ビブグルマンの和食店『料理 シフク JIYUGAOKA』でおいしい料理とお酒の楽しみ方【酒屋と飲食店のおいしい関係7】
2025年3月7日(金)17時0分 食楽web
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●こだわりの酒屋とそこからお酒を仕入れる飲食店、2つの視点から紐解くお酒、料理の魅力に迫ります。
川崎においしいお酒を扱う酒屋があります。蔵元の情熱とこだわりを深く理解し、酒一滴一滴に込められた物語を感じ取る。味と風味を熟知し、来店する地元の人や飲食店の好みに合わせたお酒を提供する酒屋、『地酒や たけくま酒店』。川崎で日本酒を扱う飲食店界隈では有名な、こだわりの酒屋です。
“こだわりの酒屋はおいしいお酒を知っている、おいしい飲食店はこだわりの酒屋からお酒を仕入れているはず”という仮説から『地酒や たけくま酒店』の2号店となる元住吉店店長・佐藤温志さんに相談して実現した、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を発掘する本企画。
第7回は佐藤さんと、東急東横線・元住吉で愛され、「ミシュランガイド横浜・川崎・湘南2015特別版」ではビブグルマンを獲得した名店、2024年、自由が丘に移転した『料理 シフク JIYUGAOKA』からお届けします。
紹介するお酒は日本酒「墨廼江 特別純米酒」(墨廼江酒造)。宮城県石巻市に蔵元があります。
「気軽に和食を楽しんでほしい」 店名に込めた想い
『料理 シフク JIYUGAOKA』店主・深瀬あつしさんと女将・深瀬昌恵さん
『シフク』は“私服”と“至福”という二つの意味を含ませた店名です。ドレスコードもなく、気軽な服装でふらりと訪れてほしい。その一方で、日常の少し先にある“ご褒美”として、特別感のある料理や時間を提供したい。
そんな思いがお二人の佇まいにもぎゅっと詰まっています。
実は『シフク』は、以前は元住吉で12年間営業していました。地元の方からこよなく愛され、ミシュランのビブグルマンにも掲載されるほどの実力店。2024年には常連客に惜しまれつつも建物の取り壊しで立ち退きを余儀なくされ、新天地として自由が丘の場所で営業を再開しました。
佐藤さん:『シフク』さんのご常連さんは当店にも来てくれていて、閉まると聞いた時にはやはり惜しむ声が多かったです。来店されるたびに「今度はどこで営業するんだろう…」と気にされている方もいて。愛されてるなぁと。
深瀬さん:悪口じゃなかったらいいよね。だとしても言わないか(笑)
佐藤さん:やめてください(笑) そんなことないです。
昌恵さん:でも先日、元住吉時代のお客様がいらした時に「最近佐藤さんがネットでこんなことやってるよ」と、この企画のことを教えてもらってたんです。そしたらその翌日に佐藤さんがいらっしゃって! 運命めいたものを感じました(笑)
佐藤さん:その日はオファーをしに行ったわけではなく、仕事終わりに美味しい和食と酒を飲みたくて…。そしたらそんな話を聞いたので、出てみませんかとお願いしました。
独立前から通い続けた「たけくま酒店」本店 心強いパートナーとの縁
当時の伝票について語る、深瀬夫妻と『たけくま酒店』元住吉店店長・佐藤さん
深瀬さんと『たけくま酒店』の社長が出会ったのは、深瀬さんの独立前に遡ります。
深瀬さん:前職の飲食店でたけくまさんから仕入れていたこともあり、好きな銘柄も多かったので独立してからもお世話になりたいと思っていました。
いよいよ独立して、期待と共にオーダーした日本酒の数々。メニューに詳しいコメントを添えたいものの、厨房仕事の合間では手が回らない……。
そんな時、『たけくま酒店』社長が自ら納品伝票にこまやかなお酒の情報を書き添えてくれたのだとか。
佐藤さん:『シフク』さんはもともと本店でお世話になっていて、移転されてからは僕が配達に行ったりと引き継ぐかたちでお付き合いを続けていただいていますが、この話は初めて聞きました。創業当時の伝票を保管していただいているんですね。
深瀬さん:あの頃は本当に助かりました。思い出なので捨てられなくて。
深瀬さんは当時の伝票と思い出を今も大切に保管しています。
『シフク』は和食と日本酒の魅力を堪能できる大人の和食店
刺身盛り合わせ
料理は、その時の仕入れや季節の移ろいごとに、お刺身、焼き物、煮物などが変化します。アラカルトもあるものの、深瀬さんいわく「コースで味わうからこそ出会える新しい発見があるんです」とのこと。
昆布おろしポン酢とスマカツオの相性が素晴らしい逸品。この日、鰹が入らなかったそうで深瀬さんは鰹を出せずに悔しがっていました
特に人気なのが鰹を使った料理。鰹が苦手だったお客様が「これなら食べられる」と驚くほどの仕上がりです。
香ばしい“藁炙り”で仕事をされた鰹に、ダシをひいた後の昆布を炊き上げて作る「昆布おろしポン酢」を合わせるというひと皿は絶品。鰹の風味をまろやかに、旨みがギュッと引き立ちます。
酢飯の上にウニを載せた贅沢な一品。「まずは腹ごなしに」と深瀬さん。ビブグルマン掲載時に取り上げられたのは「鯖の棒寿司」。酢飯は常に用意してあるそうです
こちらには「墨廼江 特別純米酒」を常温(ひや)で合わせます
佐藤さん:「墨廼江 特別純米酒」は漁港の町の酒らしく、魚介類、特に脂ののった鰹、マグロなどと合わせるにはぴったり。程良い酸もあり、脂を切ったり口内を引き締めてくれます。冷え気味の温度帯ですとサッパリとした印象でお刺身に良く合います。それにこの良い苦味。盛り合わせの白身、赤身、いろんな味わいを中和してくれます。
器へのこだわりがさらに高める“和”の情緒
店内にあるのは、こだわりの器
佐藤さん:それにしても…この器の数々はもともとのご趣味ですか? 店内にところどころ骨董品もありますが。
料理を楽しむうえで欠かせないのが、盛り付けであり器の存在。深瀬さんはお店を始めてから骨董市に足繁く通い、お気に入りに出合った瞬間に「こんな料理を盛ってみたい」と想像を巡らせながら集めていったそうです。
器だけでなく、戊辰戦争のころの骨董品もある店内。真ん中の物は、蓋で閉じることができ、秘密のモノを隠す為の物だそうです。「うちはショップカードを入れてますけど」と笑う女将
明治や大正時代の火薬箱や、骨董の輪島塗りなどをさりげなく取り入れ、どこか懐かしさを感じさせるインテリアたち。そうした空間づくりも、『シフク』ならではの魅力です。
日本酒とのペアリングで真価を発揮する一皿
コース料理より「八寸」
春先には、はしりの筍を吸い物で、盛夏には旬の魚介や夏野菜、秋には戻りガツオやほくほくのキノコ、冬には滋味深い根菜や河豚料理など、季節の表情が一皿ごとに表現されます。
「八寸」には「墨廼江 特別純米酒」の熱燗を合わせます
日本酒は香り高いものから食中酒向きのものまで幅広く扱いながらも、深瀬さん自身は「料理に寄り添ってくれる酒」、食中酒向のお酒が好みとのこと。
特に「墨廼江(すみのえ)」は、震災後に蔵見学に行き、復興に向けて頑張る蔵元の姿に感銘を受けたそうです。
昌恵さん:お酒、50℃でお出ししますね。
佐藤さん:苦味やシャープな印象が消え、甘みが立ち柔らかくなりました。温かい料理と温度が合いますし、天婦羅の油も流してくれる。からすみの塩味もまろやかにしてくれます。楽しいですね、あれもこれも合わせると(笑)。これから春の苦味のある食材とも合うでしょうね。
深瀬さん:秋の戻りガツオなんかはほぼ気仙沼産になるんですが、やっぱり宮城のお酒との相性は格別です。
食材と酒の「同郷ペアリング」は、旬をより濃厚に味わえる絶妙なおいしさを生み出します。
佐藤さん:現蔵元の澤口康紀さんが平成元年に蔵に戻られて、杜氏になってからは酵母を地元の「宮城酵母」だけにしたそうです。その上で酒米は県内外のものを使うというスタイルを確立しました。やはり地域性を活かすという思いを感じます。「柔らかくエレガントな味わい」の酒造りをテーマにされていますが、澤口社長は前職がアパレルメーカーで働かれていたということから納得のテーマですね。清潔感があり、飾り過ぎずカジュアルにもなれる品格がある。まさに『シフク』さんの室礼(しつらい)、料理にピッタリ。冷酒〜ひや〜燗酒と表情も変わるので、深瀬さんが好まれるような食事に合わせた温度で寄り添ってくれるしなやかなお酒ですね。
“ご褒美”の先にある完璧な和食体験
自由が丘に移転してからも元住吉時代からの常連さんが変わらず足を運び、「大切な人とここで和食を楽しみたいんです」と顔を出してくれる姿に、深瀬夫妻も感謝を禁じ得ない様子
“カジュアルに”“だけど特別”な時間を過ごせる和食店『シフク』。料理と日本酒の幸せな関係から、深瀬さんの骨董に対する真摯な思いまで、すべてが詰まった空間は、一度足を運べばきっと虜になるはずです。今はまだ元住吉からのお客様が多いが、これからこの土地でどんな方と出会えるのか楽しみだとお二人は言います。
私服で訪れて、 “至福”を体感。
『シフク』は 日々のストレスからふと解放される心地よさと、くつろぎの和食を堪能する極上のひとときを約束してくれるお店でした。
まとめ『地酒や たけくま酒店』と『料理 シフク JIYUGAOKA』のおいしい関係、いかがでしたでしょうか。引き続き、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を追いかけます。
次回はどんなお酒とどんな飲食店が登場するか?お楽しみに。
*みなさんの好きなお酒の銘柄を教えてください。好きなお酒の思い出、エピソードなどもあると思います。是非、『好きなお酒の銘柄』を下記のフォームにお寄せください。
●『好きなお酒の銘柄』書き込みフォーム
https://forms.gle/ayiCm2vadPRo9A4x9
『料理 シフク JIYUGAOKA』のご協力のもと、お店で「食楽webのinstagram」をフォロー、フォローしている画面を見せると「墨廼江 特別純米酒」(墨廼江酒造)一杯サービス!
無くなり次第終了です!
●SHOP INFO
料理 シフク JIYUGAOKA
住:東京都目黒区自由が丘1-23-2 DEAR自由が丘2F
Tel:090-3220-5429
営:18:00〜、日・祝17:00〜
休:不定休
*要予約
https://www.instagram.com/shifuku01.wasyoku/
地酒や たけくま酒店
https://www.takekuma.co.jp
本店
https://www.instagram.com/takekuma_saketen/
住:神奈川県川崎市幸区紺屋町92
TEL:044-522-0022
元住吉店
住:神奈川県川崎市中原区木月3丁目10-17
TEL:044789-5561
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オンラインストア
https://takekuma.co.jp/store/
(企画・取材◎ヨネダ商店)