地域で「自治」を改めて問い直すLocal Coopが作る新しい暮らしのかたち

2025年4月23日(水)12時0分 ソトコト



今回は、クリプトヴィレッジのメンバーでもある本間英規さんにお話を伺いました。


本間さんは、Web3領域でのプロジェクトに携わる傍ら、「Local Coop」という地域共創の取り組みにも深く関わっていらっしゃいます。ブロックチェーンという最先端のフィールドと、地域の暮らしという素朴で力強い現場。そのどちらにもバランスよく目を向け、軽やかに行き来しているのが本間さんの大きな特徴です。


とはいえ、ご本人のスタンスは決して声高ではなく、むしろ静かに、丁寧に場に寄り添う姿が印象的です。その土地の人たちと自然に関係を築きながら、小さな変化の兆しを見つけ、必要なタイミングで手を差し伸べる。そんな姿勢が、多くの現場から信頼を集めている理由のひとつではないかと感じています。


今回のインタビューでは、本間さんがどのような経緯でこの道に入り、地域とテクノロジーの交差点に立つようになったのか。そして、活動の中で出会った印象的だった出来事や考え続けているテーマについても、じっくりお話を伺っていきます。


第二の自治システム Local Coopとは – 山古志と月ヶ瀬の共通点


クリプトヴィレッジ:そもそもLocal Coopとはどういう取り組みなのでしょうか?どういった課題から生まれた取り組みなのか教えてください!


本間:Local Coopは、ひとことで言えば『人口が減少してもそこで暮らし続ける為の仕組み』です。もしくは、自分が暮したい地域で暮らすことを選択できる自由や、地域に残る自然環境や文化といった小さくて多様な価値を残していく為の取り組みとも言えます。


背景としては、人口減少によって公共サービスが維持できなくなり、地域で暮らし続けることができなくなるのでは?という課題意識があります。水道の蛇口をひねれば水が出てきて、ごみは回収され、道路の穴は補修される。わたしたちは、こういったサービスをあまり意識することもなく、当たり前のように利用しているかと思います。(自戒も含め、私もそうです。)


当たり前のことですが、これらのサービスは税金によって運営(もしくは補助)されています。人口減に伴い税収減が見込まれる自治体では、こういった公共サービスが維持できなくなる可能性があるのです。すでに、過疎化が進んでいる地域では公共交通の停止や行政窓口の縮小など、自治体としての機能が縮小していますね。また、民間企業が提供するサービス・商品も同様です。人口が少なくなった結果、民間企業は経済的合理性の観点から撤退を余儀なくされてしまいます。スーパーが撤退し買物難民が発生しているというニュースも目にすることも少なくありません。


これらはもちろん、公共サービスを縮小する自治体が悪いわけでも、撤退した民間企業が悪いわけでもありません。人口減少という構造的な問題によって、暮らしたい場所で暮らし続けることが難しくなる未来がやって来るのかもしれないのです。


だからこそ、わたしたちは暮らし続けたい地域を自分たちで守ること、すなわち、「自治」を取り戻す必要があります。それを支えるための仕組みが「Local Coop」です。



 自治体のサブシステムとして「Local Coop」を立ち上げ、自律分散型の社会を目指す。


クリプトヴィレッジ:ありがとうございます。本間さんはNishikigoi NFTでも活動をされていますが、新潟県山古志とLocal Coopの奈良県月ヶ瀬で似ている特徴、あるいは大きく違う点はあったりしますか?また、月ヶ瀬ならではのユニークな特徴があればぜひ教えてください。


本間:お話ししたLocal Coopの実装を先行的に進めているのが、私が暮らしている奈良の旧月ヶ瀬村です。あえて、「旧」と表現しましたが、月ヶ瀬は山古志同様にいわゆる「平成の大合併」で大きな自治体と合併された旧村です。そういう意味では、どちらの地域も自分たちの地域を愛し、そこでの暮らしに誇りを持っている方が多いように思います。


一方で、産業や風土は異なっているように感じます。月ヶ瀬は梅林と茶が有名で、日本で初めての名勝地にも選ばれたように古くは観光地としても知られていました。今も3月の梅の時期は多くの観光客の方で賑わっています。


地域課題を乗り越える – 現場で見つけた答え


クリプトヴィレッジ:具体的な取り組みとして、買い物支援サービス「おたがいマーケット」や資源回収ステーション「MEGURU STATION」などがありますが、これらの経緯や運用されてみての反応についてぜひ教えてください!


