阪神 引退を意識したあの日も岩崎がのれんをくぐった鉄板焼き店 店主が祝福「真面目で律儀な方」
2025年5月17日(土)20時1分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神5—2広島(2025年5月17日 甲子園)
通算100セーブを達成した阪神・岩崎が、9年前から通い続ける鉄板焼き店がある。
尼崎市にある「広島風お好み焼き ゆうか」の店主・中原秀樹さん(54)は初めて来店した9年前のことを今でも鮮明に覚えている。「16年5月ですね。もう9年前ですか…。すごく真面目で律儀な方だなと。緊張して話しかけたのを覚えています」。2度目の来店で中原さんが自作の背番号13のユニホームを見せると「これ、僕のユニホームじゃないですか」と寡黙な左腕の頬が一瞬緩んだ。
店内の一番奥にある大きな鉄板の壁側が定位置。シーズン中も月に1〜2度はのれんをくぐり、湯浅、高橋ら後輩を連れてくることもあり、東京五輪後には金メダルを持参して来店したこともあった。「せせりとキノコの柚胡椒炒め」がお気に入りで、シメはフレンチトースト。中原さんは「口に入るものを提供してるのでお店で食事してくれた次の日の登板は特に気になります」とシーズン中は祈るような思いで背番号13の登板を店内のテレビで見守っている。
2年前の22年9月、救援失敗が続いて不調に陥っていた左腕は「もう野球やめますわ」と初めて引退を意識。その時も知人と「ゆうか」を訪れている。中原さんは後日、記事で知った。「あの日もすごく覚えていて、悩まれていた時だったんだなと」。その年のオフ、岩崎は取得していたFA権を行使しての残留を決め、球団とは4年契約を結んだ。
「4年契約を結んだ次の日に来てくれて、すごい良い表情をしてたんですよね。いつもと明らかに違っていて。球団から良い言葉をもらったんだなと思いました。そこからブルペンのリーダーとしてチームを引っ張っていく存在になられて」
昨年からお好み焼きの裏メニューに「岩崎スペシャル」が追加された。豚、もち、ベーコン、山芋がトッピングされたボリューム満点の1枚で、ファンからの注文も激増。「岩崎投手からお好み焼きの注文が入った時に僕が勝手においしいと思うものを全部トッピングして提供していたのが始まりです(笑い)」と明かした。
「ゆうか」は1998年に開店し今年で27年目。学生時代にラーメン店でアルバイトをしていた中原さんが飲食業に魅力を感じ、大阪の有名お好み焼き店で修行した後に独立した。「親子3代、4代で来店してくださる家族もいますし、鉄板の前に立ってるといろんな歴史を感じます。その中で岩崎投手も若手の時から来ていただいて、今はもうベテラン。100セーブも通過点だと思いますし1年でも長く岩崎投手が投げる姿を見たいのが本音です。お店のアルバイトの子たちもみんな応援してるんです。過酷なポジションで投げられてるので、心が安まるような場所としてこれからも来ていただけたら嬉しいです」。
100セーブの祝杯もこの店で…中原さんは鉄板の前に立ちながら“常連さん”の来店を待っている。 (遠藤 礼)