みんな他人ごと? 「PTA総会」考えなしで提出した「委任状」が生んだ思わぬ悲劇とは

2025年5月7日(水)21時15分 All About

PTA総会は「委任状を出すだけ」という人が多いもの。でも、何も考えずにただ委任していると、思わぬ事態が生じることもあります。提出するときに気を付けるべきこと、考えないといけないことは?

毎年GWの前後には、各地のPTAやP連(PTAのネットワーク組織、上部団体)で「定期総会」が行われます。平日日中に開催することが多いので、だいたいどこでも出席者は新旧の役員さんが主で、それ以外の会員は「委任状を出すだけ」ということが多いでしょう。
でも、みんながただ漫然と委任状を出していると、思わぬ事態が起きてしまうこともあります。
例えば、某県P連の2023年度の総会では、ある議案に対し、出席者7名全員が賛成しました。ところが最後に、議長が「私は反対します。22枚の委任状が集まっている」と言って決議をひっくり返してしまったそう。出席者からは、落胆と戸惑いの声が上がったといいます。
一般のPTAでそんな極端な議決が行われることはめったにないとは思いますが、可能性がないわけではありません。
総会(書面決議を含む)に直接参加できるならそれがベストですが、やむを得ず委任状を出す場合には、どんなことに気を付けたらいいのでしょうか。元PTA会長で、弁護士の藤井豊さんに聞いてみました。

賛否が割れる議案があるとき、誰に委任するか

まず、PTA総会の委任状とは、どんなものなのでしょうか。
「基本的に、会員はそれぞれ議決権を持っています。会員は総会に出席して、各議案への賛否を明らかにするのが原則ですが、その議決権の行使について、総会に出席する他の誰かに委ねる書面が『委任状』です」(藤井さん、以下同)
PTAやP連はそれぞれの規約で、総会が成立するための定足数(例えば「全会員の3分の1」など)を定めています。出席者がその人数に満たないと総会が成立せず何も決められないので、委任状の提出をもって定足数を満たすやり方が一般的なのです。
では、誰に委任すればよいのか。PTA総会の委任状は、印刷されたものが事前に配られ、記名して提出する形が多いですが、「議長に一任する」と書かれたものをよく見かけます。そのまま提出してよいのでしょうか。
「『議長に一任する』という委任状は、出席者の多数の意見に従う意図で提出することが多いでしょう。通常は特に気にする必要はないと思います。
ただし、賛否が割れるような議案が上がっていて、総会に出られない場合は、自分の意見を届けるため『議長』を取り消し線で消し、自分が委任したい人の名前や役職(「PTA会長」など)を書いて提出することもできます。総会に出席する方で、自分の意見と同じ立場の人を指定すればよいのです」
どんな議案が上がっているのか、あるいは誰に委任すればいいか分からない場合は、「無理に委任状を出さなくてよい」と、藤井さん。Googleフォームなどオンラインの委任状だと、委任する相手を指定できないことがありますが、そういったときも同様です。
たまに「提出がない場合は賛成とみなす」などと書かれた委任状を見かけますが、これは「一番マズいやり方だ」と藤井さんは指摘します。
「委任状の提出がない場合は出席者としてカウントすべきではありません。定足数を定めた意味がなくなります。もしこういった委任状が配られ納得できない場合は、『委任しません』と書いて提出し、このような運営の見直しを求めるべきでしょう」
ただし、単に委任しなければいい、というわけでもありません。
「委任をしてもしなくても、一定数が集まりさえすれば、おかしな議決が行われてしまうことはいくらでもあり得ます。ですから本来はやはり、総会に出席して、自分で情報を集め、自分の頭で考えて議決権を行使するのが一番です」
特にP連の総会においては、議決権を持つのは各組織を代表するような立場の人たちですから、「簡単に委任するのはおかしいのでは」と藤井さんは言います。

会員でいるなら自分で考えた内容で提出を

そもそも、いまだに入会意思確認を行っていないPTAも、残念ながらまだたくさんあります。入会届すら集めていないPTAが、総会の委任状だけはきちんと集めているという状況は、笑えない冗談のようにも感じられます。
それでも、PTAを退会せず会員でいることを選んでいる人は、委任状を出すのか出さないのか、どうやって自分の意思を表明したらいいか、もっと考えた方がいいのではないでしょうか。委任状を出す際は、PTAへの意見を書き添えてもいいでしょう。
この記事の執筆者:大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)

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