『べらぼう』蔦重が生まれた公共遊郭<吉原>とは?ときは江戸時代、そこは風俗街でありながら<トレンドの中心地>でもあり…
2025年2月10日(月)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』。横浜流星さん演じる主人公は、編集者や出版人として江戸の出版業界を支えた“蔦重”こと蔦屋重三郎です。重三郎が生まれ育った吉原とは、どんな街だったのでしょうか?今回は、書籍『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』をもとに、重三郎マニアの作家・ツタヤピロコさんに解説をしていただきました。
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本当にあった公共遊郭 吉原
蔦屋重三郎を語るには、吉原について少し知っておく必要があります。なぜなら、史実に残る偉大な出版人、蔦屋重三郎を形づくった要因は吉原生まれにあると考えられているからです。
歓楽街という特殊な環境に生まれ育ったことは、重三郎の性格や、仕事のやりかたに多大な影響を与えました。そこには、利点も欠点もあったのです。
吉原が、大きな風俗街であったことは、誰もが知るところでしょう。でも、みんな、知っているのはそれだけですよね。町全体で売春してたところでしょ。政府が認可した箱型の風俗だよね。吉原を説明する際に口に出るのはそんなところでしょうか。
もちろん、その通りなのですが、ときは江戸時代なわけです。時代がいまとはまったく違うわけですよ。そうなってくると、風俗街が持っていた役割や意味も、令和のこの時代とは全然違っているのです。
たくさんの意義があった街
吉原は、浅い街ではありませんでした。大きな存在で、たくさんの意義があった街です。
一般の女性たちよりも、ずっとあか抜けていて綺麗な遊女たちは、いまでいうアイドルやタレントのような役割も担っていました。
テレビやネットなんてまったくない時代です。写真もありません。女性の外見に対する情報の伝達は、絵か口コミのみです。その前に、そもそも美を比較検討できる女性の集団が、身近なところでは、吉原にしかいなかったのです。
しかも、遊女たちは手が出ないほど値段が高い。そうなると、ちょっと芸能人のような扱いになってくるでしょう。遊女たちが着ている着物の柄や、メイク、髪型は女性たちの間で流行になりました。
高い教養を身に付けていた遊女たち
人気、実力、美貌が伴う上位の遊女たちは、頭脳も明晰でした。
ランクは外見で決まることが多かったので、将来稼ぐことができると判断された遊女たちは、幼い頃から英才教育をされるのです。
(写真提供:Photo AC)
読み書きや歌、詩を習い、そんじょそこらの金持ちの男性よりもずっと高い教養を身に付けていたそうです。
さらに、飲み会の場を盛り上げるトーク力もある。踊りや楽器が得意な遊女もいました。吉原にいた遊女たちは、体を売ることだけがその役割のすべてではなかったのです。
トレンドの中心地
美しく華やかで、面白い遊女たちを求めて人々は吉原に集まりました。
人が集まるところは、情報発信基地になります。集まった人がさらに人を呼び、観光地化もされました。吉原は、風俗街でありながら、いつの間にか、トレンドの中心地になっていたのです。
いわゆる最先端の遊び場、一番人気の夜遊びスポット。天明期では、それが、吉原であったということを強く伝えておきます。
何せ、日本中から人々が集まり、惑溺したとんでもない魅力的な街が吉原だったと理解して下さい。
※本稿は、『べらぼうに面白い 蔦屋重三郎』(興陽館)の一部を再編集したものです。
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