フライパンを持つと肩が痛い人は要注意…肩の「痛み」「コリ」はなぜ起こる?《ポイントは「胸郭」だった》

2025年4月25日(金)7時0分 文春オンライン


「手を上げられない」「肩こりのだるさ」はなぜ発生する? TSOC北参道院長でハワイ大学客員教授の菅谷啓之氏が、肩の構造とその健康を考える上での重要なポイントについて解説します。



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肩の関節の形状は……?


 加齢とともに、痛みだけでなく、凝りなど不定愁訴を引き起こすのが肩です。



肩のアンチエイジングのポイントは「胸郭」だった(写真はイメージ) ©アフロ


 肩の関節は体幹において大事な役割を果たしていますが、他の関節と比べて、その造りが極めて不安定なのが特徴です。


 形状は、「ボール&ソケット・ジョイント」と呼ばれ、丸いボールをお椀が包むような構造になっています。たとえば、同じ構造の股関節は、大腿骨の最上部にあるボール部分を、骨盤側の「寛骨臼(かんこつきゅう)」というお椀部分がしっかり包み込む形状で、立てば上から重心もかかって極めて安定する造りです。


 それに比べて肩は、上腕骨のボール部分と、肩甲骨側の「関節窩」というお椀部分が接してはいますが、この2つの骨を直接つないでいる骨は鎖骨だけ。しかも上からの荷重をほとんど受けていない。周囲の軟骨や靭帯や筋肉の力を借りて、ようやく「関節」としての機能を維持できる構造なのです。そのため、骨の位置がズレたりすることで、痛みや動きが悪いなどの問題が生じます。


ポイントは「胸郭」


 ためしに肩甲骨に意識を集中しながら「万歳!」をしてみてください。思っていた以上に肩甲骨が動くことに気付くと思います。


 生まれてきたときは、この複雑な構造が見事に成立した状態ですが、年を取るとその力関係が崩れます。「手を上げられない」「何もしなくても肩が痛む」などの症状、さらには「肩こりのだるさ」など不定愁訴も、多くがこのメカニズムで発生しているのです。


 これらを考慮したうえで、肩のアンチエイジングを考えると、「胸郭」がポイントになります。


 胸郭とは、胸椎や肋骨など胸をとりまく骨格のことです。中高年になると、胸郭の動きが悪くなり、それに連動して肩甲骨をうまく動かせなくなります。


 その結果、上腕骨と肩甲骨を繋ぐ4つの筋肉のうち、骨との繋ぎ目にある腱板が劣化して(退行変性)、切れやすくなる。こうなると、ちょっとした外傷やストレスが加わっただけで「腱板断裂」したり、いわゆる「五十肩」を起こしたりします。


「腱板断裂」は、その名の通り腱板が切れてしまう病態です。ただ、完全に切れてしまうことばかりではなく、部分的な断裂もあります。


 しかも、断裂したからと言って必ずしも痛みが出るわけでもないのが特徴です。ある調査では、腱板が完全に切れている人のうち20.7%は痛みを感じていない——という結果が出ています。無症状のままなら、他の筋肉が働き、生活には困りません。


 ただ、痛みが出てしまうと日常生活に影響が出ます。手を上げるのがつらいので、電車やバスのつり革につかまりづらくなるし、重いものを持ち上げられなくなります。


 一番分かりやすいのが、鍋やフライパンを持って料理をする動き。腰のあたりの高さで腕を動かす作業は、じつは肩に腕の重さがかかりやすい。料理をするときに肩に痛みが走る人は、腱板断裂を疑った方が良いでしょう。


 腱板断裂は50歳以上に多いものの、40代で起きても不思議ではない病態。中高年の女性に多いのが特徴です。



※本記事の全文(約3500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」と、「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(菅谷啓之「 【肩】ポイントは胸郭。「胸張り」で柔らかく 」)。全文では、肩のアンチエイジングに効果的な体操を図解入りで解説してます。



(菅谷 啓之/文藝春秋 2025年5月号)

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