退職金が入り、銀行から投資を勧められたら…。荻原博子「言われるままにお金を投資に回してはいけません」

2025年3月25日(火)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和5年度の厚生年金の平均受給月額は14万6429円だったそう。「老後2000万円問題」も話題となり、老後の資金に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。そのようななか「65歳からは、お金のことは心配ご無用」と話すのは、経済ジャーナリスト・荻原博子さん。今回は、荻原さんの著書『65歳からは、お金の心配をやめなさい 老後の資金に悩まない生き方・考え方』から、老後を豊かに暮らすための心構えを一部抜粋してお届けします。

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それでも投資をしてみたい人に言いたいこと


かくいう私も、じつは投資で数多く痛い目に遭ってきました。

その話は別の機会にするとして、だからこそ「投資」の裏側が見えるようになったのは確かです。

ただ、皆さんには、そんな経験をしていただきたくはありません。何が起きるのか、予想できないのが投資の世界。そんなところに足を踏み入れなければ、幸せな人生が送れるかもしれないのですから。

そこまで言っても、「これだけ国をあげて大騒ぎしているのだから、試しに少しだけやってみたい」という方もおられるでしょう。

そういう方は、自分がよく知る身近な会社の株式を、1つ買ってみるといいでしょう。

なぜ「投資信託」でなく「株式」なのかと言えば、投資信託は、どういう商品が組み込まれていてどんな運用をしているかということが、素人にはわからない。お金だけ出して、口出しできない金融商品だからです。

それに対して株式は、自分の意思で、あれこれ考えながら売買できます。

昔は、証券会社に電話をして、証券会社の社員が勧める株式を買ったものですが、いまは個人でもネットで買えます。自分で決めて、自分で買えるので、その株式が上がろうと下がろうと、完全な自己責任になります。

株価が下がった時に寝込む人は、一生投資するな


自分の性格は、自分でもよくわからないものです。

ただ、自分が投資に「向いている」のか「向いていない」のかは、株式を1つ買ってみればわかります。

株価は、上がる時もあるが、下がる時もある。

たとえば、100万円分の株式を買って150万円になったら、ものすごく嬉しいでしょう。一方で、100万円分の株式が50万円になってしまうことも十分ありえます。

その時に「ああ、50万円も損をしてしまった」と、頭を抱えて寝込んでしまうような人は、投資には向いていません。一生、投資などしないほうが、幸せな人生を送れます。

投資のことなど忘れて、趣味の鉄道写真を撮ったり、孫と近所の公園で楽しく遊んだりしているほうが、よっぽど幸福で長生きできることでしょう。

ただ、100万円の株が50万円になった時に、「おおっ、ずいぶん安くなったな。これなら、100万円で2倍買えるぞ」と、すかさず資金を投入するような人は、もしかしたら投資に向いているかもしれません。

投資はギャンブル、ある意味「ばくち」ですから、大胆なことや損をすることが嫌いな人よりも、前向きに突き進む人のほうが「勝負の女神」に気に入られるという考え方もできます。

なけなしのお金は、つぎ込んではいけない


今年、定年退職を迎えるという人のもとには、銀行から投資に誘う電話がかかってくることでしょう。

給与振込先の銀行は、あなたの勤め先や現在の給与、預金額などを把握しています。「*月に定年退職で、何千万円かの退職金が入りそうだ」という情報が筒抜けだからです。


(写真提供:Photo AC)

「荻原さまの投資担当です」と、頼んでもいないのに勝手に担当者と名乗る銀行員から電話がかかってきて、「つきましては、私が荻原さまの投資のお手伝いをします」と、これも頼んでもいないのに、自宅訪問の約束を取り付ける。

そして「ご挨拶に参りました」と名刺を置いていく。後日、退職金が口座に振り込まれたのを見計らって、「せっかくの退職金なので、増やすことを一緒に考えませんか」と、投資のお誘い。

ここまでくると、なんだか無視できない気がして、銀行に行くと、必ずこんなことを言われます。

「こんな低金利で、お金を口座に入れたままにしておくのはもったいない。少し増やすことを考えてみましょう。全部ではなく、ほんの少しでいいので、投資に回してみませんか。人生100年時代なので、まだ40年もあります。そうなると、お金が少しでも増えれば、より豊かな老後を過ごせるかもしれませんよ」

こう言われると、誰もが少しでいいからお金を増やしたいという思いはありますから、とりあえず話を聞いてみようとする。

そうなれば、担当者の思うつぼ。あの手この手のセールストークが炸裂します。

そこで、言われるままにお金を投資に回してはいけません。

退職金は目減りさせないことを優先して


まず、銀行に行く前に、自分の老後にいくらお金が必要なのかをざっくり計算しておき、その分は投資に回してはいけません。

たとえば、貯金と退職金で3500万円が手元にあったとして、老後には3000万円と年金があればなんとかやっていけるとしたら、500万円が投資に回せるお金です。

投資は、たとえ目減りしても諦められる範囲のお金ですべきです。そして、何が起きてもオタオタしないこと。

「投資額は500万円」と決めたら、その枠内で儲けたり損をしたりする。それがゼロになってしまったら、そこで投資はきっぱりやめましょう。

ちなみに、退職金は老後の生活の命綱、増やすことよりも、目減りさせないことを優先して考えてください。

お金の不安が消えるメッセージ
ここまで読んできて不安になった方は、やっぱり投資はやめたほうがいいかも

※本稿は、『65歳からは、お金の心配をやめなさい 老後の資金に悩まない生き方・考え方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

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