投資で一喜一憂しないための「暴落」の考え方。コロナ禍の暴落で大損した金融ジャーナリストが平静でいられた理由は…【2025マネー記事セレクション】

2025年4月26日(土)6時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

2024年に『婦人公論.jp』で反響を得た「マネー」に関する記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年11月26日)
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金融庁が公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、2024年6月末時点のNISA口座数は2427万6789口座で、2024年3月末から約105万口座増加しました。そのようななか、記者や金融ジャーナリストとして活動する、カナダ出身のニコラ・ベルベさんは「投資にリスクはつきもの。だが、投資しないのはもっとリスクだ」と語っています。そこで今回は、ニコラさんのベストセラー『年1時間で億になる投資の正解』から、一部を抜粋してご紹介します。

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暴落はありふれたこと、避けられないこと、そして必要なこと


2020年に起きた新型コロナウイルス感染症に起因する市場の暴落によって、僕の運用資産はかつてないほど落ち込んだ。ほんの数週間で、数年分の給料に匹敵するほどの大きな穴が開いた。

それでも売却を考えることもなければ、不安で眠れなくなることもなかった。とはいえ自分に特別な才能があるとか、マゾの気があるとも思わない。

なぜ平静でいられたのか。それは株式市場の暴落はありふれた事象で、避けることはできず、また必要なものでもあると学んだからだ。

たとえば過去のデータが最もよくそろっているS&P500を見ると、1920年代以降、平均して年3回、5%の下落が起きている(1)。

さらに急激な下落も頻繁に起きている。過去100年を振り返ると、ほぼ16カ月に一度のペースで10%の下落が起きている。

では20%の下落はどうか。過去100年で見ると平均して7年に一度のペースで起きている。そして1950年代以降、S&P500の50%近い下落は3回、つまり22年に一度起きている。

「株式市場が乱高下すること」は周知の事実で、これほど頻発しているのだから、いまさら驚くに値しない。だがそれでも毎度のことのように投資家は驚かされている。

下落によるダメージは長続きしない


下落によるダメージは、通常長続きしない。たとえば第二次世界大戦以降、20%以内の調整であれば回復して下落前の状態に戻るまでの期間は平均4カ月だ(2)。

そして1974年以降にS&P500が10%以上下落したケースを見ると、底を打った翌月には平均8%以上、1年後には平均24%以上上昇している(3)。

金融史上最悪の惨事であった1929年の大暴落の後でさえ、市場は10年も経たずに回復している。

暴落直前の株価のピーク時にニューヨーク証券取引所に投資した不運な投資家も、市場が底を打ってから4年半後の1936年には失ったお金をすべて取り戻せたはずだ。

それが可能だったのは、大恐慌の最中ですら企業は株主に配当金として利益の一部を還元し続けたからだ。

市場に参加する「入場料」


市場の調整がこれほどつらいのは、それが罰のように感じられるからだ。何か悪いことをして、厳格な先生にお仕置きされるような気持ちになる。

だが市場の調整は罰ではない。市場に参加するための入場料のようなものだ。


(写真提供:Photo AC)

「タダで市場リターンを得られたためしはないし、今後もないだろう」。金融ジャーナリストで投資家のモーガン・ハウセルの言葉だ。

ハウセルは著書『サイコロジー・オブ・マネー──一生お金に困らない「富」のマインドセット』で、市場の調整はシステムのバグではない、と書いている。

投資資産の価値が下落する可能性を受け入れることは、長期的に資産を増やすのに必要な対価だ。調整なくしてリスクなし。リスクのないところにリターンもない。

だが労せずに報酬だけを得ようとするのが人間の本能だ。

その結果、投資家は「対価を払わずにリターンだけを得ようと小細工を弄し作戦を練る。要するに、株を売買するのだ。次の不況が始まる前に売り抜け、次の上昇相場が来る前に買おうとする。(一見すると)論理的な行動だ。だがお金の神様は対価を払わずに報酬だけを得ようとする者をよく思わない」(4)

成功している投資家の共通点


ポートフォリオ(資産の構成)・マネージャーのマーク=アンドレ・タルコットは、成功している投資家には共通点があることに気づいた。周囲がみなパニックになっていても、迷わず運用を続けていることだ。

タルコットは経済的成功者の例として、起業家や不動産オーナーを引き合いに出す。

「起業家は毎朝目覚めた途端に会社の時価総額を計算したり、保有する不動産の価値を調べたりはしない。事業の利益や売上状況を見る。結局のところ、それが事業の価値につながっていくからだ。彼らは長期的にモノを考える。会社が株式市場に上場したからといって、そうした姿勢を変える必要があるだろうか。株式市場に投資する人々の問題は、資産価値の変化が毎分、毎秒見えてしまうことだ。スタートアップ企業や不動産の価値は毎日算出されるわけではないので感情に影響を与えない」

重要なのは経験だ。株式市場の変動に最も弱いのは、比較的年を取ってから投資を始めた人、それも遺産相続や事業売却などでまとまった金額を投資しはじめた人だ、とタルコットは指摘する。

「こうした人たちは相当な金額を手にして、それをいっぺんに投資する。しかし市場が上がったり下がったりすることに免疫がない。急な変化が起きるたびにパニックになる。だから私の仕事の8割は、彼らのメンタルを管理することだと思っている。残りの2割がパフォーマンスの管理だ」

結論を言うと、成功の対価を払おう。ポートフォリオに余計な手出しをするのはやめよう。運用資産の価値は増えることもあれば減ることもある。一喜一憂しても意味がない。

言うまでもなく、このアドバイスが有効なのは市場を幅広くカバーする、手数料の低いインデックスファンドかETFを保有している投資家だけだ。

こうしたファンドには数百、数千社の株式が含まれている。歴史を振り返れば、株式市場は常に上昇する道を見いだしてきた。

一方、個別企業のなかには結局復活せず、最終的に株式の価値がゼロになったところも多い。個別株への投資が市場全体への投資よりリスクが高い理由の一つはここにある。

・参考文献
(1)Dana Anspach, “How to Handle Stock Market Corrections,” The Balance, December 1, 2020.
(2)Thomas Franck, “Here’s how long stock market corrections last and how bad they can get,”CNBC, February 27, 2020.
(3)David Koenig, “Market Corrections Are More Common Than You Might Think,” Charles Schwab Intelligent Portfolios, February 25, 2022.
(4)Morgan Housel, The Psychology of Money, Harriman House, 2020, p. 160.(『サイコロジー・オブ・マネー──一生お金に困らない「富」のマインドセット』モーガン・ハウセル著、児島修訳、ダイヤモンド社、2021年)

※本稿は、『年1時間で億になる投資の正解』(新潮社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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