お客様サポートの女性が忘れられない、江戸っ子老人からのクレーム「そこまでモウロクしてねえよ」

2024年2月7日(水)20時37分 キャリコネニュース

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誰もがインターネットを使うようになってしばらく経つが、それでもプロバイダーのサポートセンターに届くクレームは、ネット初期から変わらない「十年一日」のものが多いという。とあるプロバイダーで、長年にわたって顧客対応をしてきた40代女性は「どれだけネットが普及しても、クレームは変わらないですね」とこぼす。


たとえば「ネットにつながらない!」という話も、料金未納でサービスが止まっただけだったり、機器の電源がオフになっていたり、ケーブルが抜けていたりといった、シンプルすぎる原因のケースが今でも少なくないらしい。


そんなわけで大多数のクレームは、似たりよったりのありふれた内容なのだが、この女性が鮮明に覚えている1本のクレーム電話があるという。(取材・文:広中 務)


「そこまでモウロクしてねえよ」



女性が、その電話を受けたのは15年ほど前のことだった。


「知り合いから頼まれてパソコンを購入し、色々と書類も書いたが、どうにもネットにつながらないので電話をしたというのです。怒ってはいないんですが、一度聞いたら忘れられないような、べらんめえ口調の老人でした」


顧客情報を確認すると、住所は東京都の下町であった。まずはマニュアル通りに電源やケーブルの確認をお願いしたが、ここで最初の波乱が。


「別に怒ってはいないようなんですけど、“バカいっちゃいけねえよ。そこまでモウロクしてねえよ”というんです。なんか歌舞伎役者みたいに迫力のある感じで。普段、キレ気味に電話してくるユーザーには慣れているつもりだったんですが、これは想定外すぎてビビりました」


しかし、女性はひるまなかった。まずは一つずつ丁寧に確認していったほうがよいということを説明すると「そうか、すまねえなあ」と、納得してくれたのである。


「ネットに接続できなかった原因は、接続設定のユーザー名とパスワードが保存されていなかったという単純なものでした。パソコンをほとんど触ったことない方だったので、アットマークの案内に苦労しましたが20分ほどで無事に接続することができました」


またべらんめえ口調ではあったが、つながったお礼をいわれてホッとしたという女性。しかし、サポートを終了しようとしたところ「ところで……」と、切り出された。


「そこでいわれたのは、“テレビや冷蔵庫は、電器屋が持って来て使えるようにしてくれるのに、なんでインターネットはそうじゃないんだい?”というものでした」


女性は「まったく想定していなかった質問で、とっさに返答できなかった」という。


「どうも、この方の中ではパソコンもインターネットも、同じ会社がやってるみたいなイメージだったみたいで。そこから、説明は無理だと思って、“そうですよね。インターネットはまだ新しい電気製品だからサービスが十分じゃないんです”といって納得してもらいました」


インターネットの利用率(個人)は、1997年に9.2%しかなかったのが、2007年には73.3%と、急速に伸びた。この江戸っ子老人の誤解は、まさに当時ならではようにも思える。しかし、今でもネット関連サービスについての問い合わせを、何でもかんでもプロバイダーに聞いてくる人は少なくないという。


「テレワークが増えてから、チャットツールのトラブルで電話してくる人も目立つようになりました。なんでプロバイダがslackの使い方を知ってると思っているんでしょう」


あなた詳しいんでしょ、ついでに教えてよ、ということだろうか。でもプロバイダーのサポートセンターは、子ども科学電話相談室じゃないんだから、どんな質問にでも答えてくれる(答えられる)わけではない。


まあ、これだけ電子レンジが普及しても、金属を入れて燃やしてしまう人があとを絶たない。それを考えると、プロバイダーのサポートがこの手の電話から解放される日なんて、未来永劫こないのかもしれない。

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