知られざる地方みやげ発見の旅! 熊本の幻の柑橘「デコマリン」を買いに行く!
2025年2月8日(土)12時0分 食楽web
食楽web
●全国各地の知られざる名産品をイラストレーター・ワタナベマキコさんがイラストと共に紹介する企画。今回は熊本県の一部でしか買えない幻のフルーツ・デコマリンです。
料理家の友人に誘われて、美食の宝庫・九州の熊本県のウマいものを探しに向かった筆者。前回は地球最強の海苔ふりかけ「パラちゃん」を紹介しましたが、今回は友人が「今まで食べた柑橘の概念が覆される」と激推しする「デコマリン」という柑橘を買いに行くことに。
向かったのは、デコポン発祥の町としても知られる、不知火町(しらぬいまち)。熊本市内から国道266号線を南下し、宇土半島の海岸線へ。市街地を抜けると目の前にいきなり広大な八代海が現れました。
八代海は九州本土と天草諸島に囲まれた内海。どこまでも広がる穏やかなのどかな八代海は、別名・不知火海とも呼ばれ、海の奥に多数の火(不知火)が見える蜃気楼現象でも知られています。その不知火の名前を冠した道の駅の物産館で、早速みかんチェックです!
デコポン発祥の地、不知火町
デコポン発祥の地・不知火町のデコポンをかたどったモニュメント
というわけで、「道の駅 不知火」に到着。まず目に入ったのが「デコポン発祥の地 不知火町」と書かれた石でできたデコポンのモニュメント。碑文によると、デコポンは清見とポンカンを交配し育成された柑橘で、糖度が高くて香りも良く、しかも剥きやすくて食べやすい、極めて優良な品種であることから、品種名を「不知火」、商品名を「デコポン」と命名されたんだそう。
そして不知火町農協の協力で生産量を増やした結果、いまや中晩柑類の救世主として確固たる地位をなし、名実共に日本一の座を維持しているのは周知のとおりです。モニュメントを眺めているだけでも、地元の人の不知火とデコポンへの熱い思いが感じられますね。
物産館『アグリパーク豊野不知火』にはさまざまな種類のみかんがズラリと並んでいました。デコポンはもちろん、「みはや」、「はるか」、「スイートスプリング」、「パール柑」……。なかでも立派だったのが、熊本を代表するでっかい柑橘「晩白柚(ばんぺいゆ)」。こんなにまぁるくて大きくてツヤツヤした美しい柑橘を初めて見ました。
ちなみに、筆者が住んでいた中国にも「柚子(ヨウズ)」という晩白柚とそっくりな柑橘がありましたが、こんなにきれいで立派なものはなかった気がします。縁起が良さそうだし、中国の友達に贈ったら喜ばれるだろうな、と思った次第です。日本でも柑橘の「きつ」は吉を連想させることから、大きな晩白柚はやはり縁起物。縁起担ぎにひとつ購入しました。くまもんの箱に入っているのも嬉しい。
看板にひかれて直売所へ
引き続き海沿いの国道を天草方面へ向かうと、たくさんのミカン畑が見えてきます。ここまでたわわに実がつくのか、と感心するほどたくさんの実をつけた果樹たちが道路にはみ出さんばかりに生えています。
道路から見える遠くの景色にも緑の山にオレンジのドットがぽつぽつ点在する風景。左手には海、右手にはみかん畑。八代海の潮風と反射する太陽の光をたっぷり浴びたみかんたち。「本当に、ここはみかんの街なんだなぁ」と感じます。しばらく行くと、「みかんの駅」と書かれたオレンジ色の可愛い看板が現れました。ちょっと寄ってみることにしました。
ここには、『高橋果樹園』という柑橘農家があり、車を停めると、ワンコから熱烈な歓迎を受けました。お店の外には“わけあり”と書かれた袋いっぱいのみかんが並んでいますそのお値段のお安いこと。どれもキレイで、パッと見には何が“わけあり”なのかさっぱりわかりません。全部おいしそう!
お店の中には糖度測定を行った不知火が、糖度別に並べられています。10度未満は100円、15度になると1500円。糖度別にみかんを売っているのを見たのは初めて。糖度13度以上は「デコ皇」というブランド名がついています。
今回は14度のものをいただいたのですが本当に甘い! しかし甘みの中にもちゃんと酸味が感じられてそのバランスが絶妙。こんなにおいしいみかんを食べたのは初めて。確かに“デコの皇”です。
お店の方のみかんへのこだわりが強すぎて、その基準に満たない柑橘たちは“わけあり”に分別されているんでしょう。この“わけあり”のパール柑があまりにお買い得なプライスだったので購入しましたが、爽やかでさっぱりしてて本当においしかった!
お店にはひっきりなしにお客さんが訪れていました。ブーンと車でやって来て大量のみかんをドカンと買い、颯爽と去っていく地元の人たちの買い方がカッコいい。
旅の目的地「宇土マリーナ」で念願のデコマリンに出会う
宇土マリーナで販売されている「デコマリン」
再び海沿いの道路を走ると、今回の“みかん旅”の最終目的地『道の駅 宇土マリーナ おこしき館』が見えてきました。そうです、ここが友人イチオシのみかん、「デコマリン」が買える場所なのです。
デコマリンは、不知火の宇土マリーナのブランドで、ここでしかこの名を名乗ることはできません。まず名前がカワイイですよね!
物産館に売っているデコマリンは「まさよさんの」とか「田中さんの」などそれぞれの果樹園の推しPOPがあって、思わず食べ比べをしてみたくなります。大きくてボコボコしたビジュアルはやや不格好。
しかし、おへその部分から皮をむいた瞬間……柑橘の爽やかな香りがふわーっと広がります。この香りが本当に素晴らしくて、香水にしたい! と思ったほど。しばらくこのデコマリンの皮を嗅いでいたくなります。
そして気になる味は……めちゃくちゃ「あまーい!」。酸味はほとんどなくて、とにかく甘くてジューシー。スタッフさんによれば、丁寧に貯蔵されたデコマリンは驚くほど甘味増し、濃厚になるそう。かぶりつくとザクッとした粒感もしっかりあって、これがまたイイ! たまらないおいしさ。料理家の友人がハマったのも納得です。
一度食べたら忘れられない味わいでした。いつでもおいしい不知火が食べられる熊本の人がうらやましい!
そんなわけで、知られざるウマいものを見付ける熊本旅はまだ続きます。お楽しみに!
●DATA
道の駅不知火 アグリパーク豊野不知火店
住:宇城市不知火町永尾1910-1
営:9:00〜17:00(季節で変更有)
tel:0964-42-3303
髙橋果樹園
住:熊本県宇城市三角町里浦2610
道の駅宇土マリーナ
住:熊本県宇土市下網田町3084番地1
営:9:00〜18:00
tel:0964-27-1788
(撮影・文・イラスト◎ワタナベマキコ)