女性「体の関係NO」vs男性「必須」の水かけ論…アラカン世代に月9「続・続・最後」のセリフが沁みる深いワケ

2025年5月3日(土)10時15分 プレジデント社

「続・続・最後から二番目の恋」フジテレビ新月9ドラマ【公式】Xより

2025年春ドラマで中高年の間で話題になっているという「続・続・最後から二番目の恋」。なぜ人気なのか。ドラマウオッチャーのフリーランスライター・東野りかさんは「現在、一人暮らしをしながらパートナー探しをしている中高年のある視聴者は、このドラマのセリフや展開に大いに共感している」という——。

■定年前にキャリア集大成の花火をぶち上げたい!


「主人公に起こる出来事がリアルすぎて心がザワザワする」
「フィクションとわかりつつもセリフの一つひとつが胸に沁みる」


今、ドラマウオッチャーの間で話題を呼んでいるのが、「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ、以下「続・続・最後」)だ。


「続・続・最後から二番目の恋」フジテレビ新月9ドラマ【公式】Xより

小泉今日子中井貴一のダブル主演。2012年に第1シリーズ、14年に第2シリーズが放送された。どちらもロケ地の神奈川県・鎌倉市に“巡礼者”が出没するほど、好評を博した。過去2シリーズは木曜の10時に放送されていたが、今回は局の看板である“月9”に格上げされた。


かつての月9ドラマのような高視聴率は望めないが、見逃し配信のTverでは視聴ランキング上位に入っている。


小泉演じる吉野千明(千明)は59歳、中井演じる長倉和平(和平)は63歳というアラカン世代になり、前シリーズのメインの視聴者層と年齢がほぼ重なる。それゆえ、なおのことストーリーへの共感度が高くなるのだろう。


中居正広氏や石橋貴明氏による性加害問題、組織としてその事実の隠蔽を図ったことで、多くのスポンサーが次々と撤退したフジテレビにとって、ほとんど唯一の明るい話題と言えるかもしれない。


さて、「続・続・最後」のストーリーを少しだけ紹介したい。



岡田 惠和『続・続・最後から二番目の恋』(扶桑社文庫)

千明はテレビ局のジェネラルプロデューサー。定年を1年後に迎え、「60歳以降の人生をいかに生きるか?」が課題だ。会社に残る道があるが、先行きは不透明。部下から老害呼ばわりされぬようにと怯える一方、自分が制作したドラマが局の代表作と認識されていないことに怒りを覚える。その怒りが原動力になり、キャリアの集大成として、新たなドラマ制作への情熱を燃やす。


和平は鎌倉市役所を部長職で定年退職した後、再雇用でヒラ職員に。かつての部下が上司になり、その部下から無理難題の解決を押し付けられることに。しかし、人から頼られると嫌とは言えない(むしろ喜びを感じるタイプ)性格の和平は、まんざらでもない様子。なぜか未亡人にモテる。


そんなとき和平の同期が亡くなり、千明の上司も突然死。死がすぐ近くに忍び寄っていることを実感する。


■ハンサムなイケおじとの邂逅で、テンションアップ


千明が動でアクティブ派とするなら、和平は静で実直。正反対のキャラゆえか相性は悪くない。千明と和平は住む家がお隣同士だ。毎朝つまらない言い合いをするも、それがルーティンとなり心地いい。気軽に酒を呑みに行って深い話もする。「どういう形であれ、一生そばで暮らしていこう」と誓い合うなど、一風変わった関係性で現状は進んでいる。


そんななか、千明は三浦友和演じる、ハンサムなかかりつけ医に淡い恋心を抱く。これでテンションが上がった千明は「定年も還暦もどんと来い!」と和平に宣言。この二人の不思議な関係性に、主に女性視聴者が共感している。


■体の関係なし、何かことが起きれば寄り添いあえる関係がいい


今シリーズの第1話では2020年のコロナ禍で千明が罹患するシーンがある。その時、和平は隣家の千明宅のへすぐさま行き、一晩中彼女を見守る。独身女性にとって、こんなに安心できる存在の男性がいるだろうか。


50代半ばのバツイチ女性A子さんはこの展開を踏まえ、自身の人生についてこう話す。


「たぶん独身を通すような気がするけれど、完全にパートナーを諦めたわけじゃないです。ウマが合って、時々は食事をして他愛もない話ができて。でも、完全同居は気づまりだから、近所に住む男性っていうのもありかな。ただし、体の関係はなし。自分の体の変化もあるし、今さらそういうことをするのが面倒くさいんです。まさに千明と和平の関係性が理想!」


A子さんは千明と同じマスコミ業界で働く。老後の生活に不安を覚えるが、勝手気ままな暮らしを送ってきたので、この先誰かと共同生活をするのは難しいと考える。千明と和平のようなスープの冷めない距離で、肉体関係のないステディがほしいという。


写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

しかし、そううまくいくものなのか?


閉経後の女性の中には、さっぱり性欲がなくなる、あるいは交渉があっても最小限に抑えたい人も少なくない。一方の男性側は、アラカンとはいえ(否、70〜80代でも)、女性との性交渉を求める男性もいる。これは筆者周辺の人々の声を基にした仮説だが、男女の性に対する考え方の違いは50代以上になるとより鮮明になる。


では、A子さんのような願望を男性はどう思っているのか。60代で結婚歴のない公務員のB夫さんはこう言う。


「若い頃と違って、パートナーに精神的な安心感に重きを置いています。でも長年暮らした夫婦ならいざ知らず、独身同士で付き合っていてセックスがないなんて、考えられないです」


「精神的な安定感」の他に、付き合う女性に求めるものは何だろうか。根掘り葉掘り聞き出していくと、出てくる出てくる。本心は「料理上手、家事上手、できれば床上手で優しい人がベスト」と、まあ、昭和の価値観のままだ。


この聞き取りの概要をAさんに伝えたら、こう返ってきた。


「老後に一緒に暮らすならそんな面倒くさい男じゃなくて、女友達がいいかもしれないです。女性同士なら共感し合えるし、恋愛にありがちな変な駆け引きをしなくてもいいし」


そう、何歳になっても、恋に駆け引きは存在する。これがまた大人の男女の関係性の障壁となる場合もある。


■婚活アプリで繰り広げられるのは、イニシアチブ先取り合戦


B夫さんは目立った恋愛歴はないものの、なぜか「自分はイケてる」と思っているフシがある。彼がふだん会話する異性は、バーやスナックなどの接客業の女性。実際は年相応でも、プロの女性からの「若く見える」だの「シブい」だのという社交辞令を鵜呑みにしている可能性が高い。


「結婚はしたいんです。自分でいうのもなんだけど、公務員で安定しているから、結婚相手としていい“物件”ですよね。水商売の女性は、パートナーとして本気になれないし、結婚相談所はお金がかかりすぎるから、婚活アプリで相手を探すことにしました」(B夫さん)


ドラマ内で、日常生活の中で自然に未亡人にモテてる和平とは大違いのようだ。しかも、B夫さんは仮にデートにこぎ着けても、お茶代は割り勘にしている。付き合えば、ファミレスで1000円程度の定食ならば奢るのは可能。ただし、「会う」だけなら、たとえコーヒー1杯でもきっちり割り勘を貫くB夫さん。定年後の給料が大幅に下がることを考えて、無駄な出費は1円でも抑えたいからだそう。このような金銭感覚に加え、上から目線の持ち主でもある。


幸運にもアプリで女性と会えるとなった際も、落ち合う場所も、自分の住所の近くを指定してしまう。「よっぽど若くてかわいい子ならば考えますよ。でもそうでもない相手の家の近くまで僕が行くのは、“負け”な気がするんですよ」


何が負けなのかはわからないが、ただ会うだけなのに、奢るなんてバカらしいそうだ。「イケてる自分」はもっと価値があると内心思っているのだろうか。前出のA子さんはB夫さんの言動を冷静に分析して言う。


「そういう人、意外に多いかも、です。別に奢ってほしいとは思わないけど、会う場所はせめて2人の家の中間地点か、私の家からアクセスがいい場所にしてほしいですよ。交通費を払ってわざわざ男性の家の近くまで行くのはありえない。そういう男性は一事が万事、自分本位。こっちもよほどいい条件の男性とか、好みのタイプでない限り、下手に出るつもりはないです。女も男もどっちもどっちですね。年をとると純粋な恋愛は難しいですよ」


千明と和平と同世代のA子さんもB夫さんも、パートナーを求めているがうまくいかない。前途は多難だ。


写真=iStock.com/Dumitru Ochievschi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dumitru Ochievschi

■息子のような年齢の相手に、ピュアな恋心を抱く


もうひとり、中高年の恋愛にあるよくあるパターンを紹介しよう。30歳近く年下の男性と交際しているバツ2のC子さん(50代)だ。彼女はこれまで年下の外国人男性との恋愛を繰り返してきた。


「自分が利用されていると薄々わかっていても、相手にお金が必要と言われれば、お金を渡してきたこともありました。ある男性には黙ってお金を持ち逃げされたこともあり、その時はかなりつらかったです」


そんな傷心のC子さんの前に最近現れたのが、中米出身20代Dさん。「続・続・最後」で千明がふいに恋心を抱いた医師のように、たちまちテンションがアップした。


Dさんとは外国人と交流するアプリで出会った。インスタのダイレクトメッセージでやりとりを続けた結果「そのうち日本に行きたい」と彼が言い出し、本当に来日した。「びっくりしましたが、そのまっすぐな気持ちが嬉しくて」と感激する。


DさんはC子さんの家に転がり込み、ほどなく男女の仲になる。C子さんが食住の面倒を見る代わりに、Dさんは家の力仕事、掃除や洗濯などの家事を一手に引き受けている。現状、ギブ&テイクのバランスがいい。Dさんから金銭の要求も今のところはない。Dさんは貧しいカトリックの国出身のせいか、家族想いでまめで優しいのだという。


「私を見る目に曇りがないんです。おばさんを利用してやろうとか、騙してやろうとかそんなのはないです。それに年長者の私の言うことを素直に聞いてくれるし、スポンジのように吸収してくれる。同年代の男性にはない魅力ですよね」


明らかにのめり込んでしまっている様子のC子さんだが、越えなければいけない壁がある。Dさんは3カ月の観光ビザで来日しているので、近いうちに別れがくる。その後どうなるのか。


「その時はその時で考えます。今はこの恋の喜びに浸っていたいです」


刹那的なC子さんの幸せは続くのか否か。また、次の男性を探す旅に出るのか。


「続・続・最後」のテーマは、物事は自分の人生は思い通りにはならず、つらいことや泣いてしまいたいことも多いけれど、それでも人生は愛おしい——というもの。このドラマを支持する多くの中高年も、人生の終盤で日々もがいている。そして人生を“愛おしい”ものとするためには、誰と出会って、そして自分がどのような選択をするのか、それにかかっているように思う。


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東野 りか
フリーランスライター・エディター
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。
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(フリーランスライター・エディター 東野 りか)

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