【2025年6月引退】さよなら、カシオペア! 豪華寝台特急の思い出を懐かしの写真とともに振り返る

2025年5月18日(日)21時15分 All About

豪華寝台特急「カシオペア」が2025年6月末についに引退する。唯一無二の車両、運行スタイル、こだわりのサービスなど、その歴史と魅力を2007年当時の写真とともに振り返る。

豪華寝台特急として活躍した「カシオペア」が引退することとなった。北海道新幹線開業と引き換えに上野駅〜札幌駅間の運行は終了したが、クルーズトレインとしてJR東日本管内を不定期に走っていた。しかし、車両の老朽化もあって、2025年6月末をもって、ついにその雄姿は消えることとなる。
今回は、惜しまれつつ引退する「カシオペア」の思い出を、懐かしい写真で振り返ってみたい。

1. 1編成しかない虎の子の12両

「カシオペア」は専用のE26系客車12両によって編成されていた。動力のない客車なので機関車がけん引した(詳細は後述)。
上野駅〜札幌駅の所要時間は約16時間。毎日運行するには2編成必要だが、諸般の事情により1編成しか製作されなかったので、上野駅〜札幌駅は2日で1往復、週3回の運行だった。繁忙期は曜日に関係なく1日おきの運行で往復していた。
そのため、チケット入手は困難を極め、ツアーでの申し込みが確実だった。日頃、団体旅行は好まず、単独での鉄道旅行が多い筆者でも、珍しくJR東日本の「びゅうツアー」を申し込み、夫婦での旅となった。

2. 寝台の基本は2人部屋

「カシオペア」は大人気だった寝台特急「北斗星」のグレードアップ列車として企画された。したがって、オールA寝台の2人用個室が基本である。2階建て構造で、ヨーロッパのコンパートメント客車のように通路から個室に上って入る部屋と下って入る部屋が設けられていた。
各部屋には洗面台とトイレが備わっていて、シャワー室は6号車と10号車にあり、シャワー券(カード)を購入して利用する。より豪華なメゾネットタイプあるいは展望室タイプのカシオペアスイートの各部屋には専用のシャワーがあった。
「カシオペア」の名称の由来は、星座のカシオペヤに由来する。オールダブルデッカー、オールダブル(2人用個室)を取り入れている客室が、W字を描くカシオペヤ座をイメージするからだと言われている。

3. 食堂車でディナーを

食堂車は3号車にあり、2階がレストラン、1階が厨房。夕食のメニューはフランス料理コースあるいは懐石御膳の2種類。事前予約制で、時間帯が3回(17:15〜18:15、18:30〜19:50、20:10〜21:30)に分かれていた(17:15からの回は懐石御膳のみ)。
21:45〜23:00はパブタイムで予約不要。モーニングタイムは6:30〜8:00(予約不要)で洋朝食、和朝食のどちらかから選べた。

4. ラウンジカーでくつろぐ

ソファーや飲料自動販売機が置かれ、予約なしで誰でも利用できるラウンジカーは12号車である。
下り列車(札幌行き)の場合、青森駅〜函館駅間のみ最後尾となり、後方展望を堪能できた。列車の進行方向が青森駅と函館駅で「進行方向が」変わるため、残りの区間は機関車の後部を眺めることとなる。
上り列車は函館駅〜青森駅以外の区間で後方展望が望めた。ラウンジは2階に位置しており、1階には列車に電源を供給するディーゼル発電機が搭載されていた。

5. 推進運転で尾久駅〜上野駅間を回送

「カシオペア」は機関車けん引であるが、上野駅の地平ホームは行き止まり構造のため、車両基地のある尾久駅から上野駅まで(4.8km)は機関車が最後尾から押す形(推進運転)でゆっくりと回送していた。
上野駅を発車する客車列車は昔から推進運転での回送が行われていたが、客車列車の激減に伴いこの光景は稀有(けう)なものとなり、最後の推進運転が「カシオペア」の上野駅への回送だった。

6. 上野駅13番線ホーム

上野駅の地平ホームが並ぶ中で、改札口を入って一番左にあたるのが13番線。古くから夜行列車の発着ホームとして有名だった。
ホーム脇にはカシオペアや北斗星など寝台列車の発着に合わせた専用の待合室があり、旅情を味わうには充分だった。カシオペアなき後、この番線を使う名物列車はクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」のみ。ただし、乗車は右隣の13.5番線からである。

7. 「カシオペア」のけん引機

「カシオペア」の客車には動力がない。そのため、機関車がこれを引く。上野駅から札幌駅にかけては、電化方式や非電化区間の違いから、複数の機関車がリレーして運行される体制である。
まず、上野駅から青森駅まではEF81形交直両用電気機関車がけん引していたが、老朽化に伴い2010年夏からは新型のEF510形500番台に切り替わった。このうち2両は「カシオペア」専用塗装機であったが、「北斗星」用の青い機関車がけん引することも珍しくなかった。
青森駅から函館駅までは青函トンネル用のED79形がけん引機として使用される。北海道新幹線開業による架線電圧変更を受け、2016年以降の団体専用列車「カシオペアクルーズ」「カシオペア紀行」はJR貨物の協力によりEH800形がけん引した。しかし、豪華列車「TRAIN SUITE 四季島」の登場により2017年2月に終了し、以後の「カシオペア紀行」は本州内、JR東日本エリアのみでの運転となっている。
函館駅〜札幌駅はディーゼル機関車DD51形が重連(2両連結)でけん引した。

8. 北海道の非電化区間

北海道の鉄道路線は非電化区間が多いので、ディーゼル機関車がけん引した。厳密に言うと、函館駅〜五稜郭駅(北海道新幹線開業後は新函館北斗駅まで)、東室蘭駅〜札幌駅は電化区間であるものの、機関車交換の手間を省くため、電化区間であってもディーゼル機関車がそのまま直通している。

9. カシオペアのさまざまなグッズ

カシオペアの乗車記念として、さまざまなグッズを車内で販売していた。筆者が購入したのはペアカップと傘だった。傘は筆者とともにテレビ番組にも出演したが、その後破損して現存しない。
ほかには、記念の袋やチケット袋など大小多くのものがあった。

10. 時には迂回運転

1編成しかない列車なので、運休になると必然的に翌日の折り返し列車も運転できなくなる。東日本大震災のような重大なアクシデントは別として、なるべく運休を避けるべく努力し、不通区間を迂回(うかい)することも時折あった。
筆者が妻と乗車した2003年7月26日も仙台付近の地震による東北本線の一部区間不通により、上越、信越、羽越、奥羽本線経由(日本海沿い)で迂回運転した。もっとも、大幅に遅延したので札幌到着は午後になり、後日特急券は払い戻しとなった。
数々の思い出を残して引退する「カシオペア」。40年以上活躍する車両も珍しくはないけれど、「豪華さ」を売り物にしている以上、あまりの老朽化による不具合多発ゆえにサービスに支障をきたし25年ほどで寿命が尽きたということだろう。JR東日本エリアにおける豪華列車は「TRAIN SUITE 四季島」が引き継ぐことになる。
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。(文:野田 隆)

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