来年の五輪出場枠がかかる世界選手権が開幕、坂本花織、鍵山優真、りくりゅうら日本人選手の活躍に期待

2025年3月25日(火)6時0分 JBpress

(松原孝臣:ライター)


3枠は当たり前ではない

 フィギュアスケートの世界選手権の開幕が近づいた。日本時間(以下同)で3月27日、夜中の0時5分に最初の種目として女子ショートプログラムがスタートし、3月30日の男子フリーで終える。

 毎年行われる世界選手権だが、今年は他の年と異なる意味を持つ。来年のミラノ・コルティナオリンピックへの、国別出場枠がかかっているからだ。出場する選手の成績により、最大3枠を得られる。3枠のためにはその国の上位2名の成績が「13」以内、例えば1位と12位、6位と7位なら確保できる。それを下回れば、2枠なり1枠なり、減ることになる。

 近年、質の高さと層の厚さを誇る日本だが、最近の歴史を振り返れば、2006年トリノオリンピックのときは男子が1枠しかなかった。また2018年平昌オリンピックの女子は2枠であった。3枠は当たり前ではない。だから、オリンピック前年の世界選手権に出場する選手たちは、無事大会に出場し、好成績をあげる責任を意識する。

 昨年12月の全日本選手権を終えて世界選手権代表に選ばれたあと、坂本花織はこう語っている。

「この世界選手権でオリンピックの枠が決まるので、精いっぱい演技したいなと思います」

 鍵山優真も言及した。

「来年のオリンピックの枠とりがかかっているので、しっかり気を引き締めて、このメンバーだったらいつも通りのいい演技をしたら確実に枠をとれると思うので、まずは自分のやることに集中して頑張りたいと思います」

 出場枠を意識しつつも、鍵山が言うように、それぞれの選手が力を出せれば、シングルはどちらも3枠に十分達することができる。だから納得のいく演技をすることが責任を果たす近道でもある。


3枠をとり続けた歴史

 今大会の持つ意味は重要だ。ただ、オリンピックへの道は前年の世界選手権だけが問われるわけでもない。毎年の世界選手権はその前年の世界選手権の成績で出場枠が決まるが、近年、日本のシングルは常に3枠を確保してきた。3人出られれば重圧も緩和する。つまり3枠をとり続けた歴史も見逃せない。

 日本は男子なら羽生結弦宇野昌磨、鍵山優真らがいて盤石であった年もあるがそうではなかったときもある。印象深いのは2018年の世界選手権だ。このとき、羽生が怪我の影響で欠場となり、主軸は宇野が担うことになったが、宇野は大会期間中に負傷、フリーへの出場を危惧される状態にあった。それでも強行し2位。樋口美穂子コーチは、フリーの得点を待つ間の会話を忘れないという。

「昌磨がこう言ったんです。『これで枠とれましたかね』。それを聞いて、『えっ』と思いました。考えていることはそれだったか、と驚きました。『とれたと思うよ。頑張ったね』と言葉を返したと思います」

 出場枠確保の責任感から棄権を選ばなかった。

 この大会を印象付けるのは宇野ばかりではない。羽生の欠場、補欠一番手の無良崇人の辞退により出場することになった友野一希はショート、フリー、総合得点すべてで自己ベストを更新し5位。宇野とともに3枠確保に大きな役割を果たした。友野は2022年の世界選手権でも補欠二番手だったが世界選手権開幕の約1週間前に出場の打診を受け、すでに出場を予定していた国際大会を経て出場するという強行日程の中6位。優勝した宇野、2位の鍵山とともに存在感を放ち、2023年世界選手権でも日本勢では宇野の優勝に次ぐ6位で3枠に寄与した。


さまざまな責任も帯びて出場する大会

 むろん、枠とりがうまくいかなかったこともあるが、それを含めつつ、現在のシングル男女3枠はオリンピックの枠とりに男女各3人で挑めるのは毎年の積み重ねにほかならない。

 女子は坂本のほか、千葉百音、樋口新葉が出場する。坂本は世界選手権4連覇がかかる大会だ。また、「オリンピックまでの2シーズンを1シーズンのように考えたい」として進んできた。いわば前半戦の終わりでもあり、オリンピックへ向けての現在地をたしかめる大会でもある。

 昨年に続き出場する千葉は、グランプリファイナルに初めて進出し2位になるなど躍進を遂げたシーズンを過ごす。全日本選手権、そして体調面で苦しんだ四大陸選手権は納得のいく滑りはできなかったが、1年の成長を信じて氷に立つ。

 北京オリンピック代表の樋口は1シーズン休んだあと復帰。スケートへの思いを新たにしつつ、今シーズン結果を残した。2度目のオリンピックへ向けてのあしがかりとしたい。

 男子は「そろそろ金メダルを狙って頑張りたい気持ち」という鍵山に、初出場の佐藤駿と壷井達也。

「いちばん目標にしてきた舞台ですし、いちばん大事な試合でもあると思うのでしっかり頑張りたいです」(佐藤)

「僕を選んだら結果を残せるのだとしっかりアピールしたいです」(壷井)

 と抱負を語る。

 ペアは2年ぶりの優勝を目指す三浦璃来/木原龍一、初出場の長岡柚奈/森口澄士、アイスダンスはやはり初出場の吉田唄菜選手/森田真沙也が出場する。

 自身のために、そして世界選手権からミラノオリンピックの団体に出場できる10カ国を巡る競争もスタートするだけに、そのためにも重要な試合となる。

 さまざまな責任も帯びて出場する大会。でもまずは、自らが思い描く演技を体現できることを楽しみにしたい。

筆者:松原 孝臣

JBpress

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