その委任状・議決権行使書で大丈夫? 「PTA総会」の書面・Web化で気をつけたい法的なポイント

2025年5月10日(土)21時25分 All About

最近は、書面やWebフォームによるPTA総会が増えてきました。対面で集まる総会よりも会員の意思を反映しやすく、準備の手間も減らせます。書面やWebを作るときに気を付けるべき点や、回収率を上げ、集計しやすくするための工夫をお伝えします。

新学期が始まって間もないこの時期、資料の作成など「PTA定期総会」の準備に追われている役員さんは多いことでしょう。
対面でPTA総会を行う場合、出席者はどうしても限られがちです。今はみんな忙しいので、委任状で済ませる会員が大半だと思います。
そこで最近は、書面やWebフォームを用いた総会を行うPTAも増えてきました。これは、対面で集まる代わりに、議案ごとの賛否を議決権行使書(書面やWebフォーム)で回答し、各会員が議決権を行使するやり方です。コロナ禍を機に広まりましたが、会員の意思を反映しやすく、かつ役員さんの負担も比較的軽くなるので、そのまま定着した印象です。
委任状も議決権行使書も、PTA側がフォーマット(書面やWebフォーム)を用意して、会員に記名、提出・送信してもらう形が一般的です。フォーマットを作る際は、どんな点に気を付けたらいいのでしょうか? 元PTA会長で弁護士の藤井豊さんに教えてもらいました。

書面やWebによる議決権行使をPTAの規約で認める

まず藤井さんが注意を促すのは、「総会に委任状や、書面・Webフォームを用いる場合、その旨を規約に加えておくこと」です。
「本来PTA総会は対面で行われ、会員が出席して直接議決権を行使することが予定されています。特別な規定がない限り、そういうものと考えられている。ですから、委任、書面やWebフォームによる議決権行使を認めるなら、その旨を規約に定めておくべきでしょう」
PTAという組織の性格上「あまり厳しい運用は求められない」ものの、後で議決の有効性が問われるような事態は避けた方がいいということです。
では具体的に、どんな文面を規約に加えればよいのでしょうか。筆者がこれまでに見たものを参考に、サンプルを用意してみました。
「*総会は、会場を設ける方法、議決権行使書(書面・Web)による方法、これらを併用する方法により、開催することができる
*総会は、会場参加のほか、委任状及び議決権行使書(書面・Web)での回答を出席とみなし、会員数の3分の1を定足数(総会が成立する出席者数)とする。総会で議決する事項は、総会出席者の過半数の賛成で決定する」
なお一点、藤井さんが「やってはいけない」と指摘するのが「提出がない場合は〇〇とみなす」などと書き添えることです。提出がなければ、そもそも出席者としてカウントできませんから、これを賛成や反対とみなせば、規約で定足数を定めた意味がなくなります。
委任する相手について、「PTA会長 または (空欄)に委任します」などとするのは「よい方法です」と、藤井さん。選択肢と空欄を設けることで、白紙委任を避けつつ、かつ提出する人の意思をより反映しやすくなります。

回収率を上げ、集計の手間を減らす、さまざまな工夫

今回、筆者がSNSで「委任状や議決権行使書を送ってほしい」とお願いしたところ、20枚強のサンプルを送っていただきました。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございます。
それぞれ、文面などにさまざまな工夫が見られます。以下、今回見せてもらったサンプルの中から、筆者が「いいな」と思った点を7つ拾ってご紹介しましょう。

1. 教職員の会員が回答することも前提にする

例)保護者氏名 または 教職員氏名
委任状などの提出者の記名欄には「保護者氏名」と書かれていることが多いですが、ほとんどのPTAは教職員の会員もいるはずです。教職員が提出・送信することを想定した書面やフォームを作成する必要があるでしょう。

2. 総会成立のためには一定数の提出が必須であることを案内文に添える

例)総会の成立には、会員家庭数の過半数の出席・委任状または議決権行使書を要する
会員の中には、なぜ委任状などを出す必要があるのか分からず、提出を見送ってしまう人もいるでしょう。規約で総会の定足数が決まっていることを添えれば、提出数が増えるかもしれません。
例)ご回答いただくのはPTA会員です(会員のみ議決権があります)
たまに、PTAに入っていない人が間違えて委任状などを出してしまう話を聞きます。間違えて定足数にカウントしないよう、こういった注意を添えておくのもよさそうです。

3. 子どもが複数在籍する場合は一番上(または下)の学年で回答することを添える

<書面の場合>
例)委任状はご家庭につき一枚のみ、一番上(下)のお子さんの学年でご提出ください
<Webフォームの場合>
例)本校にお子さんが複数在籍する場合は、一番上のお子さんの学年・クラスをお知らせください(選択式)
同じ学校に子どもが複数在籍する場合など、1つの家庭から複数の回答があるかもしれません。「一番上(または下)のお子さんで回答してほしい」と指定しておくと、集計(定足数をカウント)しやすくなるでしょう。(※保護者が個人単位で入会するPTAや、子どもの数に応じて議決権が与えられるPTAは除きます)

4. 議案や規約を参照しやすくする

<書面の場合>
例)議案は別紙・総会資料をご確認ください(またはQRコード)
<Webフォームの場合>
例)規約はこちらから確認できます (「こちら」にリンクを張る)
総会に上げる議案や、総会に関するルール(規約)は、参照しやすくしておきたいものです。紙で配布しない場合、ホームページや共有ドライブにデータを上げて、Webフォームならリンクを、書面ならQRコードを付けると、みんなアクセスしやすくなります。

5. 「ご意見フォーム」を設ける

例)PTA活動へのご意見、ご要望をご記入ください
PTAに声を届けたいと思っている会員は、意外と多いものです。委任状や議決権行使書に、自由に書き込める「ご意見フォーム」を設ければ、別途アンケートを行う手間を省けます。
例)対面での質問会について 日時:○月○日(○)○時半〜 場所:○○○
書面総会の開催に併せて「対面での質問会」を行うケースもありました。対面での総会がなくなるので、直接意見を言いたい会員のために、こういった場を設けたのでしょう。ちょっと手間はかかりますが、これもよいやり方だなと思います。

6. 委任か議決権行使かを選べるようにする

例1)以下いずれかの □ にチェックを入れてください □ 委任状 □ 議決権行使書
例2)第一号議案について 承認する PTA会長に委任する 承認しない
委任と議決権行使のどちらかを選べるタイプのフォーマット(書面またはWebフォーム)も、いくつかありました。例1)は全議案まとめて選ぶもの、例2)は議案ごとに「賛成/反対/委任」を選ぶものです。意見が割れそうな議案がある場合など、こういった方法もいいかもしれません。

7. 「回答しない」も選べるようにする

<Webフォームの場合>
例)第一号議案について 承認する/承認しない/回答しない
Webフォームの場合、回答をスキップできないと、提出自体を見送る人が出るかもしれません。回収率を上げるため「回答しない」の選択肢をつくるのもよさそうです。
筆者が気付いた点はざっとこれくらいですが、ほかにもいいアイデアはいろいろありそうです。おすすめの方法がある方は、よかったらぜひ、筆者までお知らせください。
最後に一点。もし、自動加入方式のPTAの方がこの記事を読んでいたら、まずは入会届の整備にトライしてもらえないでしょうか。そもそも任意で加入する団体なのですから、保護者や教職員に議案への賛否を問う前に、「PTAに入るかどうか」の確認が必要でしょう。
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。(文:大塚 玲子)

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