罰ゲームは「卒対」!? PTA役員決めのシステム“ポイント制”はなぜなくならないのか
2025年4月19日(土)21時25分 All About
PTAの経験談について保護者にアンケートを取った結果、PTAには“理不尽な慣習”がいろいろあることが分かりました。ここでは、『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)から抜粋し、PTAでよく見られる「ポイント制と目的不在」を取り上げます。
※本記事は『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)を一部抜粋したものです。
「本部役員が全保護者会員のポイントを事前にチェック。役員決めの当日、立候補がいなければ、一定のポイント数に満たない人からクジ引きになる。(ゆるりとつながり隊さん)」
「ポイント制のルールが複雑すぎて、集計する人の手間がかかる。(とりさん)」
「毎年、自己申告のポイント数を一覧にして、各クラスで委員の投票をする。申告の提出が遅れるとポイントがゼロに。高学年になると自然と低ポイントの人に票が集まる。仲良しグループが相談して誰かに票を集中させることもある。(たなちゃんさん)」
摩訶不思議「ポイント制」
役員決めが早く終わるよう、「ポイント制」という仕組みを採用するPTAがときどきあります。これは「本部役員をやったら5ポイント、委員は3ポイント、係は1ポイント」というふうに役職ごとに獲得ポイントを決め、「卒業までに何ポイントためる」といったルールを会員に課すものです。高学年になると、獲得ポイント数が少ない保護者に声がかかり、一人残らず全員にPTAの「仕事」をやらせることができます。
役員決めが早く済むので、一見よさそうに見えますが、完全に強制を前提とした仕組みですから、雰囲気が悪くなることを免れず、弊害が目立ちます。
さらに、ポイント制は一度始めると、やめるのも困難です。ポイント制のもとで活動した保護者は「ポイント制をやめる」=「せっかくためたポイントが失われて自分が損をする」と感じ、継続を求めるようになるからです。あるPTAでは、役員さんが委員の数を減らそうと提案したら「ポイントがためられなくなる」と苦情が出たといいます。
一方で「ポイント制をやめたらPTAの雰囲気がよくなった」という話もよく聞きます。大阪のある小学校のPTAでは、保護者全体にアンケートを実施。「廃止に賛成」が7割だったため、なくすことにしたそう。
川崎市中原区PTA協議会の元会長・宮田大輔さんは、各PTAの会長や役員さんたちに「ポイント制はNG」と周知し続けた結果、区内すべてのPTAのポイント制が廃止に。最後に残った1校では、校長先生から「やめましょう」と言ってもらったことも、効いたようです。
ポイント制は残しつつ「実質無効化した」例もあります。岐阜県の小学校の元PTA副会長・高橋尚美さんは、一部の根強い反対からポイント制自体はやめられなかったものの、代わりに「免除のルールをやめ、理由不問で誰でも辞退可能にする」ことで、ポイントを「ただの点数」に変換したということです。
ポイントをためないと罰ゲームは「卒対」
「卒対」とは、主に小学校で卒業祝いの準備をする6年生保護者の活動です。「卒業対策委員会」の略と言われますが「卒対」という名称で定着しています。卒対は、もともとはPTAとは別の、保護者有志の活動だったはずですが、慣例的にPTAの委員が兼ねることが多く、PTA活動に組み込まれている場合もあります。やることは、卒業式で配る祝い菓子や記念品の準備、卒業アルバムの手配など。昔は謝恩会の準備も定番でしたが、最近は謝恩会自体をやらない学校が増えています。
PTAではよく「低学年で委員をやったほうがいい」と言われ、1、2年生のときはじゃんけんによる争奪戦になりがちですが、これは6年になると卒対がまわってくる可能性があるためです。やたらと嫌われていますが、卒対を経験した筆者としては、他の委員会活動よりは面白かった印象です。そのときのメンバーで決められることが多いからです。
PTAを「やめたい」「変えたい」——そう思っている方へ
拙著『さよなら、理不尽PTA!』は、「PTA改革の手引き」となることを目指して書いたものです。「PTA改革」とは、PTAの仕組みを、泣く人が出ないように変えること。つまり、加入から会費徴収、活動まで、強制をやめて任意にすることです。本質的には「会員の意思を尊重した運営にすること」だと、私は思っています。
是非、この本を参考にしてもらえたら幸いです。
大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)