トランプ関税による影響は限定的のインド!? 1年好成績インド株式ファンドはどれ?
2025年4月9日(水)11時30分 マイナビニュース
今週7日(月)、トランプ大統領の関税強化発言を受け、日経平均は急落しました。現在も、楽観視できない先行き不透明な状況が続いています。2024年のような“米国株一強”の展開は、もはや期待できないかもしれません。
昨日の記事では、投資の専門家であるSBI証券 投資情報部のシニア・ファンドアナリスト、川上雅人さんに、この局面をどのような心構えで受け止めるべきかを伺いました。今回は、川上さんが「次の一手=プランB」として注目するインド株をご紹介します。
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揺れる世界市場でも、インド株が強い理由
2025年2月下旬以降は、トランプ政権の関税政策による不透明感などを背景とした米国株式の下落などによって、NISAで人気のS&P500のような米国株式ファンドや、オルカンのような世界中の株式に分散投資できる全世界株式ファンドの基準価額(※)が下落しています。
※投資信託1万口あたりの価格。ファンドの値動きを示す指標。株価のようなもの
一方で、波乱相場の3月に下落から上昇に転じたと思われるマーケットがあります。それはインド株式市場です。日本における日経平均のようなインドの代表的な株価指数の1つであるNifty50指数は、昨年9月までは順調に上昇し、2024年9月26日に過去最高値をつけました。その後は、2025年3月4日までの約5ヵ月間で15.8%の下落となりましたが、その後は米国株式が調整する局面でも回復基調となっています(図表1)。
昨年9月以降のインド株式の下落は、インド国内の消費低迷と政府支出の減速、銀行の個人向け融資に対する慎重姿勢などから2024年第3四半期の経済成長率見通しが鈍化したこと(図表2)、これらを懸念した外国人投資家の資金流出、中国株や米ドル資産への資金シフトなどが要因と考えられます。
また、2月7日にインド中央銀行はインフレ率の低下により約5年ぶりに政策金利を6.50%から6.25%へ引き下げました(図表3)。次回4月9日の会合でも0.25%の利下げが見込まれています。インド中央銀行の利下げ転換は、インド経済とインド株式市場の下支え要因として期待されます。
インド株式が割高なのか割安なのかを確認しますと、過去5年間の予想PER(※)の推移は図表4となっています。過去5年平均の予想PERは19.5倍に対して、直近3月末は19.0倍となっており、昨年9月以降の株価下落と順調な企業業績の拡大で割高感が解消されているといえます。
※株価が企業の利益の何倍かを示す。PERが低いほど、株価が利益に対して低いので割安となる
このような投資環境に加えて、インドはトランプ政権による関税の引き上げによる影響が一定程度は懸念されるものの(4/2に米国によるインドへの相互関税率は26%と発表)、世界一の豊富な人口を背景に内需中心による成長が期待できる企業が多いため、その影響は諸外国に比べて相対的に小さいことも今後のセールスポイントになると考えます。
こうしたことから今回はインド株式ファンドに注目します。
荒れ相場でも“勝ち組”入りしたインド株ファンドTOP5
インド株式ファンドは過去3年間ではインフラ関連が大きく上昇したものの下落局面ではインフラ関連が大きく下落しました。トランプ関税などによって、引き続きマーケットの変動が大きくなることが想定されます。そのため、インド株式投資においてもリスクを抑えた戦略が有効と考え、インド株式の下落局面が含まれる過去1年において、相対的に好パフォーマンスとなったファンドに着目します。
2025年2月末基準で、NISAで買える1年好成績インド株式ファンドの一覧は図表5となります。
※参考として1年リターントップのインデックスファンド(SENSEXとNifty50)を表示
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません
○5位 T&Dインド中小型株ファンド(愛称:ガンジス)
高い成長が期待でき、相対的に割安と考えられるインドの中小型株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄はヘルスケア企業のマックス ヘルスケア インスティテュート リミテッド、自動車部品大手のウノ・ミンダ、電子機器受託生産(EMS)大手のディクソン・テクノロジーズ、ゾマト、ホテルやリゾートなどを展開するインディアン・ホテルズなどとなっており、組入銘柄数は49銘柄です(※1)。消費関連株式が比較的多いファンドといえます。中小型株式に投資しているため値動きの振れ幅を示す標準偏差が大きくなっていますが、3年、5年でも好成績のSBIセレクトのファンドです。
○4位イーストスプリング・インド・コア株式ファンド(愛称:+αインド)
消費関連株式とインフラ関連株式に分散投資しているファンドです。消費関連株式は3位のファンドと同じで、インフラ関連株式の組入上位銘柄は、建設会社・重機メーカーのラーセン&トゥブロ、国営電力会社のナショナル・サーマルパワー、総合エネルギー会社のリライアンス・インダストリーズなどとなっています(※1)。
○3位イーストスプリング・インド消費関連ファンド
高収益・高成長が続くと見込まれるインドの消費関連株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄は通信サービスを提供しているバルティ・エアテル、ICICI銀行、欧州消費財大手のユニリーバのインド子会社のヒンドゥスタン・ユニリーバ、医薬品のサン・ファーマシューティカル・インダストリー、HDFC銀行などとなっており、組入銘柄数は71銘柄です(※1)。3年、5年でも好成績のSBIセレクトのファンドになります。
○2位 SBI・UTIインドファンド
インド国内大手の運用会社であるUTIグループが運用しており、こちらも優良株中心のファンドといえます。組入上位銘柄はHDFC銀行、バジャジ・ファイナンス、ICICI銀行、オンラインのレストランガイドおよびフードオーダープラットホームを展開しているゾマト、商業銀行のコタック・マヒンドラ銀行などとなっており、組入銘柄数は56銘柄です(※1)。SBI証券が厳選した長期投資+好実績のSBIセレクトのファンドです。
○1位iTrustインド株式
1年リターン1位のiTrustインド株式は、ファンダメンタルズ分析に基づき、安定した成長が期待できる企業を厳選しており、業績の成長が期待でき財務の健全性が高い優良株中心のファンドといえます。組入上位銘柄は商業銀行のHDFC銀行とICICI銀行、コンピューターサービス会社のインフォシス、金融サービス企業のバジャジ・ファイナンス、総合的な銀行・金融サービスを提供するアクシス銀行などとなっており、組入銘柄数は38銘柄です(※1)。3年・5年でも安定したパフォーマンスを上げているファンドで、つみたて投資枠でも投資可能な唯一のインド株式ファンドです。
これらの5ファンドは、参考で示しているSENSEXおよびNifty50インデックスファンドよりも1年で良好な実績となっています。
『投資情報メディア』2024年7月22日のコラム「新NISAの6ヵ月 インド株式ファンド 好成績アクティブとインデックスとの格差は?」(記事はこちら)でコメントしたように、インド株式インデックスファンドは取引コストや売買益に対する課税などによりベンチマーク(対象インデックス)に劣後する傾向があります。そのため、分散投資先としてインド株式を選ぶなら、好成績アクティブファンドの活用が有効と考えます。
※1 組入銘柄の情報は2月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
掲載されたファンドの情報はこちら
『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら