スタイリスト・西ゆり子「服を変えれば、人生が変わる!でも、教えてくれる場所がない…私が『着る学校』を作った理由」【2025編集部セレクション】

2025年5月9日(金)12時30分 婦人公論.jp


人気スタイリストで『着る学校』の校長でもある西ゆり子さん(撮影:回里純子)

2024年上半期(1月〜6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年6月28日)
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テレビ番組におけるスタイリストの草分けとして、『電車男』『のだめカンタービレ』『セカンドバージン』『家売るオンナの逆襲』など、これまでおよそ200本のドラマに携わり、女優・俳優がドラマ内で身に着ける衣装のスタイリングを手掛けてきた西ゆり子さん。その西さんが2022年6月に、一般女性に向けて開校したのが『着る学校』だ。それまで芸能界を中心に仕事をしてきた西さんは、なぜ“普通の女性たち”に「服を着ること」を教えようと思ったのか。連載2回目以降は、『着る学校』で実際にレッスンを受けた生徒さんたちの体験談を紹介し、「服が持っている力」や「着る服を変えると、人生がどのように変わるのか」についてお話を伺った。(構成◎内山靖子 全5回連載/第1回) 

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一般女性のために『着る学校』を


30代の頃から『11PM』『なるほど!ザ・ワールド』などのテレビ番組で、女優やタレントといった芸能人のスタイリングを主に手掛けてきました。その後、ドラマや映画の仕事がメインとなり、登場人物の個性に合わせて衣装を選ぶ仕事はとてもやりがいがあったので、正直な話、一般の方のおしゃれに関しては「私の守備範囲じゃない」と思いながらずっと過ごしてきました。

それが60代になったとき、知人の紹介で、一般の女性のパーソナルスタイリングをお手伝いすることになったのです。そのときに感じたのが「着る服が変わると、その人の表情や生き方がこんなにも変わるのか」ということです。それまでグレーやベージュなどの大人しい色の服を着ていた方に、その人が本当は着てみたい!とおっしゃるピンクや鮮やかなブルーの色の服を選んであげると、顔つきがパッと明るくなって、別人のように表情がイキイキ輝く。「誰にとっても、服の力って、こんなにすごいんだ」。かれこれ45年以上スタイリストをやってきて、そのときに、あらためて服が持っているパワーを実感させられたのです。

とはいえ、その方が服を選ぶ際に毎回私がついていくわけにはいきませんし、日々の服は自分で選んでこそ楽しいのです。そのためには、心の鎧を外して本当に好きな服を選び、自分自身で「着る力」を身に着けていただかねばなりません。何事も基礎が大切なように、おしゃれに対する心構えやスタイリングの知識を知っておく必要があるのです。でも、ふと考えたら、そんなことを教えてくれる学校はどこにもありません。お料理教室や着物の着付け教室はたくさんあるのに、なぜ、服を着ることを教えてくれるところはないのだろう? そんな疑問を投げかけたところ、「じゃあ、『着る学校』をつくりましょう」と賛同してくれるスタッフがいて、私が71歳のときに『着る学校』を開講する運びになったのです。


スタイリングする西さん(『Life Closet』より)

おしゃれな女性が増えれば、日本の社会も変わる


おかげさまで、『着る学校』はこの6月で3年目となり、生徒さんの数も6,200人を超えました。私にとっても、70代からの新たな挑戦です。どんどんおしゃれになっていく生徒さんたちの姿を目の当たりにして、私自身もこれまで以上に大いに刺激を受けています。

この学校の基本コンセプトは2つ。ひとつは「着ることを楽しむ」。もうひとつは「着る力を身に着ける」ということです。日本の大人の女性たちは「無難」で「そつのない」装いをするのは上手ですが、自分の「好き」や「個性」を楽しむおしゃれは苦手な人が目立ちます。とくに、40代後半以降の方は、子育て中におしゃれのブランクがあったり、体型が変化してきたり、似合う服が変わってくるなどして、“おしゃれ迷子”になっている人がとっても多いでしょう。

でも、だからと言って、この先、一生おしゃれをすることを諦めてしまうのは、人生があまりにももったいない! そんな大人の女性たちに、もう1度、服を着るときのワクワク・ドキドキを取り戻してほしい。そのために、服の色や素材の選び方、コーディネートのバランスといった基礎知識をしっかりと身に着けていただき、ご自分の本当に好きな服をもっと素敵に着こなせるようになっていただくのが『着る学校』の校長である私の願いです。

具体的な例をあげると、例えば「色」について。最近は、カラー診断ブームもあって、自分に似合う色/似合わない色をもとに、服選びをする人も増えていますが、着る学校では「色はメッセージ!」と伝えています。服の色は、相手に瞬時に印象を与えるので、今日は自分の衣装でどんなメッセージを発したいか、そこから考え始めて、色で自己表現する手法を教えています。

人生100年時代、いくつになっても服を着ない日はありません。だからこそ、自分の好きな服を着ておしゃれを楽しめるようになれば、自分の生き方にももっと自信を持って、これから先の人生を前向きに歩んでいけるようになれるはず。そして、そんな素敵な女性が増えていけば、日本の社会ももっといい方向に変わっていくに違いないと私は思っているのです。

次回からは、実際に『着る学校』で学んでくださった生徒さんたちの体験談を紹介していきます。服がその人の人生にどれだけ大きな影響を及ぼしているのかを、きっとわかっていただけると思います。


生徒さんとの集合写真(写真提供◎西さん)

婦人公論.jp

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