PTA活動の理不尽さの正体とは? 「強制参加」という名の呪縛には深刻な弊害も
2025年4月21日(月)8時35分 All About
役員決め、ポイント制、前例踏襲、ジェンダーバランス、非会員家庭の子どもの差別、登校班——。PTAの経験談についてアンケートを取った結果、PTAには“理不尽な慣習”が多々あることが分かりました。ここではPTAを強制するデメリットを紹介します。
PTAの理不尽さの源は「強制」にあると考えられます。なぜか「必ずやれ」と言われ、意思を尊重してもらえず、参加を強要される。だからモヤモヤするのでしょう。
強制の背景には「PTAは誰かがやらないといけない」という思い込みがあるわけですが、根拠はありません。もし本当に誰かがやらないと困るような仕事があるなら、それは国や自治体が税金でやるべきこと。「やらないといけないこと」は実際にはなく、もしやる人がいないなら、その活動はやめていいのです。
ただ、いくら「強制はダメ」と言っても「ずっと強制だったんだから、いいじゃない」と思う人もいるでしょう。たまたま気のいい人が集まって、楽しくやっていることもあるでしょう。でも、それはほぼ運によるものであり、強制をベースとする限り、いつか誰かが泣くリスクはあります。
PTAを強制するデメリット
さらにPTAの参加を強制すると、こんなデメリットもあります。「楽しくない」「やる気をなくす」
強制というのは、参加者が「自分の意思を尊重してもらえない」ということであり、楽しくないし、やる気もなくしてしまいます。単純ですが、このデメリットは、思いのほか大きいと思います。「根本的な問題が解決しない」
たとえば、何かの集まりで手伝いを募集して人が足りなかったとき、ふつうの団体なら「なぜ人が集まらないか」を考えます。でも強制だと「足りないなら学年委員さんにも出てもらおう」で話が済んでしまいます。すると「そのお題が適切だったか」ということが検証されず、翌年も同じ問題が起きがちです。「辛い人を、より追い詰めてしまう」
家庭の状況は、それぞれ本当に違います。「下に乳幼児がいる」「親の介護がある」「実は病気で生きているのがぎりぎり」等々。そこで「必ず全員平等にやって」と求められたら、ぎりぎりの人はより大変になります。「なら、そうならないよう理由を言わせよう」というのがPTAでは「常識」でしたが、本当はそれは、一番やってはいけないことでしょう。言いたくない人もいるのです。「生産性のない仕事が発生しがち」
他の人に対して、本人がやりたくないことをやらせるのは、とても手のかかることです。何度も連絡を入れたり、「来なかった人チェック」をしたり、やたらと労力がかかるわりに何も生みださず、誰も得をしません。「保護者の関係を悪くする」
PTA活動をきっかけに友達ができたという人も、特に役員さんでは多いかもしれません。でもその一方で、強制によって保護者同士の関係が悪化する経験をした人もたくさんいます。活動に参加しなかったために悪口を言われ、学校行事に足を運びづらくなった、という人の話はよく聞くものです。以上が、強制がもたらす主な弊害です。
強制は体罰とも似ています。昔は「子どもは殴らないとダメ」と信じられていましたが、今は誰もそんなことを言いません。「最低限の強制は必要だ」というのは、「最低限の体罰は必要だ」というのと同じでしょう。
強制をやめても大丈夫
「強制がダメなのはわかる、でも強制をやめたら、PTAがまわらなくなるじゃないか」と不安に思う方も、まだまだ多いかもしれません。たしかに、今これだけPTAが嫌われている状況で、ただ強制加入をやめたなら、会員が激減することも考えられます。もしそれを避けたいなら、一般の団体と同様に運営方法や活動内容を改善し、且つそれをアピールして、「入りたい」と思ってもらえる団体にする必要があるでしょう。
同時に、発想を切り替えることも必須です。これまでPTAは「前年通りの活動をするために、人やお金を(強制的に)集める」という考え方でしたが、これをひっくり返すのです。つまり「強制をやめ、任意の募集で、集まった人とお金で、できることをやる」と考えるのです。この頭の切り替えをできれば、強制は手放せるはずです。
これはつまり「人が集まらない活動は、やらない」ということでもあります。会長さんにとっては、ちょっと覚悟がいることでしょう。やめたら文句を言ってくる人もいるかもしれません。でも、どうか負けないでください。誰かが我慢して、いやいや続けるほうが、よほど悲しいし、間違ったことです。
PTAを「やめたい」「変えたい」——そう思っている方へ
拙著『さよなら、理不尽PTA!』は、「PTA改革の手引き」となることを目指して書いたものです。「PTA改革」とは、PTAの仕組みを、泣く人が出ないように変えること。つまり、加入から会費徴収、活動まで、強制をやめて任意にすることです。本質的には「会員の意思を尊重した運営にすること」だと、私は思っています。
是非、この本を参考にしてもらえたら幸いです。
大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)