人手不足が深刻な建設業界の貴重な戦力に...現場で働く女性の声は

2025年5月2日(金)9時39分 大手小町(読売新聞)

建設業界はかつて、「きつい」「汚い」「危険」の「3K職場」と見なされ、体力の劣る女性には縁の薄い仕事と思われがちでした。しかし近年は、「女性社員にやりがいを持って長く働き続けてほしい」と、女性の就業支援に力を入れる企業が増えています。建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する「アンドパッド」(本社・東京)が4月22日に開いたイベントで、建設現場で働く女性たちの肉声を聞いてきました。

熱気あふれる特別座談会の様子

国土交通省が2024年に全国1609社を対象に実施したアンケート調査では、建設業で働く26万8234人のうち、女性は17%の4万4854人と少数派でした。それでも、長らく深刻な人手不足にあえいでいる業界では、女性は貴重な戦力として評価されるようになってきています。

こうした実情を背景に、「Women AND Construction 特別座談会〜踏みだそう。建設業で、もっと輝く自分へ。〜」と題するイベントが都内で開かれ、女性経営者と工務店などで働く女性の計7人が登壇。約100人の聴衆を前に、建設業界の女性の働き方などについて意見を交わしました。

第1部では、女性経営者3人が登壇しました。

「オフィスHanako」(新潟市)の代表取締役・渡辺さゆりさんは、「女性建築士と造る注文住宅」を売りに14年前に起業しました。同社では、社員50人のうち8割近くが女性。営業、設計、マーケティングなども女性社員が担当しています。渡辺さんは「平均年齢が32、3歳。『お子さんができた、おめでとう!』という場面も多く、彼女たちを支えるために、時間単位で有給休暇を取れるようにしました。平日4日間は昼食に給食を実施しており、余ったら夕飯用に持ち帰りも可としています。少しでも女性たちの負担を減らすことができればと思ったからです」と話しました。

「不二電気工事」(兵庫県尼崎市)の専務・藤田智香さんは「四半世紀前ならどの現場に行っても女性の姿が見られなかったのですが、今は違います。職人さんたちも優しいし、彼女たちがいなかったら仕事が回らないほど。私は女性社員とランチ会などを開いて、体調への気遣いがどの程度必要かなどをさりげなく聞いています。せっかく採用したなら、できるだけ長く働き続けてほしい。貴重な戦力です」と強調。

「近藤建設」(富山市)の3代目社長・近藤裕世さんも「女性たちの持つ繊細な観察力と共感力に助けられています」と話していました。

新卒や中途採用で建設業界に飛び込んだ女性たち

第2部で登壇したのは、新卒や中途採用で建設業界に飛び込んだ女性たち。工学系の大学を卒業後、「上村建設」(福岡市)に入社し4年目の佐々木麻奈さんは、「マンション建設の施工管理を任せてもらえるようになって、現場の面白さを実感しています。身長146センチと小柄な自分でも信頼してもらえるように2級建築施工管理技士を取り、次は1級を目指します」ときっぱり。仕事では残業や休日出勤が必要な時もあるものの、優先順位をつけて取り組んでいるそうです。

「越後天然ガス」(新潟市)に入って12年目の小倉綾夏さんは昨年、育児休業をして、仕事に復帰したばかり。ガス本管工事の設計・施工管理などの業務を担当しており、「社会基盤として皆さんの当たり前の生活を支えるガスに携わるようになって、自分が設計したものが形になっていく醍醐味(だいごみ)を感じています。筋力不足など性差はありますが、これからもたくさん現場に出たい」と意欲を語っていました。

業界の印象について、登壇者が口々に語ったのは、ハラスメントに対する意識が高まっていることや、休暇制度が整いつつあること。「毎日18時に仕事を終えて、残業があっても20時には会社全体で消灯されてしまうので、それ以上、残業のしようがない」などと、労働環境の改善を強調する人もいました。

イベントを観覧した女性たちからは、「きめ細かい配慮をしている会社があると知って、とても参考になりました」「今でも、施主様にトイレを借りるわけにはいかないので、現場が決まったら近くのコンビニをチェックするようにしています。業界では、女性用の更衣室やトイレが不十分なのが現実。それでも、今日の話を聞いて勇気づけられました」といった声が聞かれました。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【参考資料】▽令和6年度 建設産業における女性定着促進に関する実態調査▽建設業で活躍する女性7名が集結 特別座談会

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