毎朝、“夫や娘を忘れてしまう”女性 ― 記憶喪失の中で見つけた愛と希望

2025年2月7日(金)16時0分 tocana


 突如発症した記憶障害により、毎日「初対面」のように家族と向き合わなければならない女性がいる。ネシュ・ピレイ(34)はある日、昼寝から目覚めた後、記憶が17歳の状態に戻ってしまい、パートナーのヨハネス・ヤコペ(32)や幼い娘の存在すら思い出せなくなったのだ。


記憶が毎日リセットされる生活

 この現象は映画『きみに読む物語』や『50回目のファースト・キス』を彷彿とさせるものだ。ネシュの記憶は短時間でリセットされ、1分ごとに記憶が消えていく状態にあった。しかし、時間とともに短期記憶の保持時間が延び、現在ではより長い間、新しい記憶を保持できるようになった。2024年には息子を出産し、夫や子供たちの存在を認識できるまでに回復している。


 ネシュはAmazonと提携し、自身の体験を記録したドキュメンタリー『50,000 First Dates(5万回のファーストデート)』を制作。記憶障害と共に生きる日々のリアルな姿を映し出す。


原因不明の症状と闘い続ける日々

「新しい記憶の約20%しか保持できない。2日前に何をしたか聞かれても、ただ見つめることしかできない」とネシュは語る。体調は日によって異なり、普通に過ごせる日もあれば、会話すら難しいほど混乱する日もある。


 彼女の症状の正確な原因は不明だが、過去に受けた頭部外傷が関係している可能性があるという。神経科医によると、彼女は脳震盪を起こし、発作が記憶喪失を引き起こした可能性がある。これにより、彼女は外傷性脳損傷と診断された。


“何度でも恋に落ちる”夫との支え合い

 ネシュにとって最も混乱を招いたのは、夫のヨハネスを何度も「初対面の人」として認識し直さなければならなかったことだ。最初は彼をウーバーの運転手と間違えることもあったが、徐々に彼の優しさを再び理解するようになった。「彼は常に私が安心できる存在だった。どんな状態でも、一緒に医者に行きたいと思うし、彼の助けを求めたいと思った」と彼女は語る。


 ヨハネスは彼女を支えるためにあらゆる努力をし、ついにはプロポーズに至った。ネシュも回復後に正式に同意し、2024年3月には二人の間に息子が誕生した。


記憶を失っても前を向く—ドキュメンタリーで語られる希望

 ネシュの闘いは続いている。記憶障害による頭痛、吐き気、手の震えなどの症状に悩まされながらも、彼女は自身の体験を発信し続ける。2月11日には、彼女のドキュメンタリー『50,000 First Dates: A True Story』がAmazon Primeで公開される。


「脳に関してはまだ分からないことが多い。今は手探り状態で試行錯誤を繰り返している」と彼女は不安を吐露する。しかし、同時に彼女は自身の経験が他の人々の助けになることを願っている。「多くの人が私の話を聞いて、自分の経験が理解されると感じたと言ってくれた。それがとても嬉しい。昔の自分が聞きたかった話を、今こうして発信できることが光栄だ」と語る。


 私たちの記憶は、アイデンティティそのものと言えるかもしれない。しかし、ネシュの物語は、記憶が失われても愛する人との絆は決して消えないことを教えてくれる。彼女の勇気ある姿は、困難に直面する多くの人々に光を与えることだろう。


参考:Daily Star、ほか

tocana

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