男の妄想食堂。ラーメンの味を爆上げする「至極のチャーシュー」を作る!

2019年3月21日(木)12時0分 食楽web


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私の勝手な妄想からオープンした『妄想食堂』。料理人でも料理研究家でもない私、尾仲好太が、これまで食べ歩いた店の味の中で「これが一番旨い」と思う”味の再現”を目指し、今日もバイトのユースケと開店前の準備中です。

主人:うちは定食屋だけど、今度、ラーメンも出そうと思ってるんだがな。

ユースケ:いいっすねラーメン。チャチャッとできそう。

主人:お前、甘く見てるな。ラーメンってのは、そう簡単じゃないんだぞ。丼の中の1つ1つにこだわりがあって……

ユースケ:で、何からやります? 店長は肉料理が上手いからチャーシューから作りましょうよ。

主人:お、おう。俺もそう言おうとしてたんだ。俺の理想のチャーシューは、挙げたらキリがないんだが、1つ挙げろと言うなら東京の練馬にある『ラーメン一番』だな。30年前、創業者が作った絶品のチャーシューで、今も秘伝のレシピなんだ。

ユースケ:いきなりハードル上げてきましたね。“秘伝”って弟子以外は作れないって意味ですけど、大丈夫っすか?


練馬にある『ラーメン一番』の「チャーシュー麺」(1,000円)に、「小辛」「味付玉子」「ニンニク」「バター」などをトッピング(各50円)したバージョン


『ラーメン一番』のチャーシュー

主人:もちろん、その味を作れるわけがない。だが、俺があちこちのラーメンを食べ歩いたチャーシューのいいところをアウトプットするつもりなんだ。

チャーシューは2種類の部位を使う


左は豚バラ。右は肩ロース

主人:チャーシューに使う肉は、豚肩ロースと豚バラの2種類だ。『ラーメン一番』は豚ロースと豚のリブロ─スを使っている。最近のこだわりのラーメン屋は鶏と豚など2種類のチャーシューを使っているところもあって、味や食感の違いを楽しませてくれるんだ。

ユースケ:うわ〜、この豚肩ロース、アミタイツ履いた太ももみたいですね。

主人:豚バラの方は、くるっと丸めて、このタコ紐で縛ってくれ。ぐるぐる巻きでいい。きつめにな。

ユースケ:うわ〜、きつく縛れば縛るほどムチムチしてくる!

主人:いいから早くしろ。終わったら、フライパンで焼くんだ。

主人:フライパンで焼き目がつく程度にソテーしたら、圧力鍋に入れる。

ユースケ:おっと、“秘具”っすか?

主人:変な言い方をするな。大事なのは圧力鍋ではなくて“煮汁”の方だ。

ユースケ:ちょ、ちょっと待ってください。なんで煮ちゃうんですか? チャーシューって漢字にしたら“焼いた豚”のことですよね。

主人:いいところに気づいたな。中国の焼き豚は、皮付きの豚バラかモモ肉に独自の香辛料をまぶして炉で焼いたり、吊るして炙り焼きしたりする。しかし、日本の場合、なぜかチャーシューといえば煮豚が主流なんだよ。

ユースケ:へぇ。焼き魚と煮魚じゃ、全然違うのに不思議っすね。

主人:とにかく、まずは、ネットの肩ロースと糸巻きバラに焼き目がつくまでソテーしたら、煮汁(醤油、酒、みりん、水、砂糖、創味シャンタン)とニンニク、生姜ネギの青い部分を圧力鍋に入れよう。

ユースケ:簡単ですね。あとは圧力鍋がやってくれるってわけだ。

主人:鍋に圧力がかかって、シュルシュルと音がし始めたら中火から弱火にして10分。その時間できっちり火を止めるんだぞ。

ユースケ:それ以上やったらどうなるんですか?