本間:月ヶ瀬で進めている取り組みとしては、まず買い物支援サービスの「おたがいマーケット」があります。これは郵便局の配達ネットワークを活用することで、通常であればネットスーパーが対象外になるような地域でも、地域の拠点まで取りに来てもらう前提で、利用できるようになるサービスです。市街地まで出ないとならない日常の買い物が地域でできるようになると同時に、受け取り場所をあえて集約することで住民同士のコミュニケーションが生まれるよう設計しています。


資源回収ステーション「MEGURU STATION」は元々、地域内で36箇所あった資源の回収場所を6箇所まで減らして効率化を図った上で、24時間365日出せるようにすることで利便性も確保しました。場所を集約したことと、お昼や夕方の時間にも来れることで、ただの資源回収ステーションが住民同士で顔を合わせる場所にしたいという狙いがあります。もちろん、回収場所が減ることで面倒だという声もありましたが、慣れてみると「いつでも出せて便利」という声をいただくことも多いです。


また、今まで奈良市という大きな単位で資源を回収売却していたのを、月ヶ瀬という単位で売却できるのも大きなメリットです。頑張って分別して集めた資源の売却益を地域に還元し、今後、地域の中で使用用途を意思決定する手法を確立したいと考えています。



各地区に設置されているMEGURU STATION


クリプトヴィレッジ:私もこのアイデアを聞いたとき、非常に関心しました。とはいえ、現場では様々な問題に直面するかと思います。このLocal Coopで直面した「いちばん地味だけど根深い困難」などありましたか?


本間:私自身を含め、移住者として外からきた人が中心となってプロジェクトを進めていることですね。もちろん地元の方々や行政のみなさんとも連携はしているのですが、「よそ者が急にやってきて、何か勝手にやろうとしているのでは?」という声を聞くこともありました。


わたしたちとしては、何よりも対話を重視したいと考えています。自治会の会合に顔を出すだけでなく、「自分ごと化会議」という形式の住民会議を開催し、移住者の私たちが一方的に提案するのではなく、住民の方々の声をきちんと拾う努力を続けています。


また、移住者とはいえ、私たちも地域の一員として務めを果たそうと考えています。地元の行事やお祭りに積極的に参加したり、地域の草刈りなどの作業にも加わったり。「外から来た人間」ではなく、「いまはここで暮らしている仲間なんだ」と感じてもらえるように、試行錯誤を重ねています。そうした取り組みを通じて顔が見える関係性になって初めて、資源回収や買い物支援といった新しい取り組みを実現できるんじゃないかなと感じています。



無作為抽出で選ばれた方が参加する住民会議「自分ごと会議」


未来の地域づくり – Local Coopの次なる展開


クリプトヴィレッジ:今後の展望や、さらに取り組んでいきたいこと、また他の地域への展開などについてお考えがあればお聞かせください。


本間:今後はまず「月ヶ瀬の中でこの仕組みを確立させ、地域に必要なものとしてしっかり根付かせる」というのが第一歩だと考えています。そのうえで、月ヶ瀬で始まったこの取り組みを、山古志はじめ、ほかの中山間地域にも横展開できると良いなと考えています。人口減少や公共サービスの縮小という課題はこれからますます多くの自治体や地域で顕在化していくはずです。住民自治を取り戻して自分たちの暮らしを自分たちで守っていくモデルを確立できれば、行政だけに頼らなくても地域が生き残っていく道が開けるはずです。今までは難しかったことも、テクノロジーを含めた新しい要素を掛け合わせれば、ローカルでも多様な暮らし方を実現できますし、あらゆる地域が自走できる可能性をもっと感じてもらえると思います。


さいごに


地域の未来を形づくるのは、制度や技術だけではなく、そこに関わる「人」の存在です。そして、「Local Coop」という仕組みは、あくまできっかけに過ぎないのだと思います。それを地域に根づかせ、意味あるものとして育てていくには、「誰かの声にちゃんと立ち止まる人」の存在が不可欠だと、このインタビューを通じて改めて感じました。本間さんのように、現場の声に耳を澄ませながら、一歩ずつ丁寧に関わっていく姿勢が、地域に静かで確かな変化を生んでいくのだと思います。


この取り組みが今後、月ヶ瀬だけでなく多くの地域に広がっていく中で、そんな存在が少しずつ各地で増えていくことこそが、持続可能な「第二の自治」を支える土台となっていくのだと思います。


今回のインタビュイーのご紹介





本間英規


クリプトヴィレッジのメンバー。山古志ラジオでは日曜パーソナリティを務める。Local Coop大和高原プロジェクトでもPMとして、持続可能な地域未来の実現に取り組んでいる。



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