落花生みたいな小惑星をNASAの探査機ルーシーが激写!太陽系の秘密に迫る

2025年4月25日(金)20時0分 カラパイア


Credit: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/NOIRLab


 宇宙に浮かぶ巨大な落花生? 2025年4月20日、NASAの「ルーシー探査機」が、2度目の本番前の模擬接近飛行(フライバイ)を行い、「ドナルドジョハンソン小惑星」を撮影することに成功した。


 その形はまるで落花生のように中央にくびれを持っている。複雑な地形を持っていたことがわかり、太陽系の成り立ちに迫るヒントも隠されているという。


 これにより、ルーシー探査機の高度な観測能力が証明され、本番となる「木星トロヤ群小惑星」の調査に向けて幸先のいいスタートとなった。


落花生のようなユニークな形のドナルドジョハンソン小惑星


 NASAの探査機ルーシーは、木星の軌道付近にある「トロヤ群小惑星」を調査することを目的として、2021年10月16日に打ち上げられた。


 これらの小惑星は太陽系の形成初期から残る“化石”のような存在で、惑星誕生の謎を解く鍵になると考えられている。


 探査機の名前は、318万年前の化石人類「ルーシー」[https://karapaia.com/archives/52332812.html]にちなんでおり、化石人類「ルーシー」の名は、ビートルズの楽曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」にちなんで命名されている。


 ルーシー探査機がドナルドジョハンソン小惑星のユニークな形状を捉えたのは、ディンキネシュ小惑星[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%83%A5_(%E5%B0%8F%E6%83%91%E6%98%9F)]に続く2回目の小惑星フライバイ(接近飛行)の最中だ。


 2025年4月20日、ルーシーは小惑星から960kmの距離まで接近し、ごく間近からその姿を撮影することに成功した。


 これまでの観測では、ドナルドジョハンソン小惑星は10日周期で明るさが変わることがわかっており、おそらく不規則な形状なのだろうと推測されていた。


 ところが実際に送られてきた映像には、想像以上にユニークなものが映し出されていた。なんと2つの天体が合体してできた「接触連星[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A5%E8%A7%A6%E9%80%A3%E6%98%9F]」だったのだ。


 そのため、連星がつながった部分は細くくびれており、ピーナッツが2つはいった落花生のように見える。



2秒間隔で撮影された画像をつなぎあわせたルーシー探査機が撮影したドナルドジョハンソン小惑星のタイムラプス/Credit: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL


太陽系惑星の成り立ちを知るヒントに


 こうした複雑な小惑星の形状は、太陽系初期における惑星の形成の様子を知る手がかりとなる。


 ルーシー探査機の主任研究者であるサウスウェスト研究所のハル・レビソン氏は、NASAのニュースリリース[https://science.nasa.gov/image-article/nasas-lucy-spacecraft-images-asteroid-donaldjohanson/]で次のように説明する。


こうした複雑な構造を詳しく調べれば、太陽系の惑星を形成した素材や、それらが衝突したプロセスについて重要なことがわかるでしょう(ハル・レビソン氏)


 ちなみにドナルドジョハンソン小惑星は、全長約8km、もっとも広い部分の幅が約3.5kmと、予想よりも大きなものだった。


 そのためルーシー探査機のカメラに収まりきらず、残りのデータは後から送られてくることになるという。



Credit: NASA/Goddard/SwRI/Johns Hopkins APL/NOIRLab


本番となる木星トロヤ群小惑星への飛行は2027年スタート


 今回の小惑星観測は、ルーシー探査機にとって本番前のリハーサルのようなもの。本来のターゲットは木星と軌道を共有する「トロヤ群小惑星」である。


 ルーシー探査機はこのまま一人旅を続け、予定では2027年8月に直径64kmほどの小惑星「エウリュバテス」に到着。


 その後も「ポリュメーレー」「レウコス」「オルス」「パトロクロスおよびメノイティオス」と、2030年代前半までトロヤ群の小惑星を巡る。



ルーシー探査機の本来のターゲットは、木星のトロヤ群小惑星だ/Credit: Southwest Research Institute


 幸いにして、今回のリハーサルでルーシー探査機の優秀さは証明された。NASAのルーシーミッションのプログラム科学者トム・スタトラー氏は、「ドナルドジョハンソン小惑星の最初の画像は、発見の推進力としてのルーシー探査機の驚異的な能力を改めて示しています」と語る。


 この探査機がトロヤ群小惑星に到達すれば、太陽系の歴史を紐解く”新たな窓”が開くと大いに期待できるそうだ。



トロヤ群は太陽系の惑星が形成されたときの名残だと考えられている/Credit: NASA’s Goddard Space Flight Center


ルーシーは未来の人類へのメッセージを運ぶタイムカプセル


 ルーシー探査機にはもう一つの役割がある。機体には特製の金属プレートが取り付けられており、その中には未来の人類に向けたメッセージ[https://karapaia.com/archives/52304153.html]が刻まれているのだ。


 このプレートには、物理学者アルバート・アインシュタインの名言や、天文学者カール・セーガンの宇宙観、人類の進化や未来に思いを馳せた詩人や作家の言葉、さらには子どもたちの声や現代の文化人たちのメッセージまで収められている。


 また、「ルーシー」という名前にちなみビートルズのメンバー4人とクイーンのギタリストであるブライアン・メイなどの言葉も収められている。


 プレートの左上にはルーシーの打ち上げ時点における各惑星の配置やNASAおよびミッションのロゴが描かれている。



メッセージが記されたルーシーのプレート image credit:Credit: Southwest Research Institute


 ルーシーは、かつて地球で生まれた知性の痕跡を太陽系の果てへと運ぶ使命のために、宇宙を漂う小さなタイムカプセルなのだ。


 このメッセージを読む存在が、未来の地球人なのか、地球外知的生命体なのかはわからないが、夢とロマンに溢れたルーシーの大冒険は、まもなく本番を迎えようとしている。


References: NASA’s Lucy Spacecraft Images Asteroid Donaldjohanson - NASA Science[https://science.nasa.gov/image-article/nasas-lucy-spacecraft-images-asteroid-donaldjohanson/]

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