「お父さんの手洗いチェックはお母さんが」「お茶汲みはお母さんの仕事」今なお残るPTAの時代錯誤

2025年4月18日(金)12時10分 All About

PTAの経験談について保護者にアンケートを取った結果、PTAには“理不尽な慣習”がいろいろあることが分かりました。ここでは、『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)から抜粋し、「ジェンダーバランス」の理不尽について取り上げます。

PTAには“理不尽な慣習”があります。PTAの経験談について保護者にアンケートを取ったところ、「ジェンダーバランス」にまつわる次のようなエピソードが挙がりました。
※本記事は『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)を一部抜粋したものです。
「「会長は男性。副会長の父親は何もしなくてよい」と引継ぎがある。(ふーたさん)」
「運動会の“お母さん”による来賓への「お茶汲み」は時代錯誤だからやめようと提案。もちつき大会で「お父さんの手洗い、指先チェックは、お母さんが行ってください」という項目を「男女差別なので削除してほしい」と提案した。(うめさん)」
「ママ友にPTAの愚痴を話していたら、友人の夫が横で「おやじの会は飲んでるだけだから楽しいよ!」と言い、殴りそうになった……。(暴力反対さん)」

会長は父親、活動は「母親の義務」

ジェンダーバランスが異様に偏っていることも、PTAの最大の問題点のひとつです。まず大半の地域では、会長は男性ばかり。公立小中学校のPTAの女性会長の割合は、たった14.8%です(内閣府調べ 2020年12月時点)。
対照的に、会長以外は母親ばかりです。活動への参加は、なぜか「母親の義務」と思われており、父親はほぼ想定されていません(稀に、シングルファザーが「母親」カウントされるケースも見かけますが)。単発で参加できる「係」の活動は多少、父親も増えているものの、継続的な参加を求められる「委員会」活動は、今も母親がほとんどです。
ただし、単純に「父親のせい」ともいえません。PTAはあまりにも母親が多く、平日の日中の集まりに参加する父親は「ぼっち」になりがちです。そこで、父親たちが参加しやすいよう「おやじの会」をつくった、という話もよく聞くのですが、これによって「PTA=母親」「おやじの会=父親」という棲み分けが固定化してしまった面もあります。
ときどき「母親代表」や「母親委員」といったポストを設けているPTAもありますが、これも「おやじの会」と同様の問題があります。「会長は父親(男性)」という前提のもと、ある種「女性活躍」のために設けられた役職でしょうが、むしろ「会長は父親」という縛 りを強化することにもつながってしまっています。

「無駄な活動をなくす」の注意点

「PTA活動の無駄をなくそう」という話がよく聞かれますが、これにはちょっと注意が必要です。「無駄」の基準は人それぞれ違うからです。
たとえばベルマーク活動にしても、寄付という観点からは非常に無駄が多い、非効率なものですが、たとえば夫の転勤で知り合いのいない土地にやってきた 母親など、友達づくりやおしゃべり、交流が目的の人にとっては「無駄」ではないこともあります。
一見無駄に見えても、無駄ではないと感じ、好きでやっている人がいるなら、必ずしもやめる必要はないでしょう(そういった仕事があんまり多い場合は減らしたほうがいいとは思いますが)。
ただし「本当にやりたい人以外を巻き込まない」ことは、必須です。どんなPTA活動も同様ですが、「必ず何人やる」「必ず参加する」という決まりにするくらいなら、やらないほうがずっといいでしょう。

PTAを「やめたい」「変えたい」——そう思っている方へ

拙著『さよなら、理不尽PTA!』は、「PTA改革の手引き」となることを目指して書いたものです。
「PTA改革」とは、PTAの仕組みを、泣く人が出ないように変えること。つまり、加入から会費徴収、活動まで、強制をやめて任意にすることです。本質的には「会員の意思を尊重した運営にすること」だと、私は思っています。
是非、この本を参考にしてもらえたら幸いです。大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)

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