あのブルーノ・マーズも盗作!?過去にもあった“盗作騒動”を検証してみた

2024年3月28日(木)6時0分 JBpress

(小林偉:放送作家・大学教授)


引用?パロディ?それとも・・・

 先日、ピン芸人を対象にした賞レース=R-1グランプリで、トンツカタンお抹茶という方が、マニーラという作曲家の楽曲を不正使用して問題になったり、今年の1月にはロックバンド=ノーベルブライトが、自分の楽曲を盗作したとしてラッパーのリル・ディバとミントに対して抗議したり・・・楽曲を巡る“著作権侵害”的な問題って、割と頻繁に起きますよね? 

 引用やパロディといった意識的に使用しているケースや、たまたま過去の楽曲に似ていたという無意識な場合など様々ですが、“元ネタ”の作者が、盗作された、無断使用されたと感じた時点で騒動、もしくは事件へと発展してしまうものです。

 そこで今回は、過去に海外で“盗作騒動”が起こった楽曲と、その元ネタとされた曲の比較を幾つか取り上げてみようと思います。実際、皆さんの耳で“確認”してみて下さいね。ちなみに今回取り上げる楽曲は全て、双方和解して一応決着しているものですので、ご安心を。

 まずは割と最近の、こちらの曲から。

●Uptown funk/Mark Ronson feat. Bruno Mars

 今年1月に来日したばかりのブルーノ・マーズとマーク・ロンソンによる大ヒット曲「アップタウン・ファンク」。日本でもCMやテレビ番組でよく使用されているので、ご存知の方も多いでしょう。実はこの曲のアウトロ・・・曲の最後3分54秒ぐらいからの部分を改めてお聴き下さい。その部分が盗作ではないかと指摘された箇所なんです。

 そして、その元ネタだと主張したのがこちらの曲のイントロ部分です。

●Oops upside your head/The Gap Band

 こちらは1970年代から活躍しているファンク・バンド=ギャップ・バンドの「ウープス・アップサイド・ユア・ヘッド」という曲。どうでしょうか? 確かに似ているといえば似ていますが、ファンクミュージックにはよくありがちなメロディという感じもしますけどね。

 ギャップ・バンド側は「あれは私たちの曲の盗作」と指摘したワケですが、マーク・ロンソン、ブルーノ・マーズ側は争うことをせず、素直に似ていることを認めて、楽曲のクレジットに元ネタの作者を加え、印税の配分も行ったそうです。「アップタウン・ファンク」はダウンロードとCD、レコードなどを合わせて累計2000万枚以上のセールスと言われていますから、数%としても莫大な額になるのは間違いありません・・・。

 続いては、こちらも昨年10月に来日したばかり。イギリスの人気シンガー、サム・スミスによる、こちらの大ヒット曲です。

●Stay with me/Sam Smith

「ステイ・ウィズ・ミー」という、2014年に全英チャートでナンバー1に輝いた名バラードですが、これにも“盗作疑惑”が浮上。元ネタとされたのはこちらです。

●I won’t back down/Tom Petty

 アメリカン・ロックを代表するアーティストでしたが、惜しくも2016年に急逝してしまったトム・ペティの「アイ・ウォント・バック・ダウン」。この曲は1989年に全米チャート12位にまで上がるヒットを記録しています。

 こちらはリズムが大きく違いますが、よく聴くとメロディはかなり似ていますよね。この“盗作疑惑”に対して、サム・スミス側は「似ている」ことを素直に認めて、印税の12.5%をトム・ペティ側に支払うことで決着しています。

 さて次は時代がグッと古くなりますが、“盗作騒動”としてかなり有名なのでご存知の方が多いかもしれません。この曲です。

●My sweet lord/George Harrison

 ジョージ・ハリスンがビートルズ解散後の1970年に、ソロとして最初に放った全米・全英チャートで共にナンバー1となった大ヒット曲「マイ・スウィート・ロード」ですね。これにも“盗作疑惑”が浮上し、こちらは裁判にまでなりました。

 では、その元ネタとされた曲をお聴きいただきましょう。

●He’s so fine/The Chiffons

 1960年代に活躍したアメリカのガールズ・グループ=シフォンズの「ヒーズ・ソー・ファイン(邦題・いかした彼)」という曲。1963年に全米チャート1位に輝いています。

 マァ正直に言って、確かにこちらはかなり似ていますよね。当初、1970年にジョージの曲がリリースされた時点で、シフォンズ側からの訴えはなかったのですが、5年余り経った1976年、思い出したように提訴。ジョージ側は反発して裁判に突入しました。そして4年半後の1981年に、ジョージ側が日本円にして数億円と言われる賠償金を支払うことで決着をみています。

 この騒動で興味深いのは、訴えられた時点での想いをジョージが歌にしていること。それがこちらの曲です。

●This song/George Harrison

 タイトルは「ディス・ソング」。歌詞を簡単に訳すと・・・「この歌にはトリッキーなところはなく、自分の知る限り、白黒ハッキリしない。著作権侵害はない。このままでいいんじゃない。この曲はEメジャー。この曲は君とそして・・・。専門家だって問題ないって言っていたよ」みたいな感じ。

 マァ、ジョージが本音を率直に吐露しているってことですね。面白いのは、この曲もシングルとしてリリースされ。1976年に全米チャートで最高25位まで上がった点。商魂たくましいと言いますか、盗作騒動も創作に活かすというジョージ・ハリスンのクリエイターとしてのしたたかさ、素晴らしさ、そしてある種のユーモアも感じませんか?

 ということで、いかがでしたか? “盗作騒動”になった曲はまだまだたくさんありますので、また機会があればご紹介させていただきますね。

筆者:小林 偉

JBpress

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