頭が悪く見える話し方の共通点は「繰り返し」「支離滅裂」「話題がずれる」…失敗例から学ぶ「論点をずらさない」テクニック
2025年4月22日(火)12時30分 婦人公論.jp
同じ話を繰り返し…(写真提供:Photo AC)
「忙しい自慢をしてしまう」「自分の正義を押し付ける」「教えたがる」「長々と言い訳をする」など、認めてもらいたいという人ならだれでもある欲求が高じると、頭が悪い人に見えてしまう危険性があります。ベストセラー『頭がいい人、悪い人の話し方』の著者・樋口裕一さんが、考察するそのような言動をとる理由、そして知的習慣が身につくヒントを綴った著書『頭のいい人が人前でやらないこと』より、一部を抜粋して紹介します。
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同じ話を繰り返す
ロンドという音楽形式がある。ベートーヴェンの『エリーゼのために』などが典型的だ。
最初に印象的なひとまとまりのメロディが聞こえ、次に別のメロディになるが、しばらくするとまた最初のメロディが繰り返され、それが何度も繰り返される形式だ。同じメロディが回るように繰り返されるため、日本語では「輪舞」と訳される。
まるでロンド形式のような話をする人がいる。「電車が遅れて遅刻してしまいましてね。山手線で架線事故があったようで、しばらく止まっていたんですよ。ホームで30分も待ってイライラしましたよ」と出会ったとたんに言い出す。
約束の時間に遅れて到着したのであれば、もちろん、そのような言い訳をする必要がある。それは当然のことだ。
だが、話がひと区切りするごとにまた同じことを言い出す。仕事を話がひと段落すると、また「電車が遅れて遅刻してしまいましてね。山手線で架線事故があったようで……」と言い出す。
それで終わりかと思っていると、また別の話がひと段落すると、「電車が遅れて遅刻してしまいましてね。山手線で架線事故があったようで……」と繰り返す。これでは、バカと思われても仕方がない。
いや、1つの話がワンフレーズかツーフレーズであれば、まだいい。あるいは、多少のバリエーションがあるのならそれでもいい。ひとまとまりが1分くらいかかるような話をまったく同じ内容で同じ口調で繰り返す。
中には、ロンド形式どころか、最初の話が終わったとたんに同じフレーズを繰り返す人もいる。
CMに、まったく同じ内容を二度続けて、お金を節約しながら印象付けようとするものがあるが、それと同じで、音楽の反復記号でもついていたかのように、そのまま繰り返す。
これではいつまでたっても話が先に進まない。それどころか、3つくらいの話をそれぞれ3回ずつくらい繰り返す人もいる。1回ずつであれば5分くらいですむところを、3回ずつ繰り返すので15分以上かかったりする。
忙しい相手が困ってしまう話し方
このような話し方をするのは、3つの場合が考えられる。
第1は自分の話に念を押したい場合だ。
遅刻して申し訳なかったということを心を込めて詫びたいと思っている。だから、1回言っただけでは誠意が伝わらないような気がする。だから、繰り返して言う。
第2の場合は、上手に話を終えることができない場合だ。
まとまりをつけて話を終わりにできればそこで終わるのだが、音楽における最後の和音のようにうまく終わりにできない。だから、何か言い足りない気がしてまた同じことを言ってしまう。それを繰り返す。
第3の場合は、本当に話をしているうちに、前に話したことを忘れてしまう場合だ。
この場合は自分で繰り返して話している自覚がない人だ。だが、実際には第1の場合と第2の場合がほとんどだろう。おそらく自覚したうえで繰り返し話している。だが、いずれにせよ、このタイプの人が困るのは、時間の効率が極端に悪いことだ。
かなり長い時間一緒に過ごしていても、同じことを何度も繰り返しているので情報量が少ない。無駄話をしている分にはそれでもかまわないが、忙しいビジネスマンがこれでは相手が困ってしまう。
『頭のいい人が人前でやらないこと』(著:樋口裕一/青春出版社)
支離滅裂な発言をする
もっとも愚かだとみなされるのが、支離滅裂な話をする人だ。
無口ではない。むしろ、しゃべるのが好きな人も多い。ただ、内容がない。話題が幼稚なだけではない。そもそも何を言っているのかわからない。支離滅裂な話には2つのパターンがある。
第1は、5Wを明確にしないで自分一人でわかった気になって話すために、共通の情報を少しも共有できない場合だ。
誰がどこでいつしたのかを明確にしないまま、主語もなく、「赤いワンピースを着てたのよ」などと言い出す。
そのあとで説明があるのかと思うと、それなしに話が展開していく。場合によっては、そこに「さっちゃん」という心当たりのない登場人物が顔を出して何かを始めたりする。
しかも、登場人物は2人だとばかり思っていると、どうやら3人だったり4人だったり、中に中年の男性が含まれていたりする。誰かが誰かに文句を言ってけんかになったというような少々複雑な話を、状況抜きに語るので、聞いているほうは、いよいよわからなくなってくる。
時には「係長」という名前が出てくるので当然1人のことを語っていると思っていると、A係長とB係長とC係長をすべて「係長」と呼んでいたりする。「係長ったら、書類がひどいって怒ったのよ。そしたら、係長がそれに文句を言って謝らせたの。係長はどうしていいかわからなくなって係長のところに相談に行ったんだって」
しかし、話している当人は、みんなが了解しているものと思い込んで話し続ける。
話題がどんどんずれていく
もう1つは、話題がどんどんとずれていくパターンだ。
昨日行ったレストランの話かと思って聞いていると、そのときに着ていた服の話になり、その服を勧めてくれた友人の話に移り、その友人の友人がテレビに出演する話になり、次に有名タレントの話になる。
時には、はじめのうちは「Aちゃんはイヤな人」というエピソードとして話していたはずなのに、いつの間にか「Aちゃんにはお世話になった」という話になっていたりする。
しかも、このタイプの話をする人はセンテンスを区切らずに、一文で語るので、聞くほうとしては、何を言いたいのかわからない。
しかも、1つのセンテンスで語るので、「もう、いい加減にやめてくれ」とも「それって、どういうこと?」とも合いの手を入れるタイミングが見つからない。
話が終わった後に、「オチは何なの?」と聞きたくなってくる。
話題がどんどんずれていく(写真提供:Photo AC)
話が横道にそれる人
仲良し数人で旅行の相談している。伊豆がいいか日光がいいか、それとも関西まで足を延ばすか、いっそのこと四国にでも行くか。日程、料金、景勝地、温泉の質などを話している。そのなかに話がずれていく人がいると、なかなか話が進まない。
日光に行こうかと考えているとき、かつて自分が日光を訪れたときのエピソードを話し始める。もちろん、それが今回の旅の参考になればよい。そのつもりで話しているのであればいい。
ところがそんなつもりは毛頭ない。単に小学校の修学旅行で日光に行ったときのささいなエピソードでしかない。友達の固有名詞まで出して楽しそうに話す。
横道にそれるのが同僚か目下の人であれば、途中でとどめて話を進めるが、それが目上の人の場合にはそうもいかない。ひとしきり話が終わるのを待って、本来の話題に戻す。
もし、旅の計画を立てている数人の中に、横道にそれる人が2人以上いたら、その話し合いはまとまらない。
何度会って話をしても無駄話で終わって埒が明かず、最後には、リーダーとなっている、この中で最も有能な人間が1人で決めて、ほかの人に指示をせざるを得ない状況に立ち至るだろう。
この2つのパターンが合体している人もいる。そうなると、誰にも理解できない外国語を1人でしゃべっているに等しい状況になる。
ただ、意外なことに、このようなタイプの人間が2人でそれぞれに支離滅裂な話をしているのに、互いにわかりあっているような場面に遭遇して驚くことがある。きっと愚かな人同士は波長が合って理解しあえるということだろう。
※本稿は『頭のいい人が人前でやらないこと』(青春出版社)の一部を再編集したものです。