主人:肉が柔らかくなりすぎてボロボロと崩れちゃうんだよ。ラーメンに入っているチャーシューって、形はしっかり整っているけど、食べるとふわりと柔らかいのが旨いだろ。そのギリギリを攻めるのがチャーシューの極意でもある。圧力鍋は、時短でいい点はあるけど、途中で蓋を開けられないから、時間はきっちり計らなきゃいけない。

継ぎ足しタレの極意

ユースケ:火を止めました。チャーシューって案外、短時間でできちゃうんですね。

主人:いや、チャーシューはそんな簡単なもんじゃない。このあと、蓋を開けて、一晩以上、寝かすんだ。

ユースケ:そうすると味がしみて旨くなるんですね。

主人:まあ、そうだな。しかし、このチャーシューのタレはまだ、最初だから味が若くてそんなに深い味にならん。老舗のタレといえば“継ぎ足し”という言葉をよく聞くだろ。

ユースケ:確かによく聞きますが、あれ、一体何がいいんすか?

主人:作ったばかりのタレは、味にまだカドが立っていてまろやかさに欠けるんだ。そこで、最初に作ったタレを少し残しておいて、次に新しく作ったタレに継ぎ足して加熱する。これを繰り返すことで、元ダレが発酵の元となって、熟成を進め、味に深みとまろやかさが出てくる。

ユースケ:深いっす。

主人:醤油や味噌なども熟成させて旨みを出してるだろ。タレやスープも一緒ってことさ。以前、博多ラーメンの名店『ばりこて』(杉並区東高円寺)のご主人が言っていたけど、あそこのスープは取った後、すぐ使わずに必ず熟成させる。それだけじゃないんだ。必ず、前日のスープの一部を残しておいて、継ぎ足すそうだ。店には店ならではの熟成による旨みのベースがあって、それが店の味。だから毎日、お守りのように入れるそうだ。味も深けりゃ、言うことも深いだろ。

ユースケ:(……卵入れよう)

主人:うちはまだ初めて作ったチャーシューだから、タレが若いしな。お前みたいだ。……お、おい、ユースケ、何してる?

ユースケ:このタレに茹で卵を入れようかと思って。味玉作っちゃえば、一石二鳥ですからね。

主人:おまえ、ちゃっかりしてんな。

翌日の油そば作り

ユースケ:店長、油そば作ってみました〜!

主人:え? お前が?

ユースケ:昨日のチャーシューの脂が固まってたんで、それと、カエシのタレを合わせて作ってみたんです。ほら、味玉もいい具合にできましたよ。

主人:美味しそうだな。

ユースケ:まあ、食べてみて下さいよ。

主人:………お。うめーな。チャーシューもなかなかいいが、このタレの塩梅もいいぞ!

ユースケ:そうっすか。ラーメンはスープ作りのハードルが高そうだから、まずは油そばをメニューにしたらどうっすかね。

主人:いいかもな、それ。

ユースケ:ちゃんと昨日のタレをとっておいて“継ぎ足し、継ぎ足し”していきましょう。いつか、美味しいラーメンを出せるようになりますよ。

『妄想食堂』のチャーシューの材料

・豚バラ1本/豚肩ロース1本(ネット入り)/タコ糸
【チャーシューの煮汁】
醤油 300cc/酒 150cc/みりん 150cc/水150cc/砂糖 100g/創味シャンタン 大さじ1/ニンニク 10片程度/生姜 1片/ネギの青い部分 2本分


「バイトの油そば」のレシピ

【材料(2人分)】
太麺 2玉
【ベースだれ】
チャーシューの煮汁 大さじ1/取り除いた脂 大さじ1/オイスターソース大さじ1/創味シャンタン 小さじ1/おろしニンニク 小さじ1/鰹出汁粉 小さじ1/ごま油 小さじ1/酢 小さじ1/胡椒適量
【トッピング】
バラチャーシューの輪切り/肩ロースチャーシューの角切り/玉ネギ/ニラ/メンマ/味玉/卵黄 それぞれ適量

(撮影・レシピ◎尾仲好太、編集・文◎土原亜子)

●プロフィール

尾仲好太(おなか・すいた)

『妄想食堂』の主人。知人からは超人の味覚、嗅覚、そして胃袋を持つと噂の一般人。旨い料理を食べる、作ることに日夜、妄想を抱き、実際に店を食べ歩き、家で再現する日々を送る。得意料理は、肉料理。

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