俳優・仁村紗和...芝居に正解なし 終わらぬ戦いに無限大の熱量注ぐ

2025年4月22日(火)6時0分 大手小町(読売新聞)

芯の強さを感じさせる目元が印象的な俳優、仁村紗和さん(30)。デビュー10周年を迎えた昨年、30代に突入した。テレビドラマを中心に活躍する現在までの道のりについて「一つも飛ばすことなく、一段一段上がってきた感覚でいます」と振り返る。

「特殊な業界でも普通の感覚を忘れず、しっかりと地に足をつけていたい」=吉川綾美撮影

芸能界に入ったのはスカウトがきっかけです。出身は大阪府枚方市で、東京に遊びにきた高校時代のことでした。もともと好奇心が旺盛な性格。知らない世界でも「面白そう」と自然に興味がわいてきました。

一人で上京してからは、アルバイトをしながらオーディションをたくさん受けました。お芝居の経験はなかったけれど、戸惑いはあまりなくて。父の影響で中学時代から習っていたストリートダンスを通じて、自分を表現することに臆してはいけないなと思っていたんです。それに、人見知りもしないし、どこでも寝られるタイプ。初めての場所でも、自分の居場所を見つけるのが得意なんだと思います。

つらい経験や大変な時期があっても、それが当たり前だと思っていた。この経験は自分が成長するために必要なんだ、って思いながら困難に立ち向かっていました。自分でもすごいガッツがあると思います。

多くの方に知ってもらえるきっかけになった作品は朝ドラ「おちょやん」でした。オーディションに受かったと電話で聞いた時、うれしくてキッチンで跳びはねたのを覚えています。

自分の心の持ち方が変わるきっかけになった作品でもありました。お芝居が好きな役者さんが多い現場で、休憩時間に話したことを「やってみよう」って撮影で試してみることもあった。作品を愛して、現場を大事にすることで生まれるものが、こんなにたくさんあるんだと教えてもらいました。

今でも現場でのコミュニケーションはすごく大事にしています。そこから生まれるものって本当に無限大な気がするし、チームですからね。

10年お芝居をやってきて、わかったことは「わからない」ってこと。いろんな見方があるし、正解はない“生もの”です。「ああすればよかった」とか「なんでできなかったんだろう」って毎回思うけど、これは終わらない戦いなんだろうな。

ドラマはどんどん新しいものが放送されますが、流れ作業のようには仕事をしたくなくて、モチベーションと熱量を保つために頑張っているところです。先輩方に話を聞いてみると、皆さんそれぞれ違うモチベーションがあるみたい。私自身はやっぱり、好きっていう気持ちが一番大きいのかなって思います。お芝居がわからないのも、だからこそ楽しいのかもしれません。

20代まではいろんな経験をして、自分の好きなものや場所、考え方を見つけられたと思います。今思うと、変に構えたり閉じこもったりしなかったのも、いろいろなものに出会って自分を知るためだったのかなって思うくらい。30代は好きなことや得意なことをどんどん伸ばしていきたいし、それがまた何かにつながればいいなって思います。

【取材後記】

「好奇心旺盛で人見知りしない」という言葉通り、気さくに接してくれた仁村さん。1994年生まれという共通点もあり、記者もかつて夢中になったシール帳の話は大いに盛り上がった。

どんな言葉にも、俳優として一歩ずつ歩んできた実感がこもっていて、誠実で前向きな人柄が伝わってきた。中でも10〜20代を「自分という人間を少しずつ知っていく時期だった」と語っていたのが印象的だ。

自分は何が好きで何が苦手なのかを知ると、人生の楽しみ方がわかってくる。若さに価値を見いだす考え方が根強く残る中、年を重ねるのが楽しみになる、すてきな考え方だと思った。

記者も最近、年々人生が楽しくなっていくと感じていたところ。仁村さんのように軽やかに“大人”を楽しむ人の姿を、これからも伝えていきたい。(読売新聞文化部 石塚恵理)

「30代の挑戦」は、各界で活躍する女性たちに、キャリアの転機とどう向き合ったかを読売新聞の同世代の女性記者がインタビューする企画です。

プロフィル仁村 紗和(にむら・さわ)1994年生まれ。大阪府出身。2014年デビュー。NHK連続テレビ小説「おちょやん」、NHK夜ドラ「あなたのブツが、ここに」、テレ東系連続ドラマ「SHUT UP」など出演多数。フジテレビ系連続ドラマ「あなたを奪ったその日から」(月曜午後10時)に出演中。

大手小町(読売新聞)

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