部屋代、食事の費用
・妊娠中の定期健診、検査費用
・出産の入院費
・病院までの電車やバスの交通費
・子どもの歯科矯正
・レーシック
・人間ドックなどの健康診断費用(病気が発見された場合)
・在宅で介護保険をつかった時の介護費用
・介護施設に払ったサービス料
※特別養護老人ホーム、地域密着型介護老人福祉施設は利用したサービス料の2分の1が対象。
※介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設、介護医療院は、施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)に係る自己負担額として支払った金額。
・医師が認めたおむつ代
・PCR検査代(陽性だったもの)
■医療費控除の対象にならないもの
・人間ドックなどの健康診断費用(病気が発見されない場合)
・自分の都合で利用する差額ベッド代
・健康増進のビタミン剤や漢方薬
・病院までマイカーで行った時のガソリン代や駐車料金
・里帰り出産のために乗った飛行機代
・美容整形
医療費控除の対象になるもの(○)とならないもの(×)の違いは、予防のための医療費は×、治療のための医療費は○と覚えておきましょう。例えば、インフルエンザの予防接種は医療行為ですが予防目的なので×。薬局で買った風邪薬は○となります。
医療費控除は、1年間の家族全員の医療費が対象になるので、離れて暮らす家族が病院に行った時はもちろん、薬局で薬を買ったり、歯医者さんに行った時も必ずレシートを取っておくようにしましょう。また交通費はノートやスマホに記録を残しておくとよいでしょう。
確定申告書を作成する上で、現在では医療費のレシートは、税務署への提出が不要となっており、5年間は領収書とレシートは自宅で保管する決まりとなっています。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは、ふくれあがる国の医療費を削減するための、医療費控除の特例です。健康に気をつかい、ちょっとした病気なら自分で手当てしましょう!という2026(令和8)年12月購入分までの特例です。
会社や自治体の健康診断やインフルエンザの予防接種などを受けている人が薬局で自分や家族のためにスイッチOTC医薬品を買い、年間1万2000円を超えると、超えた部分の8万8000円までが医療費控除の対象になります。
スイッチOTC医薬品とは、お医者さんから処方されていたお薬が、薬局で買えるようになったもの。風邪薬や、湿布薬、水虫の薬などが対象商品になっています。
こちらの申告は、お薬の領収書や、健康診断や予防接種を受けたことが確認できる書類が必要です。普通の医療費控除と、セルフメディケーション税制は、重複してはつかえません。どちらかを選ぶことになります。

医療費控除額の計算方法は?

医療費控除額の計算方法は、下記の通りです。
医療費控除額=(医療費控除の対象になる医療費−保険金等で補てんされた金額)−10万円(総所得金額200万円未満の人は総所得金額等×5%)
見てわかる通り、家族全員の医療費が、そのまま医療費控除額になるわけではありません。
(1)まず「保険金等で補てんされた金額」とあるように、医療費から差し引かなくてはいけないお金があります。具体的には、以下のようなものがあります。
・出産育児一時金(出産手当金は引かなくてもいいです)
・高額療養費
・医療費の補てんを目的としてもらう損害賠償金
保険でも、「がん診断給付金」や「就業不能保険」「休業補償保険」などの給付金は医療費の補てんを目的としていないので、引かなくてもいいです。
(2)そして、最後に10万円もしくは総所得の5%のいずれか低いほうを引きます。
「なぜ10万円もしくは総所得の5%のいずれか低いほうを引かなくてはいけないの?」という質問をよくいただきますが、「医療費がたくさんかかった人は、大変でしょうから税金を少なくします」というのがこの医療費控除、そのたくさんというところを10万円と決めているわけです。
ところが、所得が1000万円の人の10万円と、所得が100万円の人の10万円とでは、重みが違います。そこで、所得の5%とすれば、100万円の人は5万円を超えれば所得控除が受けられて、税金を少なくすることができるのです。

実際にどれくらい税金が戻るのか計算してみましょう

では、実際にどれくらい税金が戻るのか計算してみましょう。

出産と夫の入院で70万円かかった山田家

山田さんのお宅では、専業主婦の妻の出産で60万円、夫が病気になり医療費や交通費として10万円の医療費がかかりました。
・妻:出産費用60万円−出産育児一時金50万円=10万円
・夫:医療費など10万円−(高額療養費制度8万100円+医療保険2万円)=0円
10万円−10万円=0円

風邪と歯医者で治療費20万円かかった木村家

木村さんのお宅では、医療費控除の対象になるものが20万円ありました。保険金などの補てんはないのでそこから、10万円を引くと、医療費控除額は10万円になります。
医療費など20万円−10万円=10万円
山田さんのほうが医療費はたくさんかかっていますが、出産育児一時金や高額療養費制度、医療保険などが補てんされているので結局、控除はゼロ。還付金はありません。では医療費控除額が10万円になった木村さんは一体いくらお金が戻ってくるのでしょうか?
木村さんの課税される所得金額に応じて戻ってくる額が変わります。ざっくり計算すると、以下のような違いとなります。
・木村さんが課税される所得金額が300万円なら……10万円×10%=1万円
・木村さんが課税される所得金額が1800万円なら……10万円×40%=4万円
この10%とか40%というのは、所得税の税率です。同じ控除額でも税金をたくさん払う人はそれだけ還付金も多く、少ない人は還付金も少ないということになります。対象になるものとならないものや計算方法、申告に必要な書類など、医療費控除について少しでもわからないことがあれば、税務署に問い合わせてみましょう。

医療費控除を申告すると住民税も安くなる

もう1つ、医療費控除は所得税だけでなく、住民税にも適用されます。ただし所得税の時のように還付金が振り込まれるのではなく、住民税が安くなるかたちで「還付」されます。
前述の医療費控除が10万円だった木村さんの住民税はいくら安くなるのでしょうか。住民税の税率は、所得に関係なく10%です。そのため木村さんが課税所得300万円でも1800万円でも、「医療費控除額10万円×10%=1万円」、つまり住民税が1万円安くなります。
住民税に対する医療費控除の手続きは、確定申告をするだけで特にほかに特別なことは必要ありません。住宅ローン控除などで所得税が全額還付かほぼゼロになっている人も、住民税が安くなることもありますので、確定申告しておくといいかもしれませんね。
※記事中の税額は概算、復興特別所得税は考慮せず
文:山口 京子(ファイナンシャルプランナー、アナウンサー)
大学在学中からテレビに出演。卒業後はフリーアナウンサーに。新婚当初は世帯年収200万円で庭付き一戸建てを購入、2年で完済。お金好きが高じてFPの資格を取得し、家計管理や保険、運用までアドバイスする。
(文:山口 京子(ファイナンシャルプランナー、アナウンサー))

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