アルツハイマー型認知症の家族介護者に聞いた、最も困っている症状は?

2025年4月22日(火)10時36分 マイナビニュース


大塚製薬はこのほど、「認知症による行動症状に関する調査」の結果を発表した。調査は2024年9月13日〜9月24日、自宅で生活を維持しているアルツハイマー型認知症と診断された65歳以上の家族と同居する40〜70代の男女1,147名を対象に行われた。併せて、メモリーケアクリニック湘南・院長の内門大丈氏による調査結果に対する見解および適切なケアで症状が改善する可能性についても紹介している。
○家族介護者が最も困っていること
アルツハイマー型認知症に伴う行動・心理症状「BPSD」の各症状を選択肢として挙げ、同居する家族介護者に困っている度合いを聞いたところ、最も多かったのは「物を投げたり、たたく、壊したりと暴力的になる」で、85%が「日常生活がこれ以上続けられないレベル」あるいは「日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル」であると回答した。このほか、「日常生活がこれ以上続けられないレベル」あるいは「日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル」であるという回答が多かった症状は、「徘徊するようになる」(82%)、「突然叫ぶ」(78%)で、こうしたBPSDの症状が日常生活の中で大きな負担となっている様子が伺えた。
内門氏によると、認知症と診断された人が暴力的になったり、徘徊したり、突然叫ぶといった行動をとる場合、認知症に伴うBPSDの可能性が考えられるという。BPSDにどのような症状があるかをあらかじめ知っておくことで、介護者は気持ちの準備ができ、身体的・精神的な負担の軽減につながるとされている。BPSDにはほかにも、もの盗られ妄想やうつ、不安、焦燥、興奮、幻視・幻聴などさまざまな症状が含まれる。これらの症状はすべての認知症患者に現れるわけではなく、個人差があるが、いつ現れてもおかしくないという。
○「BPSD」への理解が不足している現状
BPSDの各症状が、アルツハイマー型認知症に伴うものであると思うかを聞いたところ、「何度も同じ質問を繰り返すようになる」については39%がそのように認識しており、最も多い結果となった。一方、その他の症状については、20%程度あるいはそれ以下にとどまり、BPSDの各症状がアルツハイマー型認知症に伴うものであると認識している家族介護者は少ないことが分かった。
介護者が特に困っている3つの症状においても、「徘徊するようになる」は17%、「物を投げたり、たたく、壊したりと暴力的になる」は10%、「突然叫ぶようになる」は9%と、アルツハイマー型認知症に伴うものであるかもしれないという認識が乏しい結果だった。
内門氏によると、在宅医療の現場では、認知症の患者が突然物を投げたり、大声で騒ぐといった行動は珍しいものではないという。内門氏自身も、診療中に水をかけられた経験があるとのことで、これもBPSDの一例とされる。
こうした症状を単に「困った行動」と捉えるのではなく、「認知症による症状かもしれない」と気づくことが重要であると内門氏は述べている。アルツハイマー型認知症によって、BPSDが現れることがあるという事実を介護者が知っておくことで、困った行動に対して「もしかしたら病気の症状かもしれない」と気づくきっかけになる。その気づきがあれば、かかりつけ医に相談したり、必要に応じて専門医の受診につなげることができるかもしれない。
○「BPSD」の正しい理解と接し方は
適切なケアや治療によってBPSDが改善する可能性があると思うか聞いたところ、BPSDの各症状について改善する可能性があると回答した人は1割未満という結果で、9割以上が、改善する可能性はないと思っていることが分かった。困った症状が出現していたとしても、「認知症と同様に悪化するしかない」(64%)、「年齢のせい」(55%)と捉えている人も多い状況が伺える。
内門氏によると、介護者の適切なケアや治療によって、認知症による症状や行動が改善できるケースもあるという。認知症の本人の気持ちに寄り添って対応することが基本であるが、BPSDがある場合、それが難しいこともある。だからこそ、BPSDにはどのような症状があるのかを事前に知っておくこと、そして専門家の力を借りながら対応していくことがとても大切だと述べている。
内門氏のクリニックでも、待ち時間が長くなることで落ち着かなくなり、騒いでしまう患者が時々いるという。しかし、BPSDについて理解している家族が付き添っている場合には、そうした場面でも優しく、落ち着いた態度で接しているという。スタッフも平常通りに接することで、次第に患者本人も落ち着きを取り戻していく。
このように、症状と対応法を知っておくことで、介護する側も気持ちの余裕を持って接することができ、結果として、本人の安心にもつながる。内門氏は、こうした困った行動を「仕方がない」あるいは「年齢のせい」で終わらせず、適切な対応やケアによって改善の可能性があることを、より多くの人に知ってもらいたいとしている。

